7 立国(2)


「わたしは『アリス』となり、Lip Magic Generations の一員として冒険をします。私の解析ではこの国の統治はノブが最適です。さらにその補佐官として瑠璃を指名します」


「機械族の国であろう。儂がこの国を統治できようか?」

 ノブは悩んでいるようだ。

「国の統治において、龍神世界でこの二人に勝るものはいません。ノブはいずれこの世界全体を統治するでしょう。私は機械族が立国することを目的としていません。機械族が他の種族と同様に扱ってもらえばそれでよいと考えます。もちろんノブの国の統治に協力を惜しみません」


「ノブならできるよ。アフリカもまとめたしね。私も一緒にやってみるわ」

 瑠璃はノブの統治に前向きのようだ。


「瑠璃姫がいうのであれば考えてみよう。ただ、国を立ち上げるというのは簡単ではない。まずはある程度の資金が必要だ。それと国を守るための組織、警察や消防、病院、教育施設がほしい。そして何といっても人がいないと話にならん」

「治安対策はエクスマキナやアンドロイドにやらせましょう。病院や教育施設も用意します」アリスが言葉を発する。

 ――それらの施設が整えば、いずれ人は集まってくるように思う。


 問題はお金だ。他の国と物資の輸出入を行うには、相当な資金が必要だ。

 北アメリカの化石燃料や鉱物などの資源は人族が枯渇させてしまって、底をついている。エネルギー源は自然エネルギーを使えばいいが、物を作るためには資源がほしい。それを購入しなければいけない。


「そういえば、うちらけっこう悪魔とか魔物倒したよね。まだ換金してないしギルド行ってみようよ。少しは足しになるかもよ」

 碧衣が思いついたように話すが、国家予算を組めるまでの収入があったとは思えない。でも、物は試し、行ってみるか。


 ――「京都!」――


 全員で飛んできた。もちろんアリスやヴィーナスも入っている。

 京都御所のギルド支店に自動ドアを開けて入っていく。


 ザワッ


 っと支店にいる職員の目が集まる。――前と雰囲気が違う。

 するといきなり支店長が顔を見せた。京都支店長は女性で、この世界では古典的な着物を着ている。


 パチパチパチ……


「皆さん。Lip Magic Generations の御一行がやっといらっしゃってくださいました」

「どうしたんですか?」

 あんなに静かだったギルド支店がざわめいている。

「どうしたじゃないです。神使の幻尾ゲンビ様からお伝えがありました。Lip Magic Generations の皆様のお陰でこの地球は救われたと……機械族を討伐してくれたんですね」

「いえ、機械族はほとんど倒してないですよ。悪魔とか魔物は相当の数を倒したと思いますが、機械族はあまり倒してないです」


 ――エクスマキナは確かノブが倒したゴールド1体と、アンドロイドはおよそ10体倒しただけだ。

「そうなんですか? 私たち人族がアメリカから締め出された原因の機械族を倒してくれたものだと思いました」

 支店長を含めギルドの職員は明るい表情から一転して暗い影を落としている。


「機械族の擁護をするわけではありませんが、人族が地球環境を顧みず地球の資源を搾取していたことや機械の扱いを蔑ろにしていたことに対して抵抗していたように思います。さらにいうならば、機械族から人間に手を先に出したことはないと聞いています。どうなんですか?」


「確かに……でも私たちの国、土地を奪い取ったのは機械族です」

「もしよろしければ、またアメリカに来てはもらえませんか。以前住んでいた土地はお返しします。建物は時間はかかりますができるだけ復元しましょう」

 アリスが出てきて話をしてしまった。


「あなたは誰ですか? 何の能力もないようですが……」

「その目にかけているモニターで確認できませんか?」

 我々のモニターでは言葉が翻訳されたり、一度戦った相手であれば相手の情報を表示させてくれる。

「あなたたちのモニターには戦わずとも相手の情報が映るんでしょう」

「なぜそれを…… えっ、そんなこと有り得ない。全てのステータスが『0』って」

「やっと気がついたようですね。これで私が何者か分かりますか」

「えっ、えっ…… うそ!」

 支店長の目にかけていたモニターの数値がどんどん上がっていく……

 全ての数値が無限大になった。

「あ、あなたは誰?」

 支店長の額からは冷や汗が滴り落ちている。


「あなたたちのモニターには、身体に埋め込んだマイクロチップですべての冒険者が得た情報が映し出されるようになってますね。でもそれはあまり意味がないこと。個々の能力はわかるかもしれませんが、この者たちが集団で戦う時の能力は計り知れないものがあります。この者たちは個々の能力はAからSでも、集団ではSSSクラスに匹敵します。数字に頼っていてはの本質は掴めませんよ。数値ではなく心で見るのです」


 ――うん。そうなんだけど、機械族にそれを言われる人間って――

 少なからず、ここの職員はショックを受けているようだ。


「本当にそうですね。心改めます。 すみません。もう一度確認させてください。あなたはもしや機械族ですか?」

「はい。私は Lip Magic Generations のメンバー『アリス』、デウスエクスマキナの分身です」


「エッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ」

 ギルド職員は総立ちになり、部屋の端っこに避難している。

 逃げずに窓口に立っているのは支店長のみだ。――さすが支店長。肝が据わっている――しかし、顔がピクピクひきつっているぞ。

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