その後の彼女たち0



今日は私の部屋で結果報告を受けていた。

嬉しそうに話すのを見ると直前までうじうじ悩んでたから素直に私まで嬉しかった。


「由季ね、デートの途中でまたプレゼントくれたんだよ?私がデートを考えてくれたお礼だって。私のために何かしたかったんだって」


「え?またくれたの?由季ちゃんマジ紳士だねぇ~。あの子は女をよく理解してる」


「由季も女の子なのに何言ってるの綾香ちゃん。でも、優しいよね?あと由季が行きたいって言ってた付き合う前に行ったパンケーキ屋さんすっごく美味しくてね、あっ!その時由季が本当に可愛いかったんだよ?パンケーキ頼んだあとにね…」


葵はいつも由季ちゃんの話を嬉しそうにしている。正直最初は驚いたしこんな関係になるとは思いもしなかった。私は葵の話を聞きながら思い返していた。




最初は確か酔っ払った人を助けたって言っていた。私はあの消極的な葵がそんなことをしたのに面食らった記憶がある。ていうか、ちょっとキレた。

吐いてるのに皆無視して行くから可哀想ってのは分からなくはないけど、普通に襲われるかもしれないし葵は芸能人なんだよ?って言ったら相手は女の人で自分のことは分かってないと言っていた。私はそこにも驚いていた。


道端で吐いてること事態ヤバい女そうだし、葵は有名なCMや雑誌に出ていて特に同性に人気があるのに同性で葵を知らないってどういうことだ。その人がどんな人なのか疑問に思ってしまった私は程々にしなよとは言ったものの葵は日を増す毎に仲良くなっていった。

そして葵は昔より明るくなっていた。きっとその友達になった由季ちゃんが葵を変えたのかなと思うくらい葵は雰囲気から変わって、以前よりもあか抜けてよく笑うようになったのだ。


私はそこで葵は由季ちゃんが恋愛的な意味で好きなんだなって直感的に感じていた。だって自分からそんなに話さない葵が自分の話しをすごくしてくるし、由季ちゃんが絡むと葵は嬉しそうだからだ。そんな葵を見ていたら最初は印象が良くなかった私の中の由季ちゃんへの不信感は消えていた。


だから私は葵に言っていたのだ。とある日に葵がいつもみたいに嬉しそうに由季ちゃんの話をするから葵は由季ちゃんのことが好きなんだねって。そしたら葵は見るからに動揺して言葉を濁したから特に気にしてなかった私は女同士だからって何にも思ってないし葵のことを応援したいと伝えたら葵は恥ずかしそうに認めたのだ。


でも、葵は最初は同性なのをとても気にしていた。同性だから気持ち悪いかもしれないってよく悲しそうに言っていたので私はそんなのどうだっていいでしょって葵に言ってあげていた。気持ち悪いとか言う人もいるかもしれないけど、人を好きになるのにそんなの関係ないでしょ。別に好きなら好きでいいじゃん。


性別とか外見とかより結局中身だし、幸せは皆違うんだから。


葵は私の言葉に安心したように笑ったけれど、告白をする前までは自分の気持ちがばれて嫌われるのをとても怖がっていた。

でも、告白は最初はする気がないって言っていたんだよね。葵は絶対由季ちゃんが自分をそんな風に見てないし相手にされないからってとんでもなく自信無さげで、私は大丈夫だから告白しなよとしつこく勧めていた。

話を聞く限りじゃ由季ちゃんは優しいし葵を大切に思ってくれてるみたいで年下なのにかなり落ち着いているから同性だからって引かないと思うし、葵をきっと真剣に考えてから答えてくれるはずだ。




だから絶対平気だよって言っているのに葵って本当昔からモデルのくせに謙虚でマイナス思考だから全然踏み切ろうとしない。


それで日々葵と由季ちゃんの話をしていたら葵がストーカーにあった。ストーカー被害ってこの業界じゃ多いから葵を何かと気にかけていたらニュースにまでなってビックリしたのだ。

私はそれを見てから葵に電話を掛けたら平気そうだったけど由季ちゃんが葵を助けてくれたらしくて由季ちゃんは怪我をしたみたいだった。


由季ちゃんが身を呈して葵を守ってくれたのには感謝してもしきれないし、今度葵に会わせてもらおうと思ってストーカー騒動の後に葵に会ったら話しはまた変わっていた。

葵は告白してないのに由季ちゃんとキスをしたと言ってきたのだ。そして、告白する決心をつけていた。

事の急展開にまだまだ先は長いなと思っていた私はたまげたとしか言いようがなくて、葵がやる気を見せたのに心底驚いていた。


だってあの葵だよ?キスも驚いたけどいつまでもうじうじうじうじ悩んじゃう葵が告白って……葵頭でも打ったの?って疑っちゃったよ。葵は由季ちゃんと旅行に行くからその時までに告白したいって目処まで立ててて何故か私の方がそわそわしていた。


葵はどちらかと言えば来るのを待つタイプで自分から何かを発信したりする方じゃないし、決心したのにまたしてもうじうじうじうじ言い出したから私はできたら近くで見守って助けてやりたいくらいだった。だから一応その意味を込めて助けようか?的なことを言ってみたらダメ!って勢いよく断られた。理由は私が余計なことを言うから絶対ダメらしいが葵のためにいろいろ言いたくなっちゃうだけなのに何か心外だよ。



それから私は葵のうじうじタイムに付き合いながら告白の話を撮影が一緒の時に話したりしていたらまた突然葵は告白をしたと報告してきた。

私の心臓止めたいの葵と思いながらも由季ちゃんの返事はやっぱり私が思った通りだった。葵は本当に嬉しそうにしていたがそうと決まればやることは一つである。考えてくれるなら付き合うまでの最短ルートは押すのみだ。由季ちゃんはそんなに恋愛経験はないみたいで酒癖はちょっと悪いけどかなり真面目な性格だ。


なのでここから推測するときっと性欲とかはたぶんそんなない。友達とか遊ぶの優先タイプは色恋に覚めてるか日常が充実してて面倒だから興味ないかのどっちかが多いから色仕掛けはそんなに意味がないだろう。

となると、トークとかになっちゃうんだけど葵は口下手だからなぁ……と、葵と二人でしょげていた。由季ちゃんは友達が多くて気さくで話しやすいのに、そんな人に口下手葵がトークでアピールって……すごく優しく言っても自爆しに行くみたいなもんだよ。私は葵に死にに行けとは言えなかった。



もうこうなったら色仕掛け一択作戦しかなかった。葵は顔良し、スタイル良しの女子の憧れみたいな女の子だもん。中身はうじうじマンだけど素直で一生懸命で可愛いし。性欲薄くてもきっと……、うん、たぶんぐらつくはず。たぶん……。

ここで私は葵に訊いてみた。由季ちゃんって照れたり恥ずかしがったりするタイプ?と。すると、葵はしないと即答してきたから、なんか頭痛がした気がしてしまった。痛いってこういうことなんだな。この作戦しかないのに上手くいかせてあげられるのかな私……。


でも、絶対上手くいかせてあげたいじゃん。葵がこんなに頑張ってるんだもん実らせてあげたいに決まってる。私はとりあえずもうすぐある旅行に行ったら由季ちゃんの隣を死守するように葵に伝えた。あと風呂は絶対一緒に入ってここでどうにかアピールするしかない!これが今回の旅行の目玉だよ葵!と説明するも葵はうじうじタイムに次ぐもじもじタイムを始めた。



葵は基本うじうじうじうじ悩んでしゅんとするか、もじもじもじもじ恥ずかしがって行動に移せない奥手である。

たまにたまげる程の行動力を見せるくせに基本奥手だからアピールとか言うだけでもじもじしてるし、本当こうなった葵は可愛いんだけど私からすると厄介である。

私はもじもじしだした葵をどうにか説得してから旅行に送り出した。


そしたらまぁとんとん拍子で上手くいって付き合って喧嘩もしてたけど二人は順調だった。

葵は由季ちゃんとのエッチとかに関しては今までにないくらい恥ずかしがって全然教えてくれなかったけど今でも私はよく聞いている。

別に付き合ってるんだからやって当たり前なのにそんなに恥ずかしがる?ってくらい恥ずかしがって動揺している葵は本当に面白くて堪らないのだ。

ごめんって心の中でちゃんと謝ってるからここは勘弁してほしいところだ。これはたぶんやめられない。

葵って言わないけどかまかけたりすると綺麗に墓穴を掘るんだもん。

本当に葵には悪いけど楽し過ぎるのがいけない。


ところでそれよりも葵と由季ちゃんってさぁ、由季ちゃんは葵に比べたらまともって言い方はおかしいけど兎に角まともで引っ張ってくれる頼もしい存在だと思ってたけどあの葵の休養問題だよ。もうこれは一言いってやらないと気が済まない。

突然の休養に私は驚いて葵に連絡したんだけど全く繋がらなくて家に行ったら由季ちゃんがいてそこでいろいろ話して謝られたんだけどそれはそれ、これはこれである。


由季ちゃんのおかげで葵は仕事に復帰したけどだめです。これは許さん。だって約束したし、うちの葵を泣かせるのはだめ。この際由季ちゃんだけじゃなくて葵もバカだから葵もまとめてお説教である。

葵に関しては由季ちゃんにぞっこん過ぎて私も言ってるんだけど何かどうしてもバカだからこの二人は絶対お説教。葵のバカさを止めてくれるのは由季ちゃんしかいないと思う。


「それでね、そろそろね、……あの、えっと……由季にね、言ってみようと思ってるの……」


「え?なにを?」


さっきから何時もみたいに照れながら由季ちゃんの話をしていた葵は急に何か決心したような顔をする。いきなりどうしたんだろう。葵、私はなんかその顔されると不安だよ。


「あの、……あの………早い、かもしれないけどね?…由季と……その…ど、同棲……したいなって……」


「……え?なに?もう一回言ってくれる?」


「え?だ、だから……えっと、……同棲……だよ?……あの、一緒に…住むやつ…なんだけど……」


「…………」


え?なに?この展開。いつも由季ちゃんといろいろ始まっちゃう前の葵の悩みじゃん。何か恥ずかしがってて葵は可愛いけど私は無言になってしまった。


え、これどうする?葵由季ちゃんバカだからなんか空回りしていろいろ起きちゃうじゃん。できないできない言うくせに突然アクセル全開にするような女だよ?……え、私は走り出さないように縄で結んどいた方がいいのかな?……もう由季ちゃん助けて。私は由季ちゃんにすがる思いだった。


「葵!それは分かったけど、それより週末に由季ちゃんに会わせてくれるんだよね?!」


「え?…う、うん。綾香ちゃんは予定平気?」


「絶対平気!!槍が降っても葵の家行くから絶対由季ちゃん呼んでよ?!分かった?!!」


「え……う、うん……。分かった……」


若干葵に引かれたけどとりあえず由季ちゃんに会って説教して、連絡先交換してそれとなくこの危機を知らせよう。あの子ならきっとこの波乱を止めてくれる。てか、あの子たぶんそこまで考えてそうだから大丈夫そうだけどちょうど良いし、葵には内緒で圧迫面接でもしてみようかな?うちの葵をどうするつもりか聞くくらい私にも権利がある。


この波乱の予感に葵だけがもじもじしていた。


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