7 ユキ


『剣神が手伝ってほしいそうなんだ。一度天界に戻ってきて剣神世界に行ってくれ』


 剣神世界に行くためには、一方通行のため鏡の間から龍神世界、人神世界を通って剣神世界に行く。もう話は通っているようで、ショウは次々鏡の間にある異世界の鏡に入って剣神世界にやってきた。


*剣神世界のアトランティスにも世界樹があるので、簡単に他の世界にいけそうだが、このときはまだ、剣神、龍神、人神世界の世界樹は樹齢1500年しか経っておらず、ほかの世界の世界樹と繋がってはいたが、人が通れるほどの穴をくり貫くまでには至っていない。


「ようこそいらした」

 出迎えたのは、創造神「剣神」である。


 羽衣を着て、腰には剣を挿している。キリっとした女神だ。

「初めまして、剣神様」

「初めましてか・・・そうだな。そういうことにしておこう」

 ――会ったことあったかな?


 ショウには、ルシファーが眠っている状態のため、ルシファー・ショウとなっていた頃の記憶はない。


「実はアトランティスに行ってほしい。あそこに少し悪さをする女神がいるんだ。自由気ままな奴でな。なかなか私の言うことを聞いてくれん」

「創造神の剣神様でもダメなんですか? 私にできるでしょうか?」


「君の噂は聞いている。女神ならお前になびくかもしれんでな。私も危なかったわ。フフ。少し私と遊んでいくか?」

 剣神が少し羽衣を肌けてみせる。


「そんな、剣神様と遊ぶとか恐れ多いです」

「まあいいだろう。しかし、……」

 剣神が私の顔を窺う様に覗いている。頭の中を透視されているようだ。


「……君はまだ愛というものを知らぬな。 恋愛とはいいものだぞ」

「はい。いずれ教わってみたいです」


「こればっかりは教えてどうにかなるものではない。自分で経験し見つけることだ」

「はぁ」

 ショウは気の抜けた返事をした。


「それでは私をアトランティスに移動させて顕現させてください」

「うむ。この魔法陣に乗るが良い」


 剣神は持っていた剣を踊るように振り回し、2つの魔法陣(移動魔法陣と召喚魔法陣)を床に重ねるように作った。

 ショウがその魔法陣の上に乗ると、スッと消えアトランティスの世界樹の前に現れた。


 そこに待っていたのは剣神世界のアトランティスにいるエルフの長老「セフィロト」だった。

「ショウ。待っておったぞ。お主のことは剣神や前長老「アーク」に聞いておる」


 エルフの長老「セヒィロト」は長老といっても齢500歳でまだ若い方だ。先の長老「アーク」は、魔神世界から派遣されてきた長老で、今は世界樹になって1000年くらいだという。

 ショウが育った魔神世界のアトランティスでは、長老「アース」と「アーク」は同じ世界樹から生まれた兄弟だ。


 *エルフは世界樹から生まれ、エルフとして約1000年活動した後、世界樹となりその後約1万年生きる。約100年毎に花を開き、その実からエルフが生まれる。

 前長老「アーク」の子供(世界樹の花の実)が「セフィロト」だ。


「実はスタディオン山が氷付けにされて困っているんだ。助けてくれないか」

 スタディオン山は標高が約950mでそんなに高い山ではない。冬には雪が降り積もるが、年中雪を被っているわけではない。


 春には雪が溶け始め、若葉が生い茂り様々な花が咲き乱れる。

 夏になれば完全に雪はなくなり、緑が濃い山となる。秋には赤や黄色で染まった紅葉が美しい活火山である。


 このスタディオン山の雪が降る範囲が広がってきているそうで、世界樹にも影響が出るかも知れないと心配しているようだ。

 それで、「セフィロト」が世界樹に相談したら、今は神使となっている「ショウ」を教えてくれたらしい。


「私は、以前長老のアースさんやアークさんにはとてもお世話になったんです。ぜひ手伝わせてください」


 ショウはセフィロトたちエルフとともにスタディオン山に向かった。


 山の麓に来ると雪が降り始め、夏だというのに、吹雪がショウたちに襲いかかってくる。

 エルフやショウは、風の精霊の加護を受けているので強い風に吹かれようと、風の精霊が全てを防いでくれる。そのまま空中を飛びながら山頂に向かって進んでいく。


 深い雪と樹氷に囲まれた森を3時間ほど進むと、雪と氷でできた城を見つけた。


 城を見上げると、ベランダで何やら楽しそうに歌っている女神の姿があった。

『蟻の~ママが~・・・・・・♪』


「あの~ ちょっといいですか?」

『な~にあなたは? 私は自由に生きるの。邪魔しないでもらえる』

 確かに自由奔放な女神のようだ。


「あなたのために、下界で迷惑している人達がいるんです。雪降らせるのをやめてもらえませんか?」

『雪は私の友達よ。私の心の傷あとを消してくれるの』

「雪で寒がっている人がいます」

『私はちっとも寒くないわ』

 ――困ったな。 かなり自己中だぞ。


「どうしてこんなことするんですか?」

『私はとっても傷ついて悩んでいたの。誰にも相談できずに』

「何を悩んでいたんですか?」

『恋わずらいね。でももういいの。私は変わるの。自分を信じることにしたの』

 ――恋愛ってよく分かんないんだよな。どうしよう?


「近くに行っていいですか? 私は剣神様の命をうけて来ています。」

「剣神? しょうがないわね。別にいいけど、少しだけよ。 先に言っておくけど、私はこの山が気に入ったの。どこにも行かないわよ」

 風の精霊の力で飛んでいき、ベランダから中に入った。


 ショウが中に入るなり、その女神がショウに飛びついてきた。

『ハッ! 私どうしちゃったのかしら? ときめいちゃった』


「私決めたわ。ビビビっと来たの。あなたとならどこでも行くわ」

 ――なんかコロコロ変わる女神だな。恋っていうのはこういうものなのか?


「私と一緒に来るということですね。いいでしょう。 とりあえずこの雪や氷を溶かしてくれますか?」

「溶かすことはできないけど、雪を降らせるのは止めるわ。後は次第に溶けてくれると思うわよ」

「分かりました。それでいいです」


 このときから、白銀の女神「ユキ」はショウと行動を共にするようになった。


 ショウは魔神世界に戻るため、白銀の女神「ユキ」を引き連れて剣神世界の天界に戻った。引き連れてといっても、移動魔法陣を描いたのは「ユキ」だ。


 戻ってくるなり、

「お姉さん。あまり勝手な行動は困ります」

「あなたはいいわよ。この世界の創造神とかやってるんだから、自由にいろいろ出来るでしょ」

 ――って「ユキ」って剣神の姉だったんだ。それだとあまり命令とかできないよな。


「創造神も何かと大変なんですよ。お姉さんの方が自由にやってると思います」

「大変なのは少しはわかるけどね。でも私見つけたの。このショウと一緒にいることにしたの。邪魔しないでね」

 ――姉がいると、言葉遣いが変わるな。・・・少し威厳がなくなっている。


「なんかそうなるような気がしてました。致し方ないです。ショウさん、気ままな姉ですがどうぞよろしくお願いします」

「はい。剣神様にお願いされたら、従わざるを得ません。でも私なんかでいいんですか?」


「な~に? 私じゃ不服だっていうの? ショウ? 嫌がっているように聞こえるわよ」

「いえいえ、とんでもない。ユキさんの方が魔力強そうだし、私の方が足でまといになるような気がしただけです」


「まぁそうね。でもあなたの固有スキルは特別なものよ。そのスキルは神をも凌ぐ力を持っているわ。私の目は確かよ」

「はぁ。どうぞよろしくお願いします」

「なによ。その気のない返事は・・・」

「まぁお姉さん、そのくらいに。ショウさんも困っているじゃないですか」


 その後、私は白銀の女神「ユキ」と一緒に鏡の間から魔神世界に戻ってきた。

 ショウは魔神世界でユキと一緒に、世界各地で悪魔や魔物を倒していった。


 そしてギルド組織を立ち上げ、世界を歩き回った。


 このときがユキにとっては最高の時だったかもしれない。

 他の女神や天使がショウに惹かれちょっかいを出そうにも、白銀の女神「ユキ」の魔力は絶大で簡単にはショウには近づけないでいた。


  

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