第14話 今日は役行者との再会でしょう。

日本閣を発って、街の中へと入ったゆうじは

早速、街の探索を開始する。

まずは住宅街。ここだけでもゆうじが居た街より遥かに

垢抜けた近未来的な仕様の造りをした住宅がある。

これを見ても、ゆうじがかつて住んでた昭和の戦後すぐのような

木造住宅は見受けられない。生活道路もアスファルトでキチンと

敷き詰められており、雨が降る度に地面がぬかるんだり

深い水溜りが出来、それや道端の下水へと続く

小さいお堀のようなドブから生活排水と泥水の混じった

生臭い匂いを発したりしなかった。おまけにここは

下水道はじめ衛生面も整備されているのか

通行人にとっても不快な思いをさせる程の余地は無いみたいだ。


そして次は、公共施設へと行く。

図書館はさすがに県庁所在地による運営だけあり

ゆうじにとって生前から実在する古書から初版発行から

年数が40年以上が経過している雑誌や単行本が数多く

文化物として揃っており、正に"揃わない物は無い"くらいだ。

ゆうじの居た街にも図書館はあるがそこの建物は非常に小さくて狭く、

本の数は少なく、その多くが昔の児童書とかそんな感じのモノしかなく

受験生以外ではあまり活用されてない。

やはり人口が多い街にはそれなりの理由が

あるものなんだなとつくづく思い知らされる。

そして、足を今度は駅前に移す。


この駅は非常に豪華な作りだ。

何故なら駅舎自体が地上5階建ての建物になっており

それらはショッピングモールと一体化しており

飲食店や理髪店、美容室、飲食店、果ては映画館や娯楽施設もあり

非常に贅沢なくらい何もかもが充実している。

かつて地元の昭和の様な質素な造りの駅舎しか知らぬ

ゆうじとしては、あまりにも格差をつけられた様な思いである。

そして何よりゆうじにとって余りにも驚愕といえるのは、

公共交通機関であるバスやタクシーの会社の数とその競合ぶりだ。

街の人口の多さがあるからこそ、こういう何もかもが一流なんだなと

思えるのだ。街の人口が一桁違うだけでもこんなに街並みが

華やかになれるものなんだなと、ただ開いた口が塞がらないでいる。


そして今度は商店街や繁華街にも足を運んで見た。

そこでも自分の居た元の街など鼻で笑ってしまうくらいの

立派さを見せ付けられた。一番、ゆうじにとって興味を引かれたのは

全国に店舗と規模を展開する大きな家電量販店やドラッグストアや

ファーストフードの店舗だ。自分の居た街にもかつて一時期は

ハンバーガーショップがあった。だが地元の父兄とかPTAなどが

子供らが入り浸りがちになるばかりか、街の不良の溜まり場になると

騒いで排斥運動をした結果、わずか半年足らずで店舗は閉鎖され

そこは空き店舗になった。じゃ、そこを街の人たちとしては

何か有効活用でもしているのかというと、

それすらやっておらずその空き店舗は廃墟の一歩手前だ。

自分の居たかつての街とこの街の何がこの十数年で格差がついたのか?

やはり、自分の居た街の人たちの価値観の違いがこの街に

格差をつけられ、それがやがて優越感から来る感情で

扱われるという侮辱へと繋がる。元の街の人たちは、

自分の街を衰退させたのは自分らに原因があるという考えに気づき

それを反省して少しでも魅力のある街づくりをしようとせず

イザとなったら国が何とかしてくれるだろう等と甘い考えを持ち、

いつまでも自分らの時代が自分らが生きている限り、

続くという考えを優先し何の努力もして来なかったのだ。

(やはり、人口が減る街はその街を牛耳っている者が間違っているからだし

逆に人口が増える街はその街の運営に携わっている者とそれに集う者たちが

非常に志が高いからなんだろうな。)

やはり、この現実で生き残れるのは努力するのと同時に

時代に合わせられる者なんだろうと、ゆうじはその様に考えた。

そしてアーケード街にあるベンチに座ってしばらく物思いに耽ようとした。

するとそこへ声がする。

「どうかね?門摩祐二くん?」

声の主を探して見ると植え込みの中に、一本のジュースのアルミ缶がある。

「いや。今は門摩祐二と言った方が正しいかな」

「ま、まさか貴方さまは役行者!?」

「ふふふ。久しぶりだね?今の暮らしはどうかな?」

「まさか、あのネリーを筆頭とするメイドたちも!?」

「そうだ。あの館も私が用意したのだよ。

しかしキミも酔狂というか奇特な者だな?あの館に

かつて栃木県の那須塩原で起った殺人事件の舞台となった

当時としては木造の三流だった小旅館の名前をつけるとはな?」

「そうかな?下手に万福とか愛皇とかいった欲張ったり

多くの愛情を期待しすぎる名称した事象は得てして真逆の

結末を辿りや吸いって言うのを聞かされた事があるんでね?

これでもまだ無難な方をつけたと思うのだが。」

「それにしても誰の護衛もつけずに単身でこの街を徘徊するとはな?」

「いや、実はそこなんだよ。俺が護衛も何もつけていては

それこそ養父さんを殺しこの俺をも反対住民ごと葬ろうとした

連中に生きている事がすぐ判ってしまうと思ってな?

そこで表面上は、市井の単身者を装う事にしてネリーには

周囲に変な者が居ないかどうかを確かめて貰っているんだ。」

「つまり、お前の考えとしては一度公園なり何なりなどの人気が

無い所でそれを確かめてみたいと?」

「ああ。ネリーにその辺、宜しくと伝えておくれな?」

「判った。無事を祈る。」

そう言い終えるとアルミ缶からは、もう何の声も発しない。

そしてゆうじは、ふたたび歩き出し、このアーケード街を後にした。

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