第185話北からの侵略

11月9日AM 8:20

 応接室で向かい合った二階堂の話はこうだった。


 アメリカに貿易で締め付けられた韓国経済は破綻の一歩手前。

 ヒュンダイもサムソンも、売り上げは前年同月比50%減で巨額の赤字に転落している。

 経済的な混乱でガードが甘くなった隙に、中国からの支援を受けた北からの工作員が多数入り込んでいる。

 その工作員は韓国軍基地のコンピューターにまで入り込み、防衛機能は一部が麻痺している状態だ。


 いつ、北からの侵略が起こっても不思議では無いと言う。


 二階堂に聞く。

「どうしろって言うんだ?」

「アメリカ側の希望としては・・・」

「アメリカじゃなくて、お前はどうしたらいいと思う?」

「済みません。まだ、アメリカの機嫌を伺うのが癖になってました」

「どうせアメリカは北を抑え付けて欲しいんだろうけど、少しは韓国内で暴れさせたらどうだ?」

「それから助けた方が感謝されると・・・」

「『感謝』って言葉は韓国語に有ったか?」

「まだ、辞書には無いかも知れません」

「じゃあ、教えてやろう。それと、前に北から避難させた人達の今の状況を探れないか?」

「ウチの支局員が居るので簡単です」



 9時になり診療を開始した。

 午前中に6人、午後にも5人を診て終了する。4億8000万円が寄付された。


 リビングの椅子をリクライニングさせてテレビを眺める。

 幸恵が聞いてくる。

「今日の晩ごはんは何かリクエスト有りますか?」

「すき焼きが食べたいな。二階堂も一緒だと思うから、肉は多めに買ってきて。皆で食べよう。一番いい肉だと幾らする?」

「すき焼き用ですと100グラム1500円位です」

 5万円を幸恵に渡した。特別に高い物を買うときは、月の食費とは別に渡している。

「3キロ位買ってきて。残ったら肉ジャガに使えるし。椎茸も忘れないでね、肉厚のやつ」

 幸恵は笑顔で出ていった。


 二階堂がリビングに入ってくる。1階のNPO事務所でJIAからの報告をファックスで受け取っていた様だ。


 リビングの別のソファーに移りテーブルに置かれた数枚の紙を見る。

 韓国、ソウル市の地図に小さく○が付けられ、その下には住所が書かれている。別の紙にはモノクロの写真で、アジアで見かけるスラム街の長屋が写っていた。

 長屋の前には子供達が座っている。

 夢で見た通りの長屋だ。

 

 二階堂が言う。

「北朝鮮からの殆んどの人が、この長屋に住んでいます。表向きは、仕事を与えられて平和な暮らしをしていると伝えられていますが、食料にも困っている様です。北に居た時と大して変わらないレベルですね」

「脱北者を全員受け入れるって事で、世界的に評価されたのにな。結局、ポーズで終わりか。何人位がそこに居るんだ?」

「約350人です」



 午後9時。二階堂と俺はすき焼きを食べた後で総理官邸で安倍総理と向き合っていた。

 総理が言う。

「大使館の情報では、釜山に有る建物が日本の商社の持ち物になっているから、そこが使えますよ。一時は社員寮として使っていた物で、100戸位の規模らしいです」

 二階堂が言う。

「脱北者も100世帯位なので丁度いいです!」

 総理が言う。

「日本の援助と言うことで韓国政府に脱北者の移動を申し入れましょう。前もって、テレビクルーが脱北者のその後を取材に行くと言えば、今の状況は見せられないですからね」

 俺も賛成する。後は北からの侵略を待つだけだ。

 総理に聞く。

「侵略してきた北を退治した後はどうしますか?」

 総理は暫く考えて言う。

「韓国を日本の統治下に置きましょう」

 俺は聞き返す。

「統治って事は?よく分からないけど」

「日本政府が国土と人民を支配すると言う事です」

「韓国政府は?」

「事実上、何の権限も失くなります」

「北はどうしますか?完全にやっつけるとか?」

「中国、ロシアと接している国なので緩衝国として残しましょう。韓国を統治している日本に手を出せば、自国が滅びるのは分かるでしょうから」



 翌週、韓国政府は脱北者約350人をソウル近郊のスラムから釜山の日本施設に移す事を了承し、バス5台によって移動が完了する。

 日本のテレビクルーがソウルの施設に取材に行くと言い、慌てた韓国政府の対応は早かった。


 北からの工作員は、韓国軍と政府のコンピューターシステムへのハッキングに完全に成功し、金正恩は侵略のタイミングを測っていた。


 

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