第26話 パンドラの箱・・・

ふっとため息をつくと同時に、意を決した僕はソファーから立ち上がると、テレビへと向かった。そう、紗和のDVDを観るために。紗和の「仕事」をこの目で確かめなきゃいけないんだ!「山咲みどり」がどんな女性なのか知らなきゃいけないんだ!僕の好奇心からくる義務感のようなものが僕を突き動かした。


テレビ台の中に、ずらっと8本ものDVDが並んでいる。「山咲みどりの○○○」というタイトルのDVDが目についた。僕はそれらを左端から一枚ずつ手に取ってじっくりと眺めた。どれも紗和のかわいらしい笑顔のパッケージで、AVというよりも、どのDVDのパッケージもアイドルのイメージDVDのようにみえる。


そんな紗和の見慣れた明るい「純粋無垢」な笑顔が僕に安心感をくれた。僕はこれが紗和の「仕事」の正体であることをすっかり忘れてしまって、心の中で手にしていたカードが死神か髑髏のカードかもしれないと言うことを穴が開いたかのように忘れて、パッケージを裏返してしまった・・・


それは僕の心臓にロンギヌスの槍をぶち込んだ!あろうことか、虚をつかれた僕は2枚のカードをいっぺんに引いてしまった!ひらひらと舞い降りた2枚のカードは、髑髏と死神のカードだった。後悔する時間さえなく、僕の手は震えている。紗和が・・・「山咲みどり」が男優たちにおもちゃのように弄ばれている写真ばかりだった。


大股を開き、紗和の「オンナ」には男優の頭が埋もれている!

何かオモチャのようなもので責められている・・・

紗和の顔に、薄汚い白濁の液体が散らばっている・・・


ここまではどの紗和のDVDも「普通」のAVだ。僕の想像通りだった。

でも、肝心なのはやはり「中身」だ。

僕は恐る恐るプレーヤーにそのDVDを差し込んだ。余計なCMが僕を余計に苛立たせる。やっと紗和の映像がでてきた。


そのDVDは、とある新築のマンションの一室を借りると、「人間ペット」と化した紗和が一緒についてくる、と言う企画ものだった。DVDは僕を襲うかのように情け容赦なく流れていく。


主人となった男優にそのマンションに連れられて行く紗和の瞳は恐怖で怯えていた。その瞳が演技でないことはすぐにわかった。観ていて痛々しいほどだった。

マンションに着くと紗和は主人である男優に首にロープを括りつけられ、いきなり男優の反り立った「オトコ」を咥えさせられている。男優は紗和の口の奥の奥まで、その大きく硬くなった「オトコ」を押し込んでいった。紗和の顔が苦痛に歪んでいる・・・


カハッ!ゲホ、ゲホッ!


苦しみの咳とともに紗和の口から大量のよだれが零れ落ちた。まるで深い海に溺れている人間のような顔をしている。紗和の笑顔はそこには微塵もなく、拷問を受けているような苦痛と恐怖に満ちた表情をしている。見ている僕の心臓が鋭利な刃物でえぐられているような気になるほど紗和の目が怯え震えている!僕は思わず立ち上がり激しい怒りで叫んだ!


「紗和にそんな酷いことをするのはやめろ!」


しかし、無情にも映像は濁流の如く流れることをやめようとはしない。「ペット」として扱われている紗和は常に四つん這いでいなければいけないようだ。次のシーンはSMのシーンだった。紗和が跳び箱のような道具に押さえつけられて、まな板の上の鯉状態のようになっている。大きく開かれた紗和の「オンナ」に、男優が2本の指を突っ込みむと、紗和の「オンナ」の中を激しく掻きむしった!するとクジラが海面で潮をブシーッと放出するように、紗和の「オンナ」から大量の体液が勢いよく飛び散った!紗和が眉間にしわをよせて、喘ぎ声というよりも拷問を受けている囚人のように大声をあげている!だけど、その表情とは裏腹に、


「イクっ!アァ・・・・」


と身をくねらせながら叫んでいる!男優が激しくいじる紗和の「オンナ」からは、水を撒くスプリンクラーのように紗和の潮がいたるところに飛び散っていく!紗和は、いや、「山咲みどり」は快楽に溺れているのだろうか?それとも、僕には拷問にしかみえない男優のそのむちゃくちゃな手の動きに苦しめられているのだろうか?


僕の気持ちを無視するように、男優が見たこともない変なSM道具を持ち出し、実験動物を弄ぶように不気味な笑い声をたてながら身動きがとれず悶えている紗和をみて恍惚に浸っているようだ。


そして、男優はズボンを脱ぐと、紗和の「オンナ」に顔を押しつけて、血肉を貪る飢えたケダモノのようにジュルジュルと紗和の「潮」を舐めまくり始めた!激しく見悶える紗和!


若い男優だが顔は完全には映っていない。でもその穢い唇と不精髭がよりいっそう紗和を汚していく要素となって、醜さがプラスされていく。


僕の身体は怒りで震えが止まらない。身動きを封じられている紗和は、「アァ・・・!」と叫びながら、左右にイヤイヤと首を激しくふっている。そしてオトコは自分の反り立つ「オトコ」を紗和の「オンナ」にブチこむと、紗和のカラダに大きな穴をあけるかのように激しく紗和を突き始めた!


 無抵抗な紗和、いや、「山咲みどり」は激しい息づかいで感電でもしているかのように全身で悶えている。額に汗が光る。何度も何度も、「イク~!イヤァ~ッ」と、快楽なのか苦痛なのか、僕にはどっちなのかわからない悲鳴をあげている!それでも男優は腰のスピードを緩めることなく、紗和を突き壊すかのように紗和の「オンナ」を責め続ける。


そして、男優は紗和から自分の濡れた「オトコ」を抜くと、紗和の顔面めがけて、その汚い白濁のDNAをぶちまけた!男優はさらに自分の「オトコ」を紗和に無理やりしゃぶらせると不気味な笑い声をあげながら部屋から去っていった。


その後、ひとり怪しく紫色に光るネオンに照らされた部屋に取り残された紗和は、恍惚にみちた表情で口元に飛び散ったその体液を舐めている。主人がいなくなったその部屋には、「仕事」を終えた紗和の激しい息づかいだけが聞こえていた。

そこで終わりを告げるように画面が真っ暗になった。紗和の「仕事」が、終わった・・・


そして僕はそんな紗和の表情をみて、紗和に抱いていた「純粋無垢」が、汚れなき「聖母マリア」の像を反キリシタンのテロ爆弾によって木端微塵に跡形もなく破壊されて、絶望に泣き崩れる信者のように膝からガクリと床に崩れ落ちた・・・


僕はいけないと知りつつも「パンドラの箱」を開けてしまった・・・その代償は僕の想像をはるかに凌駕して容赦なく僕に襲い掛かってきた。僕の身体中に嫉妬、悲観、不安、苦悩と言った負の感情が、錆びた太い五寸釘となって、僕の身体中を余すところなく激しく打ちつけて、僕を苦しみのどん底に突き落としていった・・・


そのDVDには今朝見たあの紗和の芸術的な裸体の美しさは微塵もなかった。それどころか、紗和のウリであるあの「純粋無垢な笑顔」すらなかった。冒頭のシーンで、「SMは初めてです」と言っていたけど、いざ撮影になると紗和の目は不安が手に取るようにわかるほど伝わってきた。


その表情は普段の紗和を知っている僕にとっては痛々しいほどだった。裸にされ、首輪をつけさせられて四つん這いになって引っ張られていく紗和・・・「仕事」とはいえ、なんて屈辱的なんだろう・・・


紗和の「ウリ」の笑顔の欠けらもない下品な作品・・・B級映画以下の駄作だ・・・


素人の僕から観てもこんなものは「駄作」だった!紗和のファンはこんな怯えた笑顔のない紗和の作品をみて喜ぶのだろうか?

そしてこれからも「仕事」とは言え、男優達に蹂躙されてゆくことになるなんて・・・


AVだから、男優におもちゃのように扱われることは想像していたけど、僕は紗和が誰をも魅了するあの「純粋無垢な笑顔」をみせて「仕事」をしているものだと思っていた。まさかこんなひどい「仕事」をしているなんて・・・


僕はAV界には素人だけど、これを撮った監督の、紗和の魅力をスポイルするだけの無能さに腹が立った!僕をはじめ、紗和のファンはきっと紗和の笑顔をみたかったはずだ!ファンはみんな紗和の「純粋無垢な笑顔」に癒されるんだから!それがどうだ、この作品は!紗和の目が不安と嫌悪で怯えているじゃないか!紗和の表情が「演技」でないことくらい素人の僕でさえわかるのに・・・


紗和が怯えている・・・ベテランの紗和が怯え震えている・・・その目から、今にもすぐに「仕事」を終わらせて、この場から逃げ出したい!と訴えているかのような悲痛な気持ちが痛いほど伝わってくるじゃないか!


もうやめてくれっ!これ以上紗和を苦しめないでくれ!


焼けるように身体が熱い!強烈な頭痛と眩暈で僕は床に四つん這いになったまま立つことができなかった。僕はDVDを観る前に「パンドラの箱」を開ける覚悟をしていたけど、僕のAVへの認識がいかに甘かったかを痛感させられた!僕の手のひらにあったのは、最悪にも髑髏と死神が地獄で生血を啜りながら嗤うカードだった!天使のカードなど初めからなかったんだ!


僕は「パンドラの箱」を開けた代償を受けて苦しみもがいた!そんな僕をみて、地獄の髑髏と死神が僕を見下ろしながら、イヤらしくも不気味な嗤い声をあげているのが聞こえた!僕の中で紗和に抱いていた「純粋無垢な少女」と言う崇高な偶像が、今僕の目の前でショットガンに撃たれ、跡形もなく木端微塵になってしまった・・・


野に咲く可憐で小さな花が、心無い男に踏みにじられているように・・・

それらすべてが僕には耐えられなかった。信じたくない現実・・・


世の中には知らない方がいいことがあることも知っていたけど、僕は今さらになって後悔しきれない、決して逃げることのできない苦しみと、紗和が今後もAV女優としてこんな「仕事」を続けていくことを認めなければいけない葛藤に激しく襲われている!


僕は、紗和がAV女優であることに抵抗はなかった。これは本当の気持ちだ。男優たちに辱められ、オモチャのように扱われ、抱かれて、醜い長いものを咥えさせられて、女性の象徴部分にぶち込まれる。そして、女優は最高の快楽の姿を見せつけたその代償に、同世代では手に入れることのないほどの報酬を手にする。そんなことは初めっからわかっていたことなのに・・・


紗和は「仕事」にプライドを持っていると言った。だから、作品の中では精一杯の笑顔で、悶え悦ぶ姿をファンに見せているものだと思っていた・・・紗和の笑顔が・・・どこにもない・・・あるのは不安と苦痛に満ちた、今にも泣きだしてしまいそうな紗和の、今まで見たこともない、いや、見たくもない表情ばかりだった・・・





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