6 ショウ


 エルフに救われたルシファー・ショウは、後に魔神世界と言われる地球のアトランティスで目覚めた。

 人神が封印した記憶は、サキュバス・クロゥの記憶だけであった。


 ルシファー・ショウはエルフに感謝し、こう告げた。

「今回の戦いで私の中には2つの人格が存在していることに気がついた。私が死にかけた時、ショウが目覚めたのだ。今までの私はルシファーが主人格となって活動してきた。今回の戦いで私は相当の魔力を消費した。私は暫しの間、眠ることにする。その間、この身体とスキルはもう一つの人格、ショウに預けることにした。勝手なお願いだが、エルフ「アース」よ、ショウの人格が安定するまで見守ってほしい」


「それはかまわんが、いつまで眠るつもりだ?」

「3000年になるか、5000年になるか分からん。私の力が十分に回復するまで眠りたいと思う」


 そして同時に、ルシファー・ショウは自ら転生し、アトランティスにいる原住民の赤子「ショウ」として生まれ変わった。この後、すぐにルシファーは眠りについた。

 この時の「ショウ」は、黒猫「ショウ」が記憶を消された状態でルシファーと魂を融合させられたため、サキュバス・クロゥと思い出や記憶はない。

 その他の記憶もルシファーは眠っている状態のため、無垢の赤子と同じであった。


 エルフの長老「アース」は原住民からその赤子を引き取り、様々な教育を施しながら育てていった。

 原住民の寿命は約300年であった。

 ショウは、その寿命を迎える前に、エルフの長老「アース」がまず地に根を下ろし世界樹となった。


 アースは世界樹になる前に、魔神に約束させた。

「ショウが天界に行っても、人として転生させよ」

 約束というより、これは命令に近いだろう。


 エルフは滅多に創造神と話したりしないが、地球の自然を守るエルフの長老の言葉は、創造神よりも重かったのである。

 この時まで、ショウは天使が地に落ちた状態の「堕天使」という扱いだった。

 このエルフ「アース」の言葉によりショウは堕天使ではなく、「人」ではあったが「天使」として扱われることになる。


 ショウは天命を迎え、天界に上がるとすぐにアトランティスの大地に再度生まれ変わった。しかも生まれ変わる時にはエルフに授けられた知恵や知識を記憶として持って生まれてきた。ショウは何事にも侵されることなく、純粋な心で成長していった。


 3回目の天命を迎え、ショウが天界に上ったときには神やエルフと同様に扱われるまでになっていた。


「ショウ。お前に日本を任せる。うまく統治せよ」

 今から約5000年前、魔神は、ショウを神使として日本に派遣したのである。


 しかし、ショウや魔神は気が付いていなかった。

 ショウに隠されたスキルがあることを――


 ショウのスキルは「トレース」とルシファーが持っていた「封印」を使うことができたが、ショウはエルフからトレースした風の精霊「シルフ」も使うことができた。

 しかし、サキュバス・クロゥの持っていた異性を惑わすスキルがあることにはまだ気がつかなかった。


 ショウが原住民の子として生まれると、エルフがすぐにショウを引き取って育てた。エルフに育てられたショウは、異性のことを知らなかったのである。

 エルフは基本的には植物で、性としては中性ということになり、エルフを惑わすことはなかったのである。


――★☆★――


 ショウが日本に降り立ったとき、日本は魔物で溢れていた。

 日本各地では神や天使が、魔物や時に出てくる悪魔と戦っていた。


 ショウがまず始めたことは、エルフに教わった知識を活かして、日本に住んでいた人族や獣人族、龍人族などの教育だ。

 それらの種族は神を敬っていたことから、神使であるショウの話すことをとても真摯に受け止め実行したのである。


 ショウが教えたことは、それぞれの種族の特徴を生かし、悪魔や魔物に対抗する力をつけることである。

 人族は知力を、獣人族や鳥人族は素早い動きを、龍人族や魚人族は腕力を使って倒す術を覚えさせた。


 さらに、エルフや魔神に教わった魔法陣を広めた。

 最初は初歩的な魔法陣を教えただけだったが、人族はそれを元に上位の魔法陣を研究し作り上げていく。

 それらの魔法陣を作り上げることで、比較的軟弱な人族でも弱い魔物を倒せるようになっていく。

 当初は、ある程度強い魔物や悪魔は、神や天使が相手し、弱い魔物は人族などが倒していった。

 すると、人族でも突発的にある程度強い魔物を倒すことが出来る者が出てきた。その者は、人族では考えられない腕力であったり、強い魔力を持っていることもあった。さらには特定のスキルを使えるものまで現れた。


 それらの特殊能力を調べていくと、比較的他の種族との混血であることが分かった。他の種族の血液が交じることで遺伝的変化を起こしたのだ。


 しばらくすると、魔物を倒すことを生業とするものが出てくる。冒険者の始まりである。

 最初は被害のあった者からの依頼を受け、魔物を倒していたが、冒険者が増えてくるとそれをまとめる組織が必要になってきた。この組織がギルドの基礎となる。


 ショウは冒険者やギルドを活用し、まず弱い魔物を駆逐していった。


 その様子を見ていたのが、女神や女天使だった。

 ショウはなぜ女神や女天使が興味深そうに集まってくるのかよく分からなかった。

 ショウは異性というものがどういった存在なのか分からない。

 というよりあまり関心がなかったのかもしれない。

 女性のことに関して、まったく何も分からないショウは、女神や女天使から誘われれば会話をし遊びにも行く。


『なんだろう? このドキドキする感じは?』


 ショウには美意識はあった。

『女性というものはどうしてこんなに美しいんだろう?』

 女神たちの造形は一応に美しい。


 女神たちは取り合うように、ショウを遊びに誘い出す。

 しかし、ショウからは手をとることさえしてこない。

 業を煮やした女神たちは、自分から仕掛けることにした。

 まずはキスを・・・・・・

 そして身体を・・・・・・


 ショウはこれまでにない快楽を味わった。


『へ~ 女性ってこういうふうに遊ぶものなんだ』


 エルフと専ら交流していたショウには、女性に対する知識が全くなく、この時のショウにはまだ恋愛というものが分からなかったのかもしれない。

 ショウは恋愛感情というより、ひとつの遊びとして女神たちと付き合うようになっていく。


 ショウは女性が好きになっていった。

 単純に男性だから女性が好きだということではなく、女性が持つ美意識、全てを包み込む優しさ、女性特有の母性本能に惹かれていった。

 だがしかし、女性にのめり込むことはなく、神使としての役割を果たし、女神たちと協力し強力な悪魔たちを駆逐または封印していった。


 約1000年を過ぎた頃、日本にいる主だった悪魔を駆逐し、日本が平穏に住めるようになった頃、魔神から神使「ショウ」に対して念波が届いた。

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