第34話 最終話 新しい命!

やがて「すまいる」は初めての年を超え、花々が咲き乱れる春、紗和は無事に大学を卒業することができた。

そして忙しくも充実した日々が「すまいる」が開店してから半年ほど経った初夏の頃、紗和がベッドの中で僕にしがみつきながらささやいた。


「私・・・赤ちゃんできたんだよ・・・一馬クンと、私の赤ちゃん・・・」


 紗和の瞳からひとすじの涙がキラリと零れ落ちた。僕は指で紗和の涙を拭いながら、


「紗和・・・ありがとう・・・」とささやいて、優しく紗和を抱きしめた。


 それからも幸せな日々が過ぎゆき、紗和はつわりに苦しみながらも、大きくなっていくお腹で「すまいる」を切り盛りしている。僕も仕事をかなり覚えたので紗和と一緒に店頭に立ち、紗和と一緒に笑顔で接客をするようになった。常連客もかなり増え、いろんなお客さんがお腹の膨らんだ紗和を心配してくれて優しい言葉をかけてくれる。


あと3か月後には出産予定日が控えている。僕は紗和に心配をかけまいと、必死になって花の種類や手入れ方法などを紗和や園芸の本、ネットなどを使って徹夜して学んだ。僕は紗和の産休になんとか間に合った。紗和が安心して僕に「すまいる」を任せられることができるように。


僕はどんなに疲れていても、紗和から教わった「笑顔」だけは絶対に絶やさなかった。紗和が産休に入るまで僕にとっては時間との勝負の毎日だ!ここで根をあげられない!僕は薬を飲みながらできる限りのことを手伝った。やっと叶えた2人の「夢」なんだから!


 そして紗和がそろそろ産休に入ろうとする頃だった。紗和が仕事中に笑顔で僕に近づいてきて、

「一馬クン、だいぶお花の扱いが上手になったね!私のために毎日頑張ってくれてありがとう。今の一馬クンなら、接客もお花の知識もじゅうぶんだから、『すまいる』を、私が産休の間任せたいんだけど、いいかな?」師匠からの免許皆伝がでた僕は、

「うん、任せておいてよ。せっかく集まってきたお客さんたちを閉店してがっかりさせたくないからね。せっかく叶えた紗和と僕の『夢』をここで終わらせるわけにはいかないよ!紗和はゆっくり休んでいてね」

 

僕と紗和の「夢」への向上心は天井知らずだ。「夢」は叶えることも難しいけれど、それをキープしていくこともまた難しい。手を抜けばその「夢」は一気に手のひらから零れ落ちて粉々に崩れていってしまうものだから。


一度零れて塵となった「夢」を取り戻すには、その何倍もの努力と時間がかかるのを僕は知っている。だから僕は店では常に紗和に負けないように精一杯の明るい笑顔でいるけれど、気がついたら僕はどのお客さんにも自然の、僕らしい笑顔で接していることに気がついた!そして胸の中では仕事にはいっさい手を抜かないと決めていた。紗和がまた「すまいる」に笑顔で帰ってこられるために・・・


そんな僕のことを心配してか?紗和が僕の知らないうちに、明るい笑顔をした花好きの女子高生を2人もバイトで雇ってくれていた。紗和はいつも僕のずっと目の前のことまで考えてくれている。「年下の女の子」が苦手な僕が、そんな一生懸命明るい笑顔を浮かべて接客してくれている彼女たちと自然に打ち解けていくまで時間がかかることはなかった。



いつの間にかテレビの棚の中にはもう「山咲みどり」のDVDはなくなっていた・・・



今のテレビの上には「すまいる」の前で僕と紗和が2人笑顔で映った写真が飾ってある。それはあと1か月後には、赤ちゃんを抱いて母親となった紗和の姿に変わって、家族3人そろった微笑ましい家族写真になっているだろう。


だから僕はこのまま、紗和と産まれてくる子供のために必死に頑張って、紗和に負けないほどの笑顔と汗をかいて、今日も「すまいる」で紗和と2人、笑顔を絶やさず働いている。紗和と僕の「夢」が末永く続くように2人で支え合いながら。


一生懸命頑張って楽しく「すまいる」で働いている僕と紗和がいる。ここ1年間、いつも「死にたい」とばかり思っていた僕に、紗和がこんなに素敵な「生きがい」を与えてくれたんだ!生きていてよかったと、心の中で思った。間違いなく僕は今「シアワセ」だ!


どんなに苦しくても、どんなに悲しくても、生きていればそのうちきっといいことがやってくるもんだ。


僕はそう感じると外に出て青天の青空をぐっと見上げた。









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野に咲く花のように 尾崎 剛 @tsuyoshi_k

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