ただいま、ママ

第20話 ユイの至福の時間

 ケイはホワイトトロルコングを討伐してからケイ達は血抜きをし、毛皮を剥ぎ、内蔵を取り出し、その間に土器を様々な形のものを作る。


 一方、ユイはピッタリと横にくっ付いて来るだけ何もせず、尻尾だけをフリフリと揺らす。ぼーっとケイを見つめているだけ。

 何もしないユイに少しイラッとしながらもケイは着々と作業を進めていた。


 それを全部作り終わり、洞窟に帰る頃にすっかり日が沈んでおり、真っ暗な中、洞窟内は赤い目が全部で3つ、2匹のホワイトモンキーズの肉を焼いている焚き火を見つめていた。


「今日は疲れたな」

「……ん」

「親玉が来て焦ったけど、何とかなったな」

「…………ん」

「お前のおかげだな」

「…………ほんとに?」

「あぁ、本当だ」

「……だったら」


 ユイはケイの手を掴むと、少し照れたような顔をして上目遣いでケイを見る。


「……撫でて……」

「……? まぁ、これぐらいなら……」


 ケイは撫でた。初めては少し戸惑ったが、ぐしゃぐしゃと豪快に撫でると、ユイはもっとして欲しいのか、離そうとするケイの手をがっしりと掴んで、自分で撫でるように頭を動かす。


「……今日だけだぞ? 今日だけだ」

「……♡」


 初めはぐしゃぐしゃと撫でていたケイの手つきは次第に優しくなり、ゆっくりと、丁寧になっていく。ゆっくりと、ゆっくりと。

 一方、ケイに撫でられているユイの尻尾は、フルフルと大きくゆっくりと振っており、ついつい自分から撫でにいくのを心に留めて、この時を楽しんでいる。


「……ユイ? 大丈夫か?」


 頭を撫でただけなのに顔がトロンっとしており、頬を染め、目は薄らと細く、少し口から涎が垂れかかっている。高鳴る心音は莫大な音量を鳴らし、息は荒く「はぁ、はぁ」と吐息のように何度で呼吸している。


「お、おい? 大丈夫か、ユイ?」

「ケイ!」


 ガバッと物凄い勢いで抱きついて来たユイに為す術もなく、ケイは倒れる。ユイの状態がどんなのかわかっていないケイには、なにが起きているのかわからなかった。

 だが、悲しいことに、それはユイも同じだった。ケイを抱きしめたいという衝動に駆られ、抱きしめたはいいがこの先がわからなかった。


「「…………」」

「……ケイ」

「なんだ?」

「……この先どうすればいいの?」

「……俺にもわからん。取れあず、離れろ……って、肉が焦げちまう!」

「!?……それは、いけない」


 ユイが少し名残惜しそうに退くと、こんだりと焼けた2匹のホワイトモンキーズを火から離す。刺しているホーンラビットの角から肉を引き抜き、大きな葉の上に置く。

 これはそこら辺のホワイトモンキーズではなく、魔法を使うホワイトモンキーズの肉。得られる効果が大きいと確信し、近くに湖の水もしっかりと用意してある。

 ケイとユイは互いに見つめ合って頷く。そして──


「「いただきます」」


 二人同時に手掴みでワイルドに被りつく。モグモグモグモグと。そして、飲み込んだ瞬間、ケイに異変が起こった。再び、ケイの体の筋肉や骨が作り変えられていく。体から蒸気を発し、淡く光る青い線が全身を覆い、心臓の鼓動と共同するように波打つ。


「ケイ! 飲んで!」


 慌ててユイが水を渡す。ケイは気力を振り絞って何とか飲み干す。すると、壊れていく体が急速に治っていき、全身がより強く再生されていく。


「あ、あ、あぶなかった……助かった、ユイ。『捕食』を使うの忘れてた……」

「……おっちょこちょい?」

「う、うるさい!」


 ケイはすぐさまステイタスを確認する。


「これは……」


 名前 ケイ

 種族 半魔人

 称号 『暴食者』『奪う者』

 技能 『異世界翻訳』『鑑定』『威圧(中)』『捕食』『精密射撃』


 ほとんど変わらないものだった。

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