9 LMG大国



 龍神歴5030年7月4日 

 人族と獣人族を隔てていた『メキシコの壁』が崩壊した。


 メキシコの壁を壊しワシントンのデウスの要塞に戻ってきた後、立国に向けた計画を立てる。


 ノブは最初に、南アフリカで立案した7か条を発布した。

 ①無秩序な暴力を禁じる。

 ②無駄な殺生をしないこと。

 ③国民は国の繁栄のために働くこと。

 ④国は功績を重んじること。

 ⑤国は国民を安心して暮らすことができるようにすること。

 ⑥国民は仲良くすること。

 ⑦国は経済を豊かにすること。


 そして国名をLMG大国とした。


 Lady&Machine&Gentleman 大国 (淑女と機械と紳士の国)、完全にLMG(Lip Majic Generationsの頭文字)に対する当て字になるが、女性、機械、男性が平等に住まう国にするというノブの意識の表れだ。


 ――□■□――


 あとは衣食住を整えていけば、いずれ人は集まってくるだろう。


 まず、「衣」……着るものだ。人間と動物の違いは着るものだといえる。衣服は人間の心構えを変えてくれる。

 これはファッションリーダーでもある蓮月に任せた。

 補佐はLMGのメンバーではないがヴィーナスだ。


 次に「食」……食べるものがなければ生きていけない。

 食料の生産と確保は、ティアリと日葵だ。

 補佐として山女ちゃん。

 この国には魔物は、豊富にいるので肉に関しては心配ない。

 穀物や野菜の生産は徐々に行っていこう。


 そして「住」……居住環境の整備

 住宅環境はアリス

 医療環境は紅々李

 教育環境は碧衣と香ちゃん(主として剣術指南)

 インフラは瑠璃そして花子ちゃん

 治安は美夜とお菊ちゃん

 そしてエクスマキナとアンドロイドが各地域の警官を担う


 住居は、龍神世界の日本を真似て、基本的には浮島に住んでもらう。

 浮島の材料は、タロット大統領が作ったメキシコの壁の資材、鉄材などを使う。タロット大統領のお陰で、総重量2億5千万トンもあるので建設用の資源には事欠かない。


 私はまとめ役となり、それぞれに補佐としてエクスマキナがついている。

 そしてノブと瑠璃はこの国の政治、財務を担当する。

 他国との交流や交渉は私やアリスが行う。


 …… …… ……


 ――クロがいたら何をさせるんだろう?

 クロは隠密行動が好きだから、スパイ活動だろうか。

 でも、目利きができるから商売がうまいかな。

 夜の街とか任せたら、商売繁盛だろうな。

 私は物思いにふけりながら、クロを懐かしむ。


「お兄ちゃん、またクロのこと思い出してるの?」

 私が一縷の涙を流しているのを見て、心配そうに声をかけてきた。


「うん。クロがいつ戻ってきてもいいように、この国を世界一、いや四世界一の国にする」

「そうだね。クロに自慢できる国に育てるわ」

「よし! やるぞ!」


 私は立ち上がり、フロートシップに乗り込んだ。


 ――□■□――


 ……あれから3年……


 徐々に人も集まってきている。

 現在は3000万人くらいだろうか。


 この国の主要な産業は、高性能のロボットや機械の生産と輸出である。

 工作用ロボットは、1体100万龍、

 アンドロイドは1体1000万龍、

 セクサロイドは1体1億龍もする。(1龍は約10円)


 セクサロイドは家政婦と夜のご奉仕をする。男性タイプと女性タイプがあり、同性愛者用もある。こんなに高くても世の中にはお金持ちがいるようで、現在予約がいっぱいで生産が追い付かない状態だ。

 世界各国でセクサロイドに恋する現象が発生しており問題となっている。

 たぶん、全て同じ顔・形ではなく、オプション(割増)として発注者の好みの顔や体形、そして好みの感情にできるのが良かったらしい。

 子供はできないが、実際にアンドロイドやセクサロイドと結婚する人も出てきている。アンドロイドたちも感情があるため、満更でもないようだ。

 ただ、人口調節や子供を設けることについては龍神世界ではほとんどが遺伝子操作による人工授精で作っていたこともあり問題となっていない。


 なお、アンドロイドの上位機種エクスマキナは、極秘部分が多く輸出はしていない。


 これらのロボット、機械は販売するときに条件を付けて販売している。

 最初に購入する前に、購入者の診断をする。世界各国にある検査・修理工場で頭に端子をつけてもらい、過去に暴力行為を行っていないか、変質者ではないか頭の中を診断する。それに合格すれば、契約をすることができる。

 そしてメンテナンス契約をしてもらい、2年に1度、検査を受けてもらうようにしている。世界各国に検査・修理工場がありその費用はLMG大国で出している。

 また不用になった、または古くなったロボットや機械は、買った時の8割の価格で買い戻すことにしている。ここが重要で、8割のお金が戻ってくるわけなので、ほとんどの人が返してくれる。これらの機械やロボットにはログが残っており、丁寧に使ってくれたユーザーには次回販売時に1割引きで販売する。つまりこのユーザーは最大で10%の価格で利用できることになる。戻ってきた機械やロボットなどは全てLMG大国で修理し、最新の部品と交換するようにしており、修理ができない場合は手厚く感謝祭で供養しリサイクルしている。


 我がLMG大国には、各地に機械を祀る神社がある。巫女はもちろんアンドロイドで、神主はセクサロイドまたはエクスマキナだ。世界各国から供養に訪れる人が後を絶たない。機械神社の大本「機械大社」には神使の雅尾みやびに来てもらっている。日本の稲荷大社を模しており、いくつもある朱の鳥居が美しい神社だ。

 神社の狛犬は、なぜか雷雷と炎炎を模したアンドロイドが立っている。悪意のあるものが来ると、火を噴いたり、雷を落とし追い払ってくれる。


 ここの生活は都市部や耕作地を除き、自然は保護されることとなっており、反重力装置のついた浮島に住むことになっている。道路はなく、フロートシップや蒸気新幹線を使っている。


 娯楽施設は、様々なスポーツ施設の他に魔神世界から持ってきたゲームがある。魔法カードと魔物召喚ゲームだ。この2つの競技は魔法を成長・発展させるため導入したもので、家庭ゲーム機とスタジアムタイプがある。スタジアムは大人用で賭け事にも使われるが、国家の収入となる。魔法は使わないと魔力が失われていくようで、主としてヨーロッパ地方に住む魔族以外は魔力は低くなっていた。

 LMG大国では、魔力も重要な能力と考え、教育し研究していくことにしている。


 また、デウスエクスマキナが推奨している本の出版が盛んだ。この国では、機械族も小説を書いている。ただ、アリスに言わせると機械族の場合はテンプレのように型にはまった小説が多くなるそうだ。妄想的、空想的ファンタジー小説は人間の方が面白い小説を書くようだ。デウスエクスマキナはそれを読むのが楽しいらしい。今ではにデウスエクスマキナが運営する国立図書館が、LMG大国各地に10か所建設されている。


 この龍神世界で、ほかの国と大きく違うところは、成人になると一生涯に1人の子供をもうけるという子供制度があることと、遺伝子組み換えによる受精卵を作らないことだろう。身体的、精神的障害がない限り、夫婦または恋人間で子供を2人作らねばならない。身体的、精神的障害などがあって子供が作れない場合は、子供育成院に届出を行えば良いこととしている。この場合は費用は免除される。


 ここは機械族がいる国なので、機械族との婚姻も認められている。ただ、その場合はアンドロイド1体の購入と子供育成院に届出を行い100万龍の育成費を支払った上で子供を他の夫婦に作ってもらうことを委託する。


 入国するもの、出国するものは拒まず、入国したものには例外なくノブが作った7か条が適用される。


 私はというと、前世の知識と鑑別スキルを活かし、製薬会社を営んでいる。材料は主にギルドから魔核を購入し、それに植物などから成分を抽出して混合し、口の中で水なしで解ける錠剤(チュアブル錠)やグミなどの形態にして販売している。

 副業として小説を書いている。

 第一作目は「堕天使転生 ~Lip Majic Generations~」だ。

 自叙伝ともいえるが、私と仲間の夢の物語である。この物語に終わりはない。


 ――クロは寝坊助だ。いつまで寝ているつもりだ? 早く起きてこい。

クロがいる空に呼びかける。


真っ黒な空の隙間から天使の梯子が揺らめくように伸びていた。



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