第7話 九死に一生を得る


「これからはただのケイだ。復讐するためだけに生きるケイだ。邪魔する者は……皆殺しだ」


 ケイは、食料を探しに行った。昨日のいた場所に、自然と足が向いた。勘だが、昨日いた場所に現れると感じるた。少し歩くと、奴はいた。


「やっぱりな……いると思ったぜ、兎もどき」


 昨日、同種を食べていた兎もどきがそこにいた。奴がケイを見た瞬間、殺気を丸出しにして、こちらを見ている。


「はっ、お前の殺気はその程度か! これなら、あの狼の方がもっと凄かったぜ!」


 そう言いながらも怖いものは怖い。全身がガタガタと震えている。が、無理やり右手で左腕を抑え、今度はケイが兎を睨みつける。魔界の初心者と強者が睨み合った。

 そこからは早かった。制服のズボンのポケットから石を取り出して、投げる。兎もどきはそれを軽々しく避けてすぐさま頭突きを繰り出す。


「はっ! パターンが同じなんだよ!」


 狼の時に感じた絶望的なまでの恐怖が無ければ今頃、兎もどきのキモさと体験した恐怖で、ここまでスムーズに動けなかっただろう。飛んでくる兎もどきの角をギリギリで躱す。突っ込んだ兎もどきの角は、後ろにあった大樹に深く突き刺さる。


 ケイはこの機会を逃さない。瞬時に体勢を立て直した瞬時、全力の蹴りを兎もどきの腹あたりにぶち込んだ。そのおかげで兎もどきの角は抜け、吹っ飛んだが、着地に失敗し、足首をくじき、お腹あたりに複数の小さな骨折が出来たのか動かなくなっていた。


「ちっ……まだ少し動けるのか……しぶてぇ野郎だ」


 ケイは辺りを見回して、殺すための道具を見て回る。見つけたのは、片手でつかめる程度の手頃な石。右手で掴み、何度か兎もどきの顔面に力強くぶつける。


「死ね! 死ね! 死ね!」


 しばらくすると、地面には、血と脳みそでぐちゃぐちゃになった兎もどき。脳を潰してもまだ少しばかりか足がピクピクと痙攣している。つまり、その兎はまだ少し生きていた。


「くそっ、くそっ! これで、どうだ!」


 何度が石を打ち付けて、ようやく兎の動きが止まった。


「はぁ、はぁ……飯の時間だ」


 ケイは兎の血抜きや毛剥ぎなどが完了していないにもかかわらず、無我夢中で噛み付いた。何しろ、5日ぶりに食べてた飯なのだ。空腹はとうに底を超えていた。兎の血が、肉が、蛍の胃袋を満たしていく。


 降ってきた雨の水を土を掘ることで、貯めた水を啜る。急に食べ物を入れたせいか、それとも普通じゃない兎もどきを食べたせいなのか、どちらかかはわからないが、胃が受け付けない。吐き気を誤魔化すためにさらに水という名の泥水を啜る。


「うっ!?……うぇぇぇ……お、お、おぇぇぇぇぇぇぇえっ!!」


 少し戻した。毛や血や肉が口から少し溢れ出た。だが、それ見てケイはなんとも思わない。いや、思えなくなった。むしろ、少し勿体ない気もしている。これで少しは空腹を凌げた。



 食べ終えて直ぐに違和感を感じた。全身が溶けるように熱く、周りから湯気が出るほど熱を発し始めた。特に左目には異様な熱さを感じる。触ろうとした瞬間、気がついた。

 自分の骨が実際に溶け、変な方向に曲がってる。皮膚も少しドロドロとしてきた。そして、血管には魔獣と同じように薄らと青い光が放ってる。


「ま、まさか! 俺が魔獣と同じになろうとしてるのか!? い、いや、これは……死ぬ、のか?……い、いやだ! 死にたくない!!」


 その時、再び雨が降り始めた。今度は雷と一緒に。とてつもなく激しい豪雨がケイの体を襲う。


「こ、こんな…とこ……ろで、死んで……た、ま……るか!」


 ケイは薄らとする視界の中、逃げるように洞窟へ戻ろうとしたが徐々に意識を失って行った。


 ────そして、数時間が経つとはケイ目を覚ました。


「うっ……俺は……生きて…いる……のか?」


 溶けて終わるかと思っていたケイの熱した体は、雨によって急激に冷やされた。それによりケイの体の骨が作り直された。筋肉が前よりもぎゅっと鍛えられた形で作り直され、骨と筋肉の間に血管が生成され、そこに血が通い、全身に行き渡る。その度に淡い青色の光が発している。

 心無しか、背が若干高くなった。そして、もう1つ気がついたことがあった。


「!! これは……左目が治ってるのか?」


 治った左目は黒から赤へ変わった。

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