8 メキシコの壁


「エッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ」


 ギルド職員は驚きを隠せないでいる。

「機械族は、龍神様が種として認めるとおっしゃってました。それから機械族の立国についても認めると。でもそれはデウスエクスマキナが拒否しました。デウスエクスマキナは人族のノブに統治を任せるようです」

 神使のヨウビが白狐の姿になり、支店長に話した。


「これは神使様。失礼いたしました。神使さまの申すことであれば、龍神様のお言葉として受け止めざるを得ません。わだかまりはありますが、私たちも協力いたします」

「ありがとうございます。今日は、その立国にあたって、少しでも足しになればと思って我々のこれまで倒した悪魔や魔物の討伐報酬を受け取りに来ました。魔核はないのですが、報酬は貰えますか?」


「魔核がない場合は、マイクロチップにあるログを調べて算出できますが、魔核をギルドで売って収入を得ることができないため、悪魔や魔物を倒したという実績に対する対価となります。そのため魔核がある場合と比べ10%の報酬となります。それでよければ、こちらに皆さんの手をかざしてください」

 何かの読み取り機なのだろうか。光った台の上に全員で手を入れる。


 すると、約1分後その結果がモニターに映し出された。

 合計すると 1兆8355億1375万龍(約18兆円)と表示されている。

 ――えっ そんなに!

 国家予算としては少ないかもしれないけど、資源を購入するには十分な金額だ。


「ノブ。これで立国できそうか?」

「十分だ。後は国をどう動かすかだな」

「も、申し訳ありません。今すぐこの金額はこの支店で支払うにはあまりにも大きすぎます。スイスにあるギルド本部と相談させてください」

 支店長が青ざめた顔で申し出てきた。

 ――確かに、一支店で決められる額ではないだろう。


 茶室で抹茶を飲みながら待っていると、1時間後、京都支店長が現れた。

「お待たせしました。ギルド本部と協議したところ、この龍神世界を救ってくれた感謝の気持ちを込めて、報酬は合計で5兆龍とするそうです。その支払いについては北アメリカにギルド支部を開設して引き出せるようにしておくとのことです。

 それでよろしいでしょうか?」

「助かります。ギルド支部も作ってくれるんですか?」

「はい。本部の決定ですので、早速手配いたしたいと思います。支部や支店はどこに作りますか?」


 アリスが答える。

「アメリカは広いので、できれば支部を3か所作ってください。支店は都市といえるものができたらその都度増やしていくのがいいでしょう。ノブどう思いますか?」

「そうだな。海沿いに1か所ずつ、大陸中央部に1か所あるといい。人口は機械族を入れても5万人くらいしかいない。支店は人が増えてからでいいだろう。差し当たって、サンフランシスコ、ワシントン、オクラホマシティあたりがいいだろう」

「分かりました。その場所に設置いたします」


 そんなやり取りをいくつかした後、ギルド京都支店を出てきた。

「龍神様からお伝えがありました。日本に住む天上族の30%をアメリカに移動させるそうです」

 ――それは助かる。天上族が住めば、それに安心して移住してくる人も増えるだろう。


 人を増やすには、変な壁があってはいけない。

 ノブが最初に行使したのは、メキシコとの境にある壁の破壊だ。

 我々は、まずティアリの瞬間移動でワシントンに飛んだ。

 それから美夜は炎炎に、日葵は雷雷に、他のメンバーはフロートシップに乗り込み、メキシコの壁まで飛んで行く。デウスの塔にいたエクスマキナたちもついてくる。

 ワシントンからメキシコの壁まで約3000km、約10時間で到着した。


 マリーゴールドが咲き乱れる小高い丘の上に、フロートシップの4つ足を出し、そっと着陸させる。


 人族のタロット大統領が作ったという壁は、高さが10m、厚さが1mで、メキシコ地方との国境沿いに大西洋から太平洋に至るまで鉄の壁がそびえ立っていた。

 壁の上には所々レーザー照射機が取り付けられている。現在も稼働中で、上空を飛んできたフロートシップを落とすらしい。

 ――でも海を泳いできたら関係ないような気もするけど、一種のパフォーマンスなんだろうか?


「みんな。派手に壊すぞ!」

「オオォーーーー!」


「雷雷、やるよ!」

「ワン!」

 まず日葵がユニコーンの槍「ライジングサン」を掲げ、特大の「豪雷」と「雷球」をエクスマキナイエローにぶつけていく。


「チャージ!」


 稲妻と雷球を十数発、エクスマキナがチャージしたところで


「充填完了。電磁加速砲レールガン発射します」

 エクスマキナの腕が大砲のような形に変化し、ウィウィウイィィィーーーーン という音の後


「発射!」


 特大の電磁波を伴う光の束が鉄の壁にぶち当たる。

 鉄の壁が放電し、いかづちの龍が鉄の壁上部を走っていく。

 レーザー照射機が次々暴発していった。


 美夜と炎炎、エクスマキナレッドが所々、バーナーのように鉄の壁を溶かし、切れ目を入れていく。


 次にノブが「地割れ!」を起こし、瑠璃が「泥沼!」というと

 鉄の壁を支えている地面が緩くなる。


 さらに碧衣が「颪!」で強風を壁に向かって吹かせると、鉄の壁は波を打つように倒れていった。


 ――やっぱり、この5人の攻撃力はすごいなぁ


 エクスマキナやアンドロイドは、その倒れた鉄屑を100人で1組となって持ち上げ運んでいく。


 ティアリは、邪魔な岩や鉄屑を「瞬動!」で飛ばし更地にしていく。


 蓮月と花子ちゃんは、鉄の壁がなくなったスペースに木や花を植えて、お花畑にしていった。

 紅々李が「ライトアップ!」で花畑を照らし、ヴィーナスが投げキッスをしてウインクすると一気に花畑が咲き乱れた。


 これで鉄の壁はなくなり、自由に行き来できるようになった。


 龍神歴5030年 人族と獣人族を隔てていた『メキシコの壁』が崩壊した。


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