最強への1歩目

第12話 フェンリル

 洞窟に入ると、ちょうどホーンラビットの丸焼きがちょうどいい火加減で焼きあがっていた。

 ケイは火から離して大きな葉に乗せ、余熱で中に火が通るのを待つ間に、狼少女が守っていたが、結局ずぶ濡れになってるカッターシャツを干す。


「全く……これの何がいいんだか」

「あなたが…初めて……くれた物……」

「いやいや、出会って間もないだろ!?」


 と、そんな会話をしている間にホーンラビットの肉が程よい感じに仕上ったので、座ってワイルドにかぶりつくーーー前に祈る。忘れてはいけない。今でこそわかる命の有難みを。


「では、いただきまーーー」


 ぐ〜〜〜〜と、横から物凄く腹の虫が鳴る音がした。

 ケイは虫の持ち主を見る、お腹を抑えながら、涎を口から垂らし、目がケイの持つホーンラビットから離さない。左右に振ると、顔も一緒に左右に振る。

 まるで餌をやる前のお腹を空かした犬だ。……否、狼だ。


「…………欲しいのか」

「…………いら……ない」

「そうか」


 ケイはホーンラビットをかぶりつこうとすると横で再び腹の虫がなく。食べたくても目線が気になり食べれないので、大きな葉っぱを半分に切り、その上にホーンラビットの肉を半分にちぎって置いた。


「いい……の?」

「要らないなら俺が食うぞ」

「それはダメ!」


 狼少女は急いで口の中へ入れたため、頬張る。そして、ゆっくりと歯で噛み砕いていき、徐々にホーンラビットの肉の旨みを噛み締めていく。

 時間が経つにつれて、だんだん噛む回数が少なくなり、最後にはゴクリっと肉を飲み込んだ。


「……美味しかった」

「そうか」

「……うん」


 狼少女が全て食べ切ったのを見て、続いてケイが食べ始める。

 毛皮を取り除き、骨と肉を焼いただけなので、味はしない。それどころか、獣臭さを感じる。ゴツゴツとしたい歯ごたえと無駄に多い小骨が口の中に広がる。そして、ゴクリと一気に飲み込む。だが、合わないのか、無理やり出てきそうな食べ物を気合いで押し込んだ。


「……っ! はぁ、はぁ……不味い……」

「まだ……残ってる」

「……いるか?」


 ケイは、狼少女にホーンラビットの残りの肉を全部やった。狼少女は味わうように食べている。狼少女が幸せそうに食べているのを眺めていると、ケイの体が急に熱くなりだした。

 それは自分が初めてホーンラビットを食べ時に似ているが直ぐに収まった。この現象が意味していることがケイには直ぐにわかった。


「きたきたきた。待ってたぜ!」


 首に常に掛けているプレートを確認する。称号は変わっていないが、技能には『捕食(小)』追加されていた。鑑定眼で調べて見るが、何もわからない。

 ふと、狼少女が気になり、鑑定眼で調べて見るとーーー


 名前 ???

 種族 フェンリル(人狼種)

 称号 『魔族の嫌われ者』『魔族の迫害者』

 技能 『空爪』『悪食』『気配察知』


 だった。


「なるほど……フェンリルな……」


 狼少女は驚いたのか、ビクッと体を震わせる。そして、シュンと尻尾や耳を丸くさせて隠す。そのまま徐々にケイに近づき、ズボンを掴み取る。


「おね……がい。捨てない……で」


 言葉を吐くと同時にズボンを掴む力が強くなる。そして、ポロポロと涙が出始めた。そのまま何度も、何度も同じセリフを吐き、仕舞いにはケイに抱きつく。


「お願い!!」


 この声が洞窟の中で響く。祈りが届くようにと。


「あぁ〜! もう、わかったよ! わかったから離れろ!」


 そして、狼少女の祈りは届いた。ケイの言葉に安心したのか、狼少女はズボンから手を離し、上半身に力一杯に抱きつく。


「だぁ〜!もう、離れろ!」

「いや!」


 現在、ケイは上半身が、狼少女は全身が裸なので、色々と当たってしまう。特に狼少女はロリ型に近い癖に出るところしっかりと出ていて、柔らかな双丘が弾力を弾ませる。


「これは……やばい。……なぁ、どうやったら離れてくれる?」

「……離したくない」

「頼む、とりあえず離してくれ」

「……じゃあ、名前」

「あ? 名前がどうした?」

「……名前が欲しい」

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