4 ヴィーナス

 次の日、ラス・ベガスからサンタフェ辺りまで来ると一つの集団が、機械族と思わしきものと戦っているのを見つけた。


 冒険者ルールでは、

 ・近くの狩場に冒険者を見つけたら邪魔しないこと。

 ・その冒険者の狩場を犯さないこと。

 ・人工物を使ったら、できるだけ元の状態に復元すること。

 という暗黙のルールがあるが、この場合は一緒に戦うべきなんだろう。


 近くまで来ると、白い椅子に腰掛け、苺の入ったデラックスパフェをスプーンで食べている人が居る。

 どうやらその戦いを傍観しているか、指揮しているのだろう。


 まずはその人物の傍に降り立った。

「こんにちは。ちょっといいですか?」


「あら、あなたショウじゃない」

「って、ヴィーナスじゃないか」

 ――ヴィーナスはやはり眩いばかりの美しさだった。ブロンドの髪に白い肌、顔も身体の造形も、完璧と言えるほどのため息が出るほどの美しさである。


「もしかして、お父さんですか? ヨウビ姉さんも!」

 ヴィーナスの傍らには、雅尾(ミヤビ)がいた。

「そうだ。九尾の狐だったお父さんだよ」

「そんなに変わり果ててしまって・・・・・・」・・・・・・オイオイ


「まぁ、転生して人族になったからな」

「元気にしてたか?」

「はい! ヴィーナスさんに可愛がってもらってます」

「それは良かった」


 私を覗き込むように見ていたヴィーナスが

「あなた、まだ覚醒してないわね」

「何が?」

「ルシファーよ」

「そうかもな。あまりその辺の記憶がないんだ。まだこの世界のこともはっきり思い出せていない」

「ふうん。だと、あまりあなたには興味ないわね。あの頃のあなたに戻ったらまた会いに来て」

 そこに雪ちゃんが出てきた。


「ずいぶんなこと言ってくれるわね」

「あら、あなた雪の女王ね。まだ精霊やってるの?」


「今は雪ちゃんって呼ばれてるのよ。私はショウの精霊よ」

「私はルシファー・ショウを追って来たのよ。生身の人間になってね。ルシファーが目覚めていないんだったら、話にならないわ。力の半分も出せてないんじゃないの?」


「そうかもね。でもその分私が補助してるの」

「女神や精霊もいいけど、生身の人間には負けるわよ。あの肉体で得られる快感は精霊には伝わらないわ。フフフ」


「ショウ。私の配下になる? キスしてあげるわよ」

「それは無駄ね。あなたがキスしても、ショウの『魔断』であなたの魔力は通じないわ」


「へぇー魔断は使えるんだ。残念ね。昔と同じね。あなただけだったわ。私の『服従』のスキルが通じなかったのは。そこが魅力のひとつだったんだけど。まぁいいわ。それはそれとしてどうする? ショウ」

「共同戦線も悪くないけど、配下っていうのはちょっとね。遠慮させてもらうよ」


「そうでしょうね。あなたの後ろのお嬢さんたち、ものすごい見幕で睨んでいるもの」

 後ろを振り向くと、乙女たちが敵意丸出しで今にも掴みかかりそうだ。


 瑠璃はポーっとなっているノブのお尻を強く捻っていた。

「しかし、よくこれだけの美人さん集めたわね。そこだけは褒めてあげるわ」

「顔だけじゃないぞ。実力も皆すごいんだ。いつも助けられている」


「それにしても、クロ! いつまで隠れてるのよ。久しぶりなんだから顔見せなさいよ」

「あんまり会いたくなかったにゃ」


「クロはショウを追いかけて、人神までいったんでしょう。そこは認めてあげるわよ。私には人神までいく勇気はなかったわ。あっちに行ったら記憶は消されるし、戻って来れる可能性かなり低くなるからね」

「だからうちは、人間にはならずに猫になって見守っていたにゃ」


 そこへ、ミヤビが

「あっ 猫むすめさんですね」

「シッ それは隠しておくことになってたのよ。あまり余計なこと言わないの」とヨウビがミヤビを諭す。

 ――あの猫むすめ、クロだったのか。とてもお世話になった記憶がある。

「バレてしまったにゃ。 まぁいいにゃ、でもヴィーナス、ショウはあげないにゃ」

「それは大丈夫よ。今のショウには興味ないわ。あなたにあげる」

 ――ハハ まぁいいけど。


「ところで、向こうで戦っているのはヴィーナスの配下なの?」

「そうよ」

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