第95話 CIAとの喧嘩

6月28日金曜日 

自宅に帰る。午前11時。駐車場にジュリアを停めて、G63をチラッッと見る。何かが変だ。透視しながらG63の周りを一回る。車の下に電子部品が稼働しているのが見える。下を覗き込む。車体の真ん中よりの運転席の下に、見慣れない黒い箱・・・爆弾?

二階堂に電話し、説明する。車から離れているように言われる。

部屋に上がる。娘達はゲームをしているようだ。ゲーム部屋から音が聞こえる。ドアを開け『おはよう!』と一言。綾香が驚く。ゲームで失敗したらしい。

「もう!脅かさないでよ。ライフが無くなったでしょ・・・」

訳が分からない。ドアを閉める。ソファーに座りテレビを点ける。

沖縄のひき逃げ事件を報じている。47歳の白人男性が酒に酔い、歩行者2人を跳ね飛ばし逃走したが、警察の追跡により逮捕。被害者は兄弟で14歳の姉は大腿骨骨折の重傷。9歳の弟は意識不明で病院に搬送されたが、1時間後死亡が確認された。米軍からは容疑者の引き渡しの要求があったが、本人が自供している為、警察署に拘置し調べを進めている。

続けて、普天間基地での銃の乱射で4人が死亡。3人が両手を失う大怪我。2人がろっ骨を折る重傷と報じている。3人を撃った男は駆け付けた他の兵士に撃ち殺されたようだ。銃の乱射で両手は無くならないだろうと思うが、まあ、いいか。

次は横田基地のフェンスの話題。基地反対派が疑われ、取り調べを受けていたが、証拠不十分で釈放。

竹島近海での韓国艦船20隻沈没の話題には軍事評論家が出て来る。

「自衛隊艦船にまったくの被害を出さずに済んだと言う事は、何か特殊な兵器を、自衛隊が装備しているとも考えられます」

アナウンサーが言う。

「自衛隊員2名が命を落としたのは誠に残念ですが、韓国側の発表では、18隻の船と2隻の潜水艦合わせて、5000人以上の命が失われたと発表しています」

「元々、日本の領土である竹島を不法に占拠して、それを取り返されたからと言って軍隊を派遣したのは韓国ですからね。全てムンジェイン大統領の人気取りのための犠牲者ですよ・・・彼らは」

竹島と、その近くの海に花束を捧げる自衛隊員の映像が映し出される。

アナウンサーが説明する。

「ご覧の映像は竹島で命を落とした自衛隊員2名と、韓国人兵士に追悼の花を捧げている様子です・・・・続いて北朝鮮関係ですが、金正恩氏と韓国のムンジェイン大統領との会談が開かれる模様です」

「北朝鮮が韓国と同盟を結んでも、全く脅威にはならないです。北朝鮮の軍隊は完全な『張り子の虎』ですから。まして今や、2つの大きなミサイル基地も失って、残っているとしても、幾つかの可動式のミサイル発射台だけですからね。兵士は腹を空かせて戦争どころじゃないですよ。ただ、追い詰められたムンジェイン大統領が、何をするかが分からないと言うのが問題ですね。このままですと、大統領の任期が終わった後で刑務所行きの可能性が大きいですからね」


全部、俺が関係しているニュースだ。笑いが出る。


二階堂から電話だ。駐車場にいると言う。

駐車場は封鎖されており、二階堂と、警察の爆破物処理班がG63を取り囲むようにいる。

二階堂が言う。

「エンジンを掛けたらドカンでしたよ。気が付いて良かった」

「誰が仕掛けたか見当はつきますか?」

「さあ、多分足がつくような仕事はしていないでしょう。今の状況から考えるとCIAの線が濃厚でしょうね」

「CIAね・・・」

「ここは安全とは言えません」

「分かりました・・・助かりましたよ。二階堂さん」

「いいえ。ここまで来て、中本さんに何かあったら、それこそ日本政府の一大事ですからね」

「実は、おととい上野公園で2人の男に襲われましたよ。その場で2人は、自分らで命を絶ちましたけど、身元が分かる物は何も持っていなかった」

「銃ですか?」

「グロック17。男達は中東系の顔でしたね」

「CIA・・・遺体の処理も彼らがやったんでしょう。何も情報が入ってない」

「取りあえず、ここには居られないな。東京にいるのも危ないかな」

「中本さんに連絡さえつけば海外でも構いませんよ・・・すぐに飛んできてくれれば」

「本当に飛んで行きますよ」

爆弾処理が終わったようだ。駐車場の封鎖も解除される。


デリバリーのピザを娘達と食べながら考える。どこに行けばいいのか。

娘達の顔を見る。危険に晒すわけにはいかない。浅草のマンションも俺の名義で買ってしまった。ユカも危ない。アンの事は気づかれていないだろう・・・そう願う。

何処に住むか。

ハワイ・・・アメリカだ。却下。

ヨーロッパ・・・CIAが沢山いそうだ。

結論。逃げても仕方ない。喧嘩に勝つには相手の頭を潰す。

トランプ大統領と話を付ければいい事だ。

グーグルマップを見る。アメリカに直接入るのは無理だろう。だとしたらカナダか。街を調べる。ワシントンDCまでひとっ飛びで行ける街。トロント。直線距離で700キロも無い。オタワ。約800キロ。JALのホームページで調べる。トロントはデトロイト乗り継ぎでパス。首都オタワはバンクーバー乗り継ぎだ。これにしよう。


二階堂に電話。トランプ大統領の、この先数日の予定を調べてもらう。

7月1日にはホワイトハウスに居るようだ。再び航空券を調べる。

6月30日JAL018便 18時25分成田発 11時45分バンクーバー着

JAL5176便 14時00分発バンクーバー発 21時37分オタワ着

ファーストクラス運賃 489000円。購入。eTAで電子渡航認証を取得する。

行き当たりバッタリだ。いざとなったら自分で飛べばいい。



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