第3話 出会い・・・

気がつくと僕はハマボールの脇道まで来ていた。そこは薄暗い路地だった。すると突然誰かが僕の腕をつかんでビルの影へと僕を引っ張っていった。僕は揺れていて無抵抗だった。何が何だかまったくわからなかった・・・


「お兄さん、これやるよ」


暗くて顔の見えない怪しい男が僕にそう言った。僕がその時見せられたものは、小さく折りたたまれた新聞紙だった。僕にはそれがなんなのか、よくわからなかった。するとその怪しい男は、


「その中に入っている白い粉をコーヒーにでも混ぜて飲めばいい。最高に気分がよくなるぜ。俺はいつもこの時間にここにいるから、またソイツが欲しくなったらいつでも来いよ?」


そう不気味な笑い声をだしながら、男が僕にその紙袋を手渡そうとした時だった。

突然僕の背中に「どんっ!」と誰かがぶつかってきた!僕がよろめきながら振り向くと、そこにいたのは、今度は見知らぬ大学生くらいの女の子だった。


その見たこともない女子大生らしき女の子が暗闇の中、僕に向かって怒ってきた。

「タツヤッ!こんなところにいたの?待ち合わせの時間くらい守ってよね!」その女の子は両腕を腰に当てながら僕に怒りの眼差しを向けている。それに僕は「タツヤ」じゃない。きっとこの子が僕のことを「タツヤ」という人と勘違いしているんだろうと思って、


「あの、僕は・・・」僕は人違いだと言おうとすると、


「いいから早くいかないと!映画始まっちゃうでしょ!」


そう言って僕の腕をギュッとつかんで人通りの多い明るい場所まで僕を引っ張っていった。するとその女の子はまるで僕を、何もわからない子どもを諭す母親のような顔で、


「お兄さん、あの袋の中身が何だか知ってるの?お兄さん、初めてでしょ?」


「いや、知らないよ?何が入ってるの?」頼りない瞳で僕がそう尋ねると、


「まったく、危ないところだったね。もうああいう男にかかわっちゃダメだからね!」


僕はなぜ見知らぬこの女の子が僕にお説教しているのかまったくわからなかった。

夜の街灯りに照らされたその女の子を見た瞬間、まるで野に咲く花のように可憐でかわいい女の子だなぁと思った。ロングの黒髪が横浜の夜風に揺れている・・・


あの小袋の中身が致死量を遥かに凌駕するほどの青酸カリのような劇薬であることを、僕はそう祈っていたけれど、この時には僕はもう貰い損ねた小さな袋のことはすっかり忘れていた。目の前にいる女の子があまりにも可愛いかったから・・・


トシは二十歳そこそこかな?大学生だろうか?細くて艶々した肌と躍動感のある身体。そして黒くて腰まであるロングの髪の毛が印象的だった。それに顔が驚くほど小さかった。


僕を落ち着かせてくれるような優しい目と長い睫毛、小さいけれど筋の通った鼻と薄い唇。春服の薄紅色のコートを着ているけれど、その童顔にはむしろ純白のワンピースのほうが似合うなぁ、と僕は勝手に想像してしまった。まさに「純粋無垢」な女の子だった。





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