第14話 相手を確実に.......確実に

 ケイ達は再び湖へ向かった。ポケットには燃え尽きた灰を大量に入れて。着くまでに時間が少しかかるためポケットの中から伝わるザラザラ感が肌に直接伝わる。


「……ケイ」

「なんだー?」

「それ……どうするの?」

「それはお楽しみ」


 湖に着くと、まずは少し大きめの平らな石を探す。そこにポケットから大量の灰を塗す。次に土を掘り、出来た穴に湖から水を入れる。よく捏ねて、泥だが若干固形に近い形になるまで土を混ぜていく。


「こんなもんかな」

「これをどうするの?」

「まぁ、見てろ」


 出来た泥を、だいたい3等分に分けて、その内の1つを灰が塗してある石の上に置き、なるべく円を作るように平にしていく。

 残り二つは細い棒状に伸ばし目行き、先に作った円の孤に沿って置いていく。

 1周すると、まだ残っていようと途中で切り、残りを伸ばしてその上に置いていく。それを続けること5週目でようやく全部の泥を使い切った。


「ようやくここまで来たか」


 ユイは、ケイの作業を遠くから見ていたはずなのだが、弧を1周する度に近づいてきており、遂には真横に来ている。


「……近い」

「……そう?」


 ユイは、ケイの作業を見に来ているというより、ケイを見ているといった方が正しい。なぜなら、ユイの目線はケイが作っている土器ではなく、ケイの横顔なのだから……。


「……」

「……」


 ケイは気にしないで作業を続ける。今度は、積み上げた所の間を指で押したり伸ばしたりすることで、間を詰めていく。どんな小さな断裂でも丁寧に伸ばしていき、傷のない湯のみに近いものが出来た。

 次はこれが2個分入るぐらいの穴を掘って土器もどきを置いて、周りには枯れた葉や枝を敷き詰めていく。そして、上から火を付け、土器が十分に加熱し硬くなるのを待つ。


「……結局、灰の意味って?」

「あぁ、取りやすくするためだ」

「……?」


 わかりやすく伝えるために実際にやる。灰が着いていない手頃な石の上で、泥から円を作る。そして、剥がそうとすると……。


「あっ……」


 泥が石にくっついてしまい、半分千切れてしまった。


「灰はこうなるのを防いでくれるのさ」

「……むぅ……なるほど……。あっ……ケイ」

「……あぁ、今あそこから物音がしたな」


 土器はまだ焼き上がるまで十分に時間があるのでこれからはケイ達にとってはハンティングの時間だ。

 草陰から出てきたのは白い尻尾、赤い顔、2足歩行に長い手足。それはまるでーーー、


「……猿だ」

「……ご飯……」

「……」


 ケイとユイはお互いにアイコンタクトで作戦を確認し合う。事前に打ち合わせして置いたのは、ケイの『威嚇(小)』で動きを一瞬だけ止め、その隙にユイの『空爪』で攻撃をするとというものだった。


「行くぞ!」


 ケイは『威嚇(小)』を使い、動きを止める。そこにユイの見えない刃である『空爪』が炸裂する。猿の胸に3本の深い切り傷が出来、多量に失血をしながら仰向けに倒れた。

 しばらく動かないのを確認し、2人は近づく。猿は指先がピクっと動いたのを、ケイは見逃さない。


「まだ、生きているな」

「?……死んでるよ?」

「いいか、ユイ。死んでるってのは、ちゃんと息の根を止めてから言うんだ……よっ!」


 ケイは持ってきた大きな石を振り下ろそうとした瞬間、猿がガバッと顔を上げる。

 ユイはまだ生きていることに驚き、攻撃しようとしたが、ケイがちょうど振り降ろした石が猿のを後頭部を粉砕する。それをもう1度、もう1度、もう1度。そして、顔面がグシャグシャになるまで続けた。


「……ケ、ケイ?」

「いいか、ユイ。……敵は、邪魔するやつは殺せ。そして、確実に息の根を止めろ。甘さは出さすな。……最低限、これが出来なきゃ俺に着いてくるな」


 これがケイの正真正銘、最後の宣告だった。これからケイが向かうのは茨の道であり、危険と常に隣り合わせの道なのだ。だから、躊躇なんてしてたら一瞬で殺られる。

 だが、ユイは人狼。普通の魔獣とは違う。そして、自分の居場所はケイの隣りだと決めている。だからこそーーー、


「……ん、わかった」


 猿の四肢が『空爪』によって縦に3等分された。答えは即答。迷う余地なしも無く、満面の笑みで躊躇なく殺る。


「……上出来だ」

「……ん、これで文句なし。お腹空いた……ご飯にしよ」

「……あぁ、そうだな」

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