第41話 祖母の通夜



 私の祖母は生前、霊媒師をしていました。たいへんな力を持っていたそうです。生きているころは、連日、お祓いをしてもらうために人が並んでいたということです。


 私は内孫じゃなかったので、ほとんど会ったことはないのですが、一度だけ、お祓いをしてもらったことがあります。

 私が四つか五つくらいのときだったでしょうか。目の上にデキモノができてしまい、それが病院に行っても、ちっともよくならないのです。

 母は私を祖母のところへつれていきました。


 祖母は、いきなり、母を怒鳴りつけました。

「なんで、もっと早く、つれてこんかった!」


 そのあと、お祓いをしてもらいました。すると、その夜のうちにデキモノはなくなり、きれいに治りました。あれほど病院に行って、まったく効果がなかったのに……。


 だから、私のなかの祖母のイメージは、少し怖いけど、ものすごい力を持った人——です。


 さて、その祖母も亡くなりました。

 スゴイおばあちゃんのお葬式のために親類じゅうが集まりました。


 その夜のことです。

 お通夜なので、親族は交代で遺体のおつきをしながら、仮眠をとることになりました。

 私は中学生だったので、離れの部屋で休みました。疲れていたので、すぐに寝入りました。

 まもなく、夢を見ました。

 夢のなかで祖母が立っています。

 私に向かって手招きしながら、言うのです。


「一人で行くのはさみしいから、いっしょに行こう」


 私はゾッとしました。

 これは、ただの夢ではない。

 ここで「行く」と言えば、私は死んでしまうだろうということが、ハッキリとわかりました。


「私はまだ死ねないから、いっしょには行けないよ」


 声をふりしぼると、祖母の霊は消えました。


 翌朝、私は知りました。

 その夢を見たのが、私だけではなかったことを。

 その夜、通夜に集まった全員が、その夢を見ていたのです……。

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