書籍3巻のあらすじ

【スローライフの課題と泉の探索】


タクミは自宅に戻り、本格的な畑仕事を開始する。サーディスで手に入れた種(ニンジン、キャベツ、アマアマイモ)を蒔き、スキル《緑の手》で育てるが、味は良いもののどれも小ぶりにしか育たず、農業知識の必要性を痛感する。


気分転換も兼ね、エレーナ、エリネスと共に、以前ダークタイガーと戦った森の奥の泉へ探索に向かう。泉の美しさに感動する一行だったが、突如、泉の主である巨大なヤツメウナギのような魔物テンイール(全長5メートル超)に襲われる。タクミの打撃はテンイールの粘液で滑って効かず、エリネスの光の剣も決定打にならない。絶体絶命かと思われたその時、散歩に来ていたタクミのペットであるアレウス(コーカ鳥に進化した元ヒヨコ)が飛来し、鋭いクチバシでテンイールの脳天を一撃で貫き倒す。


【テンイールの活用と農業の師】


《品質鑑定》の結果、テンイールは食用可能(血液に微毒あり)で、粘液には美容効果があることが判明。エリネスとエレーナは狂喜し、粘液を壺に集め始める。タクミはエリネスの指導のもとテンイールを解体。その夜、テンイールの蒲焼き丼を作り、その美味しさに全員が舌鼓を打つ。


野菜栽培の課題を解決するため、タクミはファルナスの街に住む農業経験豊富な老婆ルトゥーラ(獣人の血を引くハーフエルフ)を訪ねる。ルトゥーラはタクミが異世界人「授け人」であることを見抜き、快く農業指導を引き受ける。タクミは彼女から、間引きの重要性や肥料(元肥など)の正しい使い方といった農業の基礎を学ぶ。また、ルトゥーラから、サーディスで八百屋を営む息子への紹介状を受け取る。


【ダスカール王国からの来訪者と危機】


タクミがルトゥーラのもとで学んでいる頃、自宅にエレーナの母エリネスの専属執事マキーダ(人間族)と、エレーナたちの教育係だったインティア(ドワーフ族)が、ファイヤーオーク(炎を纏ったオーク)に追われて現れる。


二人の話によると、彼らはエリネスとエレーナの偽物(男二人組)に騙され、屋敷の地下に監禁されていた。偽物たちは何者か(第一夫人レノアールと目される)の指示で、エリネスたちの不在を隠蔽していたらしい。しかし、監禁中にファイヤーオークの襲撃を受け、偶然発見した隠し通路から転送魔法装置のある部屋へ脱出。エリネスたちと同じ転送魔法装置を使い、この森へ逃れてきたところを、ファイヤーオークも一緒に転送されてしまったのだった。


さらに、偽物の一人が「もうすぐこの国は炎に包まれて滅びる」と呟いていたことを聞かされ、エリネスはダスカール王国の焔竜の封印が解かれようとしているのではないかと顔色を変える。


【偽りの焔竜との決戦】


タクミはマキーダたちを追ってきたファイヤーオークと対峙。ウリドラが新たに得たスキル《属性吸収》でファイヤーオークの炎を一時的に吸収し、その隙にタクミが頭部を粉砕して撃破する。ファイヤーオークは魔石と、奇妙な「オーク肉の種」(蒔くとオークの肉が実る種)を残して消滅する。


一行はダスカール王国の危機を知り、急ぎ帰還する必要に迫られる。タクミは女神エンビアと「女神チャンネル」で連絡を取り、最も近い転送魔法装置が、かつてルトゥーラが住んでいた廃村イブリの役場地下にあることを突き止める。


ファルナスで薬や食料を調達した後、一行はイブリ村へ向かう。廃役場の地下で転送魔法装置を発見するが、それはキーセット家の地下にある装置とのみ繋がる子機だった。マキーダが先行して転送すると、キーセット家の地下通路は土砂で埋まっていた。タクミは転送後、持ち前の腕力で天井を破壊し地上へ脱出する。


しかし、ダスカール王都は既に偽りの焔竜(正体は皇太子ルーティカ)によって破壊され、火の海と化していた。一行は無事だったフィルモア公爵(ドノバン)の屋敷へ避難する。そこで公爵夫妻(ドノバン、ファラ)とその息子デリックと再会。フィルモア公爵もまた、皇太子に呼び出された際に黒幕イグルナウスの闇魔法で記憶を操作されていたが、エリネスの光魔法で回復。事件の真相――皇太子がイグルナウスとエレーナの妹フォーリナに唆され、キーセット公爵らを犠牲にして焔竜の力を手に入れようとしたこと――が明らかになる。


その直後、偽りの焔竜(皇太子)がフィルモア屋敷上空に出現。タクミはエレーナから炎の加護(付与魔法)を受け、ウリドラに乗って決戦に挑む。偽りの焔竜はタクミを「ヒョロい男」と侮るが、タクミは《ゾーン》を発動し、圧倒的な力で焔竜の頭部を粉砕。皇太子は元の姿に戻り気絶する。皇太子は幽閉されることとなった。


【戦後処理、帰宅、そして…】


戦いの後、王城の地下にあるはずの焔竜の宝珠(コア)がなくなっていることが判明。イグルナウスが持ち去ったと推測される。行方不明のフォーリナと母レノアールの関与も疑われるが、真相は不明のまま。エリネスは国の再建を指揮し、タクミも王城の瓦礫撤去などを手伝う。


二か月後、王都の復興に目処が立ち、タクミはエレーナ(キーセット家の跡継ぎ問題も解決し、タクミの元に残ることを決意)と共に自宅へ帰還。荒れた庭を整備し直し、ディーテ(雌鶏)が産んだ卵やアレウス(コーカ鳥)が捕まえた魚などで食事の準備。ようやく訪れた穏やかな日常、念願のスローライフが始まったことを実感する。


エレーナはタクミへの想いを改めて伝え、二人の距離が縮まる。しかし、タクミはエレーナの顎に、ドワーフ族の成人女性の証である一本の白い髭が生え始めていることに気づき、衝撃を受けるところで3巻は終わる。


一方、イグルナウスとフォーリナは、本物の焔竜のコア(宝珠)を手に、次の暗躍を開始しようとしていた。タクミたちのスローライフに、再び波乱が訪れることを予感させて物語は続く。



※書籍4巻は2025年4月下旬発売です。

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