10 九尾の狐と仲間たち

 日本に帰ってきて間もなく、九尾の狐「ショウ」は「桃太郎」と知り合うことになる。(すふぃんくす・のーば作『勇者「桃太郎」と九尾の狐たち 』読んでね)

 九尾の狐「ショウ」たちは桃太郎を助け(?)、それぞれ女神カードを手に入れた。


 女神カードには、将来の嫁となるであろう相手の「住所、氏名、年齢、趣味、攻略方法」が書いてある。

 まずは一番近くにいる朱雀の将来の嫁「火の鳥」を探しに行くことにした。


 朱雀の場合は、「住所:邪馬台国の一番高いところ、氏名:火の鳥「不死子」、年齢:燃え萌えの180歳、趣味:身体に火をつけること、攻略方法:暖かい心のこもった身も溶けるような炎をあげると喜ぶ」と書いてあった。


 この時代、富士山は活動期に当たり噴火をしていた。たぶんその噴火口にいると思われる。ショウは孫悟空と一緒に筋斗雲に乗り、朱雀はそのまま飛んでいった。

 するとそこには、溶岩を食べている「火の鳥」がいるではないか。

 朱雀はその燃え上がるような美しさに、さらに自分の身を熱くした。


 自分と同じような鳥がいることに、火の鳥は驚いたような顔を見せたが、少しはにかんでいるようにも見える。

 朱雀は自分で作れる最大限の炎を作り出し、さらに「ショウ」が狐火で彩を与え、その炎を火の鳥にプレゼントしいきなりプロポーズした。


「あなたを、何度でも燃やし尽くしてみせます。燃え尽きるまで一緒にいてください」

 火の鳥はフェニックスと呼ばれ、燃え尽き死ぬことはないのだがこのプロポーズにとても喜び、火の鳥と朱雀は富士山を再度爆発させた。2羽の燃え上がる炎はいつまでも続いたという。


 次は孫悟空である。


 燃え上がっている2羽の鳥はそのままにしておき、今度は孫悟空の嫁さんを探しに行くことにした。

 女神カードには

「住所:恐山の温泉、氏名:申野ジーラ、年齢:悶々嬉々とした20歳、趣味:お風呂に入ること、攻略方法:とにかく強いこと」


「悶々嬉々」がよく分からないが、気にしないで恐山の道を進んでいく。その道の途中、何匹もの猿の干からびた屍骸が転がっている。恐山っていうくらいだから、こういう屍骸は景色の一つとして前向きにとらえ、気にしないで進んでいくと湯気が立っているところを見つけた。温泉である。


 そこには、何匹ものメス猿がお湯に浸かっていた。

 その中でも金色の毛をした女神カードに描かれていた一際美しい猿がいた。


 孫悟空はキラリと目を光らせ、そのメス猿に声をかける。

「お嬢さん、オレと遊ばないかい」

「ええ、いいわよ。私を満足させることができるのかしら?」


 孫悟空は喜んで、そのメス猿「申野ジーラ」の手を取り、草むらの奥に連れて行った。

 九尾の狐「ショウ」の役目はここまでと考え、その場を後にする。


 3日後、お別れに孫悟空に挨拶に来ると、精気を吸い取られたような顔をして

「ショウ、多分この役目はオレに与えられた運命だと思う。オレにしかこの役目は果たせないだろう。他のオス猿のためにもオレはこの地に残ることにした」

 詳しく聞いてみると、あれから3日3晩、あれをしていたそうである。彼女はとにかくあれが強い男を求めていたそうだ。


 孫悟空の後ろから、顔をツヤツヤに照からせ、満足気なジーラが顔を覗かせる。

「連れてっちゃダメよ。このオス猿はもう私のものよ」

「分かった。がんばれよ孫悟空」


 なんとなく、孫悟空の悲痛な顔が気になり、孫悟空の頭の輪『緊箍児きんこじ』は取ってあげることにした。これも武士の情けだ。

『これも子孫繁栄のため、応援してるからな孫悟空』 ショウは心を鬼にしてその場を去った。

 それ以来、恐山にはとても寒さに強い猿が生まれ育っているという。


 最後はショウだ。

 ショウが開けた女神カードには

「住所:北の大地の中央にある山、氏名:白狐「煌尾」、年齢:200歳、趣味:風、攻略方法:自分より強い狐が好き」と書かれていた。とても綺麗な女狐だ。ショウはひと目で気に入ってしまった。


 実はこの「煌尾」は、龍人世界にいたエルフだ。龍神世界では若くして亡くなってしまい、別世界を希望して人神世界に来た。人神世界ではエルフ以外の動物を希望し「狐」に転生した。

 そのため「風のスキル」が使用でき、「狐」では通常有り得ない寿命になっている。

『自分より強い狐って、まさかあれじゃないよな』 ショウはあれには自信がなかった。

 ――孫悟空のようにはなりたくない。


 北海道の中央部にある大雪山を探し回り、白い狐を見かけたショウはその狐に声をかけた。

「あの。よかったら私と付き合っていただけませんか」

 かなり在り来りな誘い文句だ。


「あなたは噂の九尾の狐ね。どのくらい強いの? 私に勝てる?」

「どのような勝負をしますか?」

「私に勝ったら、付き合ってあげてもいいわよ。勝負は、そうね、あなたの得意そうな魔法にしましょう。この山には雪男が出るの。それを先に倒したほうが勝ちでいいかしら」

「分かりました」・・・これなら、勝負になりそうだ。


 2匹の狐は、大雪山で雪男を探し出し、勝負を挑んだ。


 まずは煌尾が攻撃する『鎌鼬かまいたち!』

 鎌鼬が雪男を襲う・・・雪男は素早く雪でカマクラを作って防いでいる。


 次はショウの番だ。『火炎!』と口から火を吹く。

 カマクラを火炎が襲い、溶かしていく。雪男が汗をかきながら出てきた。


 煌尾は『おろし!』で雪男を吹き飛ばす。

 しかし、その『おろし!』により吹き飛ばされた雪男が山の斜面に当たり、雪男が雄叫びを上げると巨大な雪崩が発生した。


 煌尾もショウも雪崩に飲み込まれそうになる。

 ショウは素早く巨大化し、煌尾を咥える。

『上昇気流』を発生させ、大雪山上空へ飛び上がった。


「私の負けね。認めるわ」

 雪男は倒すことができなかったが、煌尾はショウを夫にすることを認めたようである。


 *賢明な読者のみなさんは気が付いたと思うが、煌尾は「碧衣」の前前世である。

 煌尾は亡くなった後、天界ではAクラスに入り剣神世界に転生している。何度か生まれ変わり、後に「碧衣」として狐族に生まれた。碧衣は早くから、別世界にヨウビやハクビなどが転生してきていることに気がつき、けっして、前々世が煌尾(母親)であったことを言わないように念波で固く守らせていた。


 大雪山での一件の後、約800年間、亡くなるまで煌尾はショウとともに夫婦として過ごす事になる。

 その間に子供を妖尾(ヨウビ)、白尾(ハクビ)、雅尾(ミヤビ)、幻尾(ゲンビ)、華尾(ハナビ)と授かることになる。前世がエルフのためなのか、だいたい100歳間隔で生まれている。


 クロは、ショウや煌尾に悟られることなく、ショウの子供たちとも仲良く遊び、獣や魔物から守っていた。煌尾は子供たちから猫娘のことを聞いていたが、察しがいい煌尾は深い事情が有りそうだと暖かく見守ることにしたようである。


 クロは九尾の狐が亡くなる前に、猫娘としての約2000年生きることになるが、その後も、ショウのことを霊体として見守り続けた。


 ショウが九尾の狐の天命を終えたとき、一度天界に戻っている。ショウが「人」として生まれ変わることを希望したとき、クロは猫のままショウの「守護霊」となった。女神サキュバス・クロゥであったクロの存在は特別で、ショウの見守り役も兼ねていたことから、クロの希望はそのまま受け入れられた。


 九尾の狐「ショウ」が亡くなった時、4世界の神は話し合い、どのように生まれ変わらせるか迷っていた。九尾の狐は約2300年間、特に悪いことをするわけでもなく、むしろ様々な魔物を倒し人神世界では大きな貢献をしていた。しかも稲荷大社で崇められるようになり、神として復活させてもいいのではないかという人神の意見も出た。


 しかし、龍神や魔神はルシファーの復活を恐れた。

 最終的には九尾の狐「ショウ」の意見を聞いて判断することとし、

「私は平凡な人生を歩みたい」とのショウの希望から平凡な普通の「人」として転生させることにしたのだった。

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