3 サキュバス・クロゥとヴィーナス


 サキュバス・クロゥは、人や天使、神の夢の中に現れ、隠微な世界に陥れていった。

 その堕落した精神を狙って、悪魔たちが精神支配をしていった。

 サキュバスが悪魔側につくことによって、悪魔たちの勢力範囲が拡大していく。


 龍神は、かねてより親交のあった魔神にルシファー・ショウを預けることにした。

 もちろん、ルシファー・ショウには魔神との記憶はない。しかし、魔神はルシファーに親しみを感じており、魔神の管轄下であった日本を預けることにしたのである。


 日本をルシファー・ショウが統治し始めると、女神や女天使たちが集まり始め、悪魔や魔物たちを次々駆逐していった。


 そんなある時、天界で、ヴィーナスは天廊でルシファー・ショウとすれ違う。

 しかし、ルシファー・ショウはヴィーナスに目もくれず通り過ぎていった。


 ヴィーナスは類まれなる美貌を持っていたこともあり、言い寄る男、天使、男神は数知れず、圧倒的な美しさは、妬まれるどころか女性からも羨望の眼差しで見られていた。


 天廊でルシファー・ショウとすれ違ったとき、最初は何か考え事でもしていたんだろうぐらいにしかヴィーナスも考えなかったが、それを何度も繰り返されると、無視される事に腹立たしく感じ、逆に自分のものにしてやろうという感情が初めてヴィーナスの中に芽生えた。


 ヴィーナスは他の男には目もくれず、ルシファー・ショウに夢中になっていった。


 彼女のスキルは服従のスキルである。

 キスした相手ならば、種族、男女問わず彼女の命令には逆らえなくなる。

 通常はそんなことをしなくても、彼女の美貌や魔神の妻というだけで誰もが従っていた。


 ちなみに魔神も彼女の命令には従わざるを得なくなっている。

 ただこのスキルの効力には条件があり、キスした相手の身体のどこかにキスマークを残さねばいけなかった。このキスマークはそのままにしておけば、いずれ消えるものであるが、服従しているものに対し、キスマークを上書きすることは容易いことであった。


 ヴィーナスは、ルシファー・ショウをデートやベッドに誘い込みキスマークをつけようとした。

 しかし、ルシファーの魔断により全てはじかれることになる。

 それがヴィーナスの心に火をつけてしまった。


『なんとしてでも手に入れてやる』

 そのころのルシファー・ショウは、幾人もの女性を従えていた。

 ヴィーナスは、絶対に自分のものだけにすると企んでいた。


 そんなある日、ヴィーナスとともに寝室にいたルシファー・ショウはヴィーナスに誘いの言葉をかけた。

「おれは、堕天使に落とされることになったらしい。一緒に行かないか?」


 ルシファー・ショウはこの時は魔神に使えていたが、ヴィーナスの誘いを受け寝室に来ていた。ルシファー・ショウは、服従のキスマークをされていたわけではなかったが、遊びで女を抱くことはある。ヴィーナスは遊びに過ぎなかった。


 ただ、ヴィーナスの能力には以前から気がつき利用できないか考えていた。


 魔神は、ヴィーナスの支配を受けていたが、だからといってルシファー・ショウを許す訳にはいかなかった。魔神はルシファー・ショウを堕天使として追放することとしたのである。

 数日後、ルシファー・ショウは堕天使として下界に追放される。それに連れ添って、数多の女神や天使そしてヴィーナスもついてきていた。


 ルシファー・ショウは堕天使となったことから、悪魔とも交流を持つことになる。その頃の世界は、神、悪魔と世界が分かれていたが、実のところ神も悪魔も姿、形は違えどもそれほど大きな違いはなかった。


 しかし、数千年間も戦争を続け、お互いに忌み嫌っている。

 転生し魂を合体させられ、過去の記憶を持たないルシファー・ショウにはそれが不思議でならなかった。


 知力を持った中で一番の弱者は、何の能力を持たないまたは能力が小さい人間であった。ただ人間は繁殖力に優れており、弱い能力を補うだけの知力を持っていた。

 それら人間を除くと、神と悪魔には大きな違いはないように見えた。


 ルシファー・ショウが悪魔界に行くと、まず最初に近づいてきたのはサキュバス・クロゥだった。

 最初は珍しいものがきたという噂を聞いてやってきたのだが、ルシファー・ショウを見てすぐに気がついた。


『ショウを取り戻したい』


 最初はそう思って近づき、何度も交わりを持った。

 できれば、ルシファー又はショウの魂を吸い込み分離したかったが、ルシファーとショウの魂の結合は強く、簡単には解けないようだ。


 『どちらかの魂が弱体化しないと難しい』


 いつの日かショウを取り戻すため、サキュバス・クロゥはルシファー・ショウを傍にいて見守ることにしたのである。


 悪魔界に来てもルシファー・ショウの統率力は頭が抜けていた。

 リリスやメドゥーサなど女悪魔を次々と仲間に引き入れていく。

 さらにヴィーナスは男悪魔の心を奪っていった。


 そしてもともといたサキュバス・クロゥが仲間として加わり、約1000年後には、ルシファー・ショウ軍は、四大神の軍、悪魔軍と同等の三大勢力といえるまでに拡大していった。


 ルシファー・ショウ軍は簡単に言うと、神、悪魔たちの混合群である。


 ルシファー・ショウ軍の主要な女神や天使は

 美の女神「ヴィーナス」、水を司る女神「ウンディーネ」、火を司る女神「サラマンダー」、風を司る女神「シルフ」、地を司る女神「ノーム」、光を司る天使「アスカ」、月を司る天使「アルテミス」、雷を司る天使「ヴォルト」、死を司る堕天使「サマエル」、


 闇を司る女神(兼悪魔)サキュバス・クロゥと闇を司る天使「プルートー・アン」、それに続くサキュバス一族


 主な悪魔は、

 ヴィーナスに堕とされた男の悪魔たちや、「ヴァンパイア・ドラキュラ」、「フランケン・シュタイン」、「バーサーカー・ワーウルフ(狼男)」に加え、

 女の悪魔デモネスには、快楽の悪魔「リリス」、石化の悪魔「メドゥーサ」、執着の悪魔「タンハー」、嫌悪の悪魔「アラティ」、愛欲の悪魔「ラガ」 たちがいた。


 ルシファー・ショウは神や天使、悪魔たちに大きな違いはないと感じていた。

 欲求などの様々な感情は、精神があるから生じるのであって、精神がなければただの物資である。

 悪魔があって、神があり、これは二律背反でありながら表裏一体の関係にある。


 どちらもなくてはいけないものなのだと考えていた。


 神の主なエネルギー源は、人族などが崇高する精神エネルギー、それに対して悪魔のエネルギー源は人族などが恐怖する精神エネルギーが主であった。つまりどちらも人族などが存在しないと自らも存在できないため、神の技ともいえる奇跡や自然災害を起こしたり、恐怖心を得るための心霊現象などを起こすことはあるが、滅亡させることはなかった。


 お互い相容れないために、これまで戦争を行ってきたが、それぞれ相手を認め許容すれば争うことなく別の道を見つけることも可能なのではないかと考えていた。


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