第6話 今日の運気は外道から食膳に毒物を盛られるでしょう。

ゆうじは、この数日間の周りで何かが密かに進行しているのを感じた。

その変化のひとつは、公共料金の支払いの件からだった。

いつもの様に、支払い手続きをしようとしたら

水道局もガス会社も電力会社も電話会社も

皆、判を押した様に支払い済みという回答を得たのであった。

そして前もって、固定資産税の支払いの手続きをしようとしたら

役場からは中年の女性職員から

「あら、さっき外国人の女の子が貴方の家の林原さんの代理で

支払い手続きしてくれたみたいよ?」

などと言われた。

(そんなバカな。養父さんは外国人に知り合いなんて居たか?)

ゆうじは不思議に思った。

あの泳三にそんな人脈なんてあっただろうか?

小さい頃からやりたい放題し捲りで街のみんなからは

大いに嫌われっぷりで、ご近所からも鼻つまみの厄介者も甚だしく

事故で下半身マヒになってからはヤケを起こしそれ以降は常に

周囲に辛く当たり捲ってそれが原因で精神病院に放り込まれた様なモノだ。

実際、親子関係って言っても泳三との親子関係として

過ごした期間なんて、ぶっちゃけ正味数年程度しかない。

それがどう考えても外国人との交流があろうはずが無い。

ましてや実弟とも幼少期から不仲の果てに、

成人を迎えて以降は完全に疎遠となっている。

もし百歩譲って、実弟とは疎遠では無く現在も交流があったり

自身は本当はかなり頭がよいエリートで、

ゆうじが成人以降、自分を頼るのを防ぐために

ただ単に奇行の多いダメ人間を演じたとしても、

あのメイド服の女の子の存在は、一体どう説明がつくのだろう?


そうあれこれ考えている間に、自分の住んでる旧住宅地のみんなが

街の中心にある市民会館に今夜、全世帯家族ごと集まる事になった。

ゆうじとしては、恐らくあの不当な立ち退き要求に対する

決起大会だと考えた。なら、ここは行って見て近所からの視点で

この件も含めてあの泳三がドラム缶にコンクリート詰めされた状態で

発見された件をどう考えているのかを見ようと思った。

近所もあの泳三が死体で発見された後に、こんなタイミングで

自分らに不当な要求したのからしてもあの土地開発を言い出した

経営陣の泳三の死との関係を怪しんでいるだろう。

その尻尾を掴むためにもここは参加しても損は無いのではと

考えてみた。そして夕方を迎えた。

市民会館にぞろぞろと古い木造家屋暮らししている

旧住宅地の住民たちは上は車椅子で押されてる年寄りから

下は、母親の背にある乳飲み子に到るまで集まっている。


そこには幕の内弁当やビール、

お菓子やコーラやオレンジジュースなど色んな飲食物が用意されている。

そして住民たちはお互いに議論を交わした後、用意された飲食物を食べる。

そして飲食を終えておよそ二時間あまりが経過した頃、異変が起こった。

参加していた者の一部が突如体調を崩した所からだった。

「な、何じゃこりゃ・・・く、苦しいッ!?」

一人が口から泡を吹いて苦しみ出し、やがて床に倒れ込んだ。

「どうした?うッ!お、俺もだ・・・・・・!?」

そしてもう一人が倒れて動かなくなった。

するとそれは連鎖的にこの会場内の者が次々と苦しみ出し倒れた。

「う、ぐ・・・・ッ!?は、謀ったな・・・」

そしてゆうじも他の参加者たちと同様、苦しみ出し床に倒れた。

(そ、そういえばあの主催者の隣に居たヤツ、

あの日の立ち退き要求騒ぎの際に目立たない様におったな?

さてはアイツがこれを企んだというのか・・・)

ゆうじの視界には、その鼻の下にヒゲを生やしている男が居る。

その男は今になって思い出していると、あの立ち退き要求してきた

経営陣の中に紛れていた。ただ、経営陣に多くの視線が

集中していたため見落としていたのだ。

コイツの目的はどうやら反対住民を家族ごと全世帯を

何かの毒物を用いて根絶やしにして、家主も家族も

誰も居なくなった古い木造家屋を破壊し

旧住宅地を整備するための謀略であったみたいだ。

毒物によってもう既に幼い子供も息絶えたのか、動かなくなってる。

ゆうじ自身も毒物によって段々と意識が遠のこうとしている。

ここに来て、格差社会が如何に上位に位置する者が

経済的な豊かさを持たざる者に対し、こういう事すらも

正当化させかねないであるかというのを知らなかったが故の

代償がこの飲食物に盛られた毒によって命運が尽きようと

して行くのを思い知らされ様としていた。

毒の苦しさによって、やがて目の前が暗くなり

もはや考える余力すら失われて行く。

そして遂に、暗く静寂のときが訪れた。

ゆうじはもがき苦しんだ果てに、とうとう

他の参加者である反対住民とその家族と共に物言わぬ状態で床に伏したのである。

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