第16話 「告白」・・・

そんなある日、渋谷でお買い物をしていたら、ある男性に声をかけられたの。ナンパかな?と思ってちょっと立ち話をしていたら、その人はとある芸能事務所のスカウトマンだって言って、


「ここじゃなんだから、場所変えようよ?」


とても軽いノリで言ってきて、近くの喫茶店に連れて行かれたの。始めは世間話していたんだけど、少しずつ私のプライベート、特にオトコ関係について、私の心の引き出しを開けていくように聞いてきたの。さすがプロね、私は洗いざらい話しちゃった。そしたら、その人は獲物を仕留めるハンターのように、「本題」を切り出してきたの・・・・


「ねぇ、キミさ、『AV女優』にならない?キミかわいいから絶対売れるよ!」


大金や、芸能界入りのチャンスもつかめるよ!って言ってきたけど、私にはお金も芸能界もまったく興味なんてこれっぽっちもなかったんだけど、その頃にはもうセックスに対して微塵も抵抗なかったし、誰に私のセックスをみられても恥ずかしさとかそう言う気持ちなんてものもまったくなかったから、なんていうのかなぁ?好奇心ってやつ?「未知の世界」を覗いてみたかったの。


AV業界ってどんな世界だろう?

今まで感じたことのない最高のセックスがしてみたい!

だって、私、まだまともに「イッた」ことなんてなかったから・・・


そう考えただけで、私の好奇心は抑えきれないほど膨らんでいって、私はそのスカウトマンにその場でOKの返事をしたら、その人凄く喜んでくれた。私もなんだかその人が喜ぶ顔を見ていたら嬉しくなったの。不思議な気分だったなぁ・・・でね、その人がこれから事務所に行こう、って言ったから、私はその人の車に乗せられて都内にある事務へと連れて行かれたの。テーブルの椅子に座らせられるなり契約書を差し出されたから、適当に目を通して躊躇なくサインした。その瞬間、私はこの名も知らない事務所の専属AV女優になったの。

後悔や不安なんて微塵もなかった。その後さっそく行きつけのTSUTAYAでAVを借りてみたんだけど、『AV女優』になるって決めたくせに、恥ずかしい話、まともにAVなんて見たことなんてなかったからさ・・・これから始まる新しい「仕事」の傾向と対策を練っておかないと!と思ってさ。そして家に帰ってドキドキしながらDVDを再生したら・・・


すっごい!こんなことするんだっ!


驚きもあったけど、それよりも私の気持ちは夢と希望に満ち溢れていって、


この世界で生きていこう!絶対に1番の人気女優になってやる!


私は拳を握りしめてそう誓った。もしかしたら『AV女優』は、私の「天職」かもしれない!そう思った。まだ1枚もDVD出してないくせに。笑っちゃうよね?

契約してからすぐにデビュー作の撮影が始まった。芸能界同様にAV界も熾烈な競争があるのは何となくわかっていたから、負けず嫌いの私は初めての撮影にも臆せず自分の持っているすべてのテクを男優にぶつけた。「仕事」は撮影だけじゃなくて、都内でのサイン会とかもあったから、集まってくれたほんの少ししかいなかった私のファンに満面の笑みを浮かべて握手やサインをして回ったの。

そして、初のお給料日に、そんなにお金には興味なかったんだけど・・・凄い金額が事務所から振り込まれていて・・・

さらに男優たちの最高のテクには生まれて初めて「イカ」されて、しかもこんなにお金がもらえるなんて・・・私は自分から底なし沼に飛び込むようにAVの世界に染まっていったんだよ・・・

3本ほど私のAVが発売されて、私の人気がけっこう出てきたころだったかな?事務所の先輩女優たちから「イジワル」の洗礼をたくさん受けたよ。「出る杭は打たれる」ってやつね!オンナの嫉妬って怖いわ(笑)でも思ったの。「イジワル」されることは、私が『AV女優』として成功している証拠なんだって!だから、そんな「イジワル」なんてそんな子どもじみたこと気にしなかったの。

そしてスケジュールはどんどん忙しくなって大学にもいけなくなったけど、きちんと卒業しておかないと両親にAV出てることバレちゃうかもしれなかったから最低限の単位を取れてきちんと卒業できるように事務所の社長にお願いしたら、こころよく快諾してくれてさ。おかげで私は「大学生」と「AV女優」という2つの仮面をかぶりながら、「学業」と「仕事」に専念することができたの。4年生になれたのはそんな社長のおかげだよ!卒業も単位はちゃんと取れているから問題なし!そしてある日、社長にこう言われたよ。

「もうすっかりみどりはウチの看板女優だな!」

ってね。その言葉は、少なくてもこの事務所に所属する先輩女優たちを抜いて私が1番になったって意味でしょ?もう嬉しくって!それからの「仕事」も全力でうちこんだの!もちろん新しく入ってくるかわいい後輩女優にも、その時の地位を奪われることなく、ね。

ちなみに「みどり」って言うのは私の芸名のこと。「山咲みどり」って名前で売ってるの。

中にはキライなタイプの男優もいたけど、私はそれでもいっさい手抜きすることなく「仕事」をこなしていった。そうしたらね、社長から「今のみどりは飛ぶ鳥を落とす勢いだな!」って言われてさ。そうしたらね、いつの間にかギャラもすっごい額になっていて。まさかこの私がいつの間にか「売れっ子AV女優」になっていたことにまったく気づかなかったの。マネージャーが言ってた。「みどりのDVDはすぐに売り切れるんだよ!」って。あとファンレターもたくさんきてたっけなぁ・・・でも、私は必死になって「仕事」をしていたからそんなことまったく自覚してなかった。

デビューしてちょうど1年ほどたった頃、「年間人気AV女優ランキング」のサイトにも私の顔と名前が載るようになったの!その時はいきなり5位になってた!自分でも信じられないほど嬉しかったんだよ!でもその時何故か嬉しさよりも悔しさがこみ上げてきた。だって、1位じゃなければ5位もビリも同じでしょ?私にとって1位にならないと意味がなかったの。もう、下剋上する覚悟だった。


あと4人・・・絶対に抜いてやるんだから!

たかが4人・・・されど4人・・・

この4人に勝つために今の私に必要なものって何・・・?


私は早くその4人を追い抜いてAV界の1位の座を目指して今がんばってるの。

これが「今の私」だよ・・・みんな私のことを「純粋」だとか「無垢」だとかそんなイメージを勝手に持っているみたいだけど、それは見た目で判断してるからでしょ?人って見かけによらないってよく言うじゃない?映像や写真に写っている私の笑顔をみて、勝手に想像して判断しているだけ。

まぁ、AV界も「人気商売」だから、そういうイメージを持ってもらえるのはありがたいことだけど。悪そうにみえた人が、実際は優しくていい人だったなんて話はいくらでも聞いたことあるでしょ?人はみんな見た目でその対象を判断する。それって怖いよね?私もそんな目で見られているその中の一人だよ。『AV女優』なのに、お人形のようにみんなが私に持っているイメージ、「純粋無垢」な女の子を演じないといけないんだから・・・

私はみんなと一緒の「普通」の女の子だよ?でも、それが私の「武器」になるなら喜んで受け入れるよ!こんな私だけど、キライになっちゃったかな・・・?


私はすべてを「告白」し終えると、一馬クンの顔をこの小さな胸にうずめながらそうささやいていた。さっき一馬クンがすべてを話してくれたように、私は友人にも話さなかった「秘密」まで話した。思いのたけを一馬クンにぶつけた。

これが「今の私」だから・・・私の、闇の「告白」・・・


人は辛いことや悲しいこと、悩みを誰かに話して聞いてもらうだけでラクになれる。

私はこの胸をナイフで切り裂いて心臓の奥底まで開いて一馬クンに見せたつもりだよ?一馬クンにすべてを「告白」して、身体中の血液が入れ替わって新しく再生されてゆき、脈を打つような不思議な気持ちよさを感じている。これで一馬クンに嫌われても、悔いはない・・・私はもう一度一馬クンをこの胸の中に抱きしめた・・・


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