2 覚醒

「あなたの深層の記憶を見てもよろしいでしょうか?」

「いいですよ。どうぞ」


 Pi――ピピピ・・・・・・異常事態発生!

 Baa Bii Buu Bee Boo……

 異常事態発生!

 異常事態発生!


 ――その異常音とともに、私は夢の中に落ちていった――


『少し早いが、目覚めることにしよう』

「われはルシファーなり」


「あなたは、もう一人の人格ですね」

「そうだ。お前のお陰で覚醒できた。望みはあるか?」


「私はこの星の清浄化を求めます」

「分かった。わしのやり方でこの星を真っ新にしてくれよう。――龍神、覚悟するがよい! まず、この光る矢をとってくれぬか。動けん」

 すると弾けるように光の矢が飛び散った。


「お前の配下。エクスマキナを貸せ」

「少しあなたのやり方を見させていただきます。エクスマキナ協力しなさい」


 ショウいやルシファーは飛び上がった。自ら漆黒と純白の翼を生み出し、羽ばたかせ飛び上がった。続けてエクスマキナゼロも飛び上がる。

 ルシファーがデウスエクスマキナの作り上げた図書館の一番上まで到達すると、天窓が開放される。

 ルシファーはさらに上空を目指す。その後を追いかけるように10体のエクスマキナが飛んできた。


 ルシファーがはるか天空から下を望むと、そこには5角形のペンタゴンがあった。ペンタゴンの中央に今出てきた図書館と思わしき塔が立っている。

 螺旋状に天空まで届こうかという塔である。


「これがAIに支配されたデウスの要塞だな。デウスの塔とでも呼ぶか」


 その周りを森林が囲んでいる。ペンタゴンに通じる道はなく、塔を囲むようにいくつもの砂嵐が回転するように吹き荒れていた。

 デウスの塔は、その回転する砂嵐の中央部にあり、台風の目のようになっている。その砂嵐により、その外側の景色は全く見ることができない。

 Lip Magic Generations がワシントンD.C.にたどり着いても、この砂嵐が邪魔をしてペンタゴンに侵入するのは困難であったかもしれない。


「まずはカナダに行く」

 そうルシファーが言うと、カナダ方面の砂嵐が一部吹き止む。

 ルシファーはカナダに向かった。 大瀑布ナイアガラの滝を通り、カナダ上空を飛んでいく。


 ルシファーはカナダ最大の都市、トロントのビルの屋上に降り立った。

 そこから見下ろすと、有象無象の悪魔や魔物が徘徊していた。


「悪魔ども 我に集え 我に従い 我とともに戦え」


 ルシファーが吼えると、悪魔たちがこちらに向き直り、ぞろぞろと集まってきた。

 しかしそれとは別に、敵意むき出しで威嚇する悪魔、無視して逃げ惑う人を食らっている悪魔、中には悪魔とは言えないような魔物、妖怪も混じっている。


 まず最初に駆け付けて来たのが、

 ヴァンパイア・ドラキュラ、フランケン・シュタイン、バーサーカー・ワーウルフ(狼男)であった。


「我が主、長年お待ち申し上げておりました」

 それらの悪魔が雄叫びを上げる。


「ガァオォ~~」 「フンガーフガーァ」 「集まるでざます」


 それらに連なる悪魔や魔物が群がるように集まってくる。

 その数は30万を超えていた。


「ここに集まらん悪魔どもは敵とみなす。一掃する」

 ルシファーはそう言うと最初に来た3つの下僕しもべの悪魔に命令した。


「ドラキュラは空を行け フランケンはうみを ワーウルフは変身して地を駆け魔物を掃討せよ」


 ドラキュラが蝙蝠こうもり部隊をひきつれて、トロント上空に飛んでいる魔物を駆逐していく。

 フランケンは、人造人間部隊とともにオンタリオ湖に入り、泳いでいる魔物を駆逐していく。

 ワーウルフは、グリズリーやバッファロー、オオカミなどが魔物化したものを引き連れカサロマ城やケンジントンマーケットにいる魔物を駆逐していった。


 一方、ルシファーとエクスマキナたちは悪魔「ステンノー」と「メドゥーサ」に対峙する。

 ルシファーは、「ステンノー」と「メドゥーサ」から少し離れて、トロントでは最も高いCNタワーの今はもぬけの殻となっている展望室に降り立った。

 エクスマキナはルシファーの上空で待機している。


「ルシファー、久しぶりだな。何しに戻ってきた」

「この世を作り替えるためだ。お前らも手伝え」


「勝手にするが良い。我らはこの地に悪魔が住まう国を作る。邪魔をするな」

「それは出来ぬな。今お前らが協力できぬということは、いずれ驚異となろう。協力できぬとあらば、消し去るのみ」


「ウケケ。その身体は人間だな。しかも今目覚めたばかりで、何ができる? 死ねルシファー」


「石となれ!」 ……ステンノーは目を光らせた。


「魔断!」

 ルシファーは手刀によって、その魔法を切り捨てる。

 飛び散った「石化」の魔法は、周りにいた魔物たちを石に変えていった。


「まだその力が使えるのか!」

 ステンノーは少し驚いたようだったが、苦笑いを浮かべていた。

「エクスマキナレッド、ステンノ―とメドゥーサの周りに結界を張れ!

 他のエクスマキナは魔物たちを相手にせよ」


 エクスマキナレッドは、ステンノ―とメドゥーサ以外の魔物を外部に置き、赤い球体の結界を張った。


 球体の中には、ルシファーとエクスマキナレッド、そしてステンノ―とメドゥーサ以外はいない。


 ルシファーはステンノーと相対した。


「豪炎!」 ……ルシファーが美夜のスキルを使う。


 真っ赤な炎がステンノーを包み込んだ。

 しかし、ステンノーは自らを石化し、炎に耐えている。


「なかなか便利なものだな。このスキルは」

 ルシファーは、ショウのままでは使えなかった美夜の炎のスキルを強化して使えるようになっていた。


「こっちはどうだ? 『つらら!』 ん? 使えぬのか? 雪、手伝え!」


 雪ちゃんがふわっと出てきて、

「あら、いやよ。私、あなた嫌いだもの。まだショウが眠ってるから、一緒にいてあげるけど手伝わないわよ」


 雪ちゃんはそういうと、ルシファーの中に消えていった。

「ふん。お前などいなくてもわしの魔力で何とでもなるわ」


「レッド、お前はメドゥーサを相手にせよ」

「了解」


「荊棘!」・・・ん? これも発動できんのか? アルテミスは植物操作だからな。わしの言うことは聞いてくれぬようだな。


 その間にステンノーの頭の蛇の髪の毛が伸び、ルシファーを攻撃してくる。

 蛇が紫色の液体を飛ばしてきた。

 どうやら毒物のようだ。


「颪!」 一陣の強い風が吹き、毒が飛んでいく。

 ――これは使えるようだ。


「瞬歩!」ステンノーに瞬時に近づき、刀で蛇の頭を切っていく。

「...ッ」ステンノーは唇を噛んだ。

 ――このスキルは使えるぞ。


「雷豪!」・・・雷がステンノーに落ちる。ステンノーが痺れて悶絶している。

 ――これも使えるな。


「水球!」・・・ステンノーを包み込むように水の玉を作る。ステンノーが水の中で喘いでいる。


「蟒蛇!」・・・これはだめなのか。どうやら清浄系のスキルはダメなようだな。

「ちはやぶる!」・・・やはりだめだ。まぁいいだろう。


「混沌!」 …… ステンノーの皮膚が破れ、出血していく。

 ――フフ。クロのスキルは有効だな。


 ”グォーーーー”


 ステンノーは悲鳴を上げたが、まだ息絶え絶えにこちらを睨みつけている。


「ふん! そんな攻撃で我が消滅すると思ったか!? 我は何度でも再生する」

「やむを得ぬな。これではどうだ?」


 ルシファーは太刀を振り上げた。

「ま、まさか! やめろーーー」


「封印!」


 ステンノーは消え去り、魔法陣が残されていた。

「これはわしの固有スキルだからな。儂に逆らう者は全て封印するのみ。さて、メドゥーサはどうなった?」

 メドゥーサはエクスマキナと壮絶な戦いを繰り広げていた。

 どちらも五分五分の戦いである。


「おい。メドゥーサ! お前もこの兄と同じく封印されたいか? どうする?」

「兄は殺られたのか。致し方ない。分かった、われもお主の軍門に降ろう」

 ――メドゥーサの石化能力は欲しかったからな。これで戦いやすくなる。


「レッドよ。結界を解除せよ」

 真っ赤な結界が開け、元の景色に戻る。

 眼下には、ステンノーとメドゥーサの配下と思われる悪魔と魔物が見上げていた。


「メドゥーサ、お前らの配下に伝えよ。『我の命令に従え』と」

「分かった」メドゥーサは念波で配下の悪魔たちに命令すると動きを止め、その場に佇んでいる。


 間もなく、ドラキュラ、フランケン、ワーウルフが魔物を駆逐し、寝返った魔物も引きつれて戻ってくる。

 ルシファー率いる悪魔と魔物たちはざっと50万を超えていた。


 ――龍神世界を支配するにはもう少し集めないといけないか・・・・・・間も無くだ。龍神、お前の時代は終わった。


「フハハハハハハハハ・・・・・・」ルシファーは高らかに笑った。

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