1 バンクーバー


「機械族の攻撃があまりよく見えないんだ。でもなぜかショウが捕まる。みんな助けようとするんだけど、どうにもならない。ショウの胸に光の矢のようなものが刺さって、そのままショウは動かなくなるんだ。その先はわからない」

 ――碧衣の予知夢だ――


 バンクーバーはカナダの国境付近だ。

 アメリカ地方に入ればいよいよ機械族が出てくる可能性が高い。さらに気をつけて進まなければいけない。

 これまでの戦いで、機械族は出てこなかった。むしろ不気味である。

 さすがにアメリカに入れば機械族が出てくるだろう。

 まずは海沿いに南下し、サンフランシスコまで飛んでいくつもりだ。

 バンクーバー上空を飛んでいると、地上で魔物と戦っている集団を見つけた。

「あれは、デビルカメにゃ!」

「んで、戦っているのは冒険者じゃないみたいにゃ」

 ――デビルカーメン。剣神世界で花子ちゃんと戦って流されたはずだけど、なぜここにいるんだ?


 冒険者じゃないって魔物か? 

 悪魔と魔物が争うとか有り得なくはないけど、あまり見たことないぞ。

「少し離れたところに降りて、様子を見よう」


 サトウカエデSugar mapleの木が生い茂っている丘の上に降り立った。

 カーメンと戦っているのは、人の形をしているが動きが人間とはかけ離れていた。

 とにかく動きが速い。 ――もしかしたら、あれが機械族か?


 デビルカーメン1人に対し、機械族と思われる人形が5体いる。だがその周りには壊された人形が10体くらいあり、たぶんカーメンが倒したのだろう。


 人形が高速移動しながら、指の先からビームと思われる光線を出した。

 カーメンが無詠唱で軽く防御陣を空中に描き、それらを跳ね返している。

 *悪魔は基本的に魔法を無詠唱で使える。


 跳ね返ったビームが人形に当たると、人形の腕や足が爆発していく。

 さらに、カーメンが鎌を振りかぶり、ひと振りすると黒い波動が飛んでいき、人形がスパッと斬られた。切られた人形はその断面から滑り落ちるように上半身が崩れ落ち、カクカクして動けなくなっている。


 同じような攻防があり、すべての人形が壊れ、その残骸が散らばっている。


 ――デビルカーメン、やはり強いな。


 デビルカーメンは我々に気がついたのか、じりじりと近づいてきた。

「なぜ、お前が機械族を倒しているんだ?」私はカーメンに問いかける。

「花子はいるのか?」

「会いたいのか?」蓮月が花子ちゃんの巻物を持って待機している。


「待て! わしはあの者が苦手だ」蓮月がいつでも召喚できる様に巻物を広げた。

「分かった。何かしたら召喚するからな。それで、なぜお前がここにいる?」

「ヴィーナスに召喚されたからだ。召喚と同時にわしに口づけしてな、わしはヴィーナスに従わざるを得なくなった」


 ――ヴィーナスのスキルは確か「服従」。

 ヴィーナスは己の美貌で惑わし、その相手にキスすると奴隷にすることができるらしい。私は魔断を持っているため、そのスキルの影響を回避できた。


「ヴィーナスも物好きだにゃ。口臭いのによくできたにゃ」

「だからもう臭くないってば」

「あははは」皆笑っている。


「それでなぜここで機械族と戦っているんだ?」

「ヴィーナスの命令だからな。よく分からんが、アメリカの国境を越えてきた機械族を倒すように言われておる」


 ――なるほど、それでアラスカやカナダでは機械族を見かけなかったんだ。

「ヴィーナスは何してるんだ?」

「さあな。アメリカにいるようだぞ。どの辺にいるかは分からん。わしと同じような悪魔を召喚して戦わせているらしい」


「分かった。ありがとう。おれもヴィーナスを探してみるよ。またな」

 今のデビルカーメンは危害を加えそうにない。ヴィーナスに従っているためだろうか?


 ここで機械族を抑えてくれているのであれば、むしろ助かるというものだ。このままにしておこう。


 今日はここまでにして拠点に戻ることにした。

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