14 アイヌの民(2)


「はぁ それではお言葉に甘えて、今日は無礼講とさせていただきます。ささ、宴会と参りましょう」

 さすがノブだな。こういうことは慣れているようだ。


 この世界は、アルコール摂取に年齢制限はないみたいで、罪を犯さなければいいようだ。ちなみにフロートシップも自動運転航行機能があれば、乗ってもいいようだが私たちのフロートシップは違反となる。


 そんなわけで、瑠璃は最初からすごい勢いで呑んでいる。

 料理も次々運ばれてきた。カプセル料理ではなかったので、一様にみな安心する。海や川で採れた幸や山菜料理が主体だが、熊や鹿などの肉料理もある。


 なんかとても久しぶりに日本の料理を食べた気がする。剣神世界から来てまだ1か月も経っていないというのにだ。人神世界にいたときも、海外旅行をしたときなどは、翌日にはみそ汁やラーメンを無性に食べたくなったりするが、近辺にそのような食文化がないと欲しくなってしまうのだろう。


 料理は、味を楽しむものだから、カプセル料理は料理とはいえないのかもしれない。いつになく、メンバーは楽しく料理を食べお酒を飲んでいる。


 ティアリが顔を上気させて私の隣に来る。

「この濁酒どぶろくってお酒なかなか美味だな。ほれ、ショウも遠慮せず飲め。なんなら口移しで飲ませてあげるぞ」といって、濁酒を口にあおる。


 そのままキスしてきた。

「瑠璃が教えてくれたんだ。薬はこうやって口移しで飲ますのがいいって」

 ―――瑠璃……お酒って薬じゃ……まぁ百薬の長っていうけど……って!


 美夜やクロたちが列を作って並んでる。

「る~~り~~~」

「あはは。お兄ちゃんがいつまでも決めないからだよ」

 って酔ってるな瑠璃


「わはは 面白い宴会だのう。こんなに楽しい宴会は初めてじゃ」

「ノブにもしてあげようか」瑠璃がノブの顔を下から覗いていう。

「えっ! 皆の前では恥ずかしいのう。後でこっそり頼む。

 今日は儂が自己紹介してせんじよう。愉快じゃ」


 ノブ、うまい具合に誤魔化したな。


「一夜城!」とノブが叫ぶと、お城を模した舞台がせり上がってきた。

 それに私が雪を降らせ、舞台を除き凍らせる

「フローズン!」 白く輝く、白鷺のようなお城になった。


 舞台の上でノブがバッと扇子を広げ、口上を述べる。


「百花繚乱、冬の花、鳴くは白狐か鶯か」

「コーン」と鳴いて、白狐のヨウビがお姫様の格好で出てくる。

 ハハァーとアイヌの民がひれ伏す(汗)


「皆の者、面を上げよ。苦しゅうない!」ノブも調子に乗ってきたようだ。


「容姿端麗、羞月閉花しゅうげつへいか、はたまた一顧傾城いっこけいせいかぁ 我らが乙女に刮目せよ!」


「煙幕!」クロがお城の周りに煙幕を張り、何も見えなくする。


「スポットライト!」紅々李が登場人物に一人ひとり光を当てていく。


「疾風!」まずは碧衣が煙幕を吹き流し登場する。


「ワルキューレ!」お城の周りで爆発が起こり、クロがくるくると回転しながら忍者の格好で登場した。


「江戸川乱歩!」ティアリが揺らめきながら2人、3人となり登場する。


「花ちゃんしょーーーかん!」と言って、花ちゃんとともに花吹雪を散らせながら、蓮月が登場する。


「菊ちゃんしょーーーかん!」と言って、お菊ちゃんとともに日葵が稲妻をお菊ちゃんの皿に落としながら登場する。


「山女ちゃんしょーーーかん!」と言って、瑠璃が出した濃霧をショウが凍結させ、ダイヤモンドダストの中から羽衣を纏った山女ちゃんとともに瑠璃が登場した。


「香ちゃんいでよ!」ハゲ茶瓶を美夜が擦り、香ちゃんとともに美夜が大太刀「不死鳥の舞」を高らかに炎を振り上げ登場する。


 最後にショウに対して、乙女たちが必殺技を浴びせる。

「雷豪!」「旋風トルネード!」「桃源郷!」「薔薇バラバラ!」「豪炎!」「極光!」「蟒蛇!」

 ・・・・・・

  ・・・・・・


 ショウは一瞬、爆煙とともに跡形もなく砕け散ったかに見えた。

 が、ショウは身体強化を行い、ノブが「鉄壁!」をショウを被せるように包み込んでいた。

 パカッと鉄の壁が割れ、ショウとノブが一緒に出てきた。


「ショウ率いる我ら Lip Magic Generations!」


 オォーーー 歓声が湧き上がる。


 ―――初めてまともな自己紹介だった気がする。生きて帰ってきた心地だ。

 ノブがいるとすごく安心する。ノブの土のスキルはやはりすごいな。防御力が格段に上がった気がする。


「これはダメね。ノブ、これじゃ兄が目立たないわ」

「いや。ちょっと殺気を感じてな。つい防御してしまった」

「最後のところはね。兄がどんな攻撃でも耐えて一番になるぞっていう見せ場なの。だから邪魔しちゃダメよ」

 イヤイヤ。今日の攻撃は普通死ぬから


「相分かった。これからは邪魔せぬようにしよう」

「分かった? お兄様もノブの力借りちゃダメよ」

「瑠璃。ノブのスキルだって披露するのにいいと思うぞ」

「いえ。皆で相談してお兄様の耐久力を少しでも上げるために、ギリギリを計算してやってるから大丈夫よ」


 ――ってギリギリだったのかい!

 まったく~ でもいずれ魔物やエクス・マキナと戦う時に必要かも知れないからな。鍛えておくか。


「ん~ なんか納得できんが、もう少し控えめで頼む」

「考えておくわ。もう少し目立たないといけないしね」

 ハァ~ なんかまたとんでもないこと考えそうだけど、なんとかなるだろう。


 その後、精霊も交えアイヌの民と楽しく談笑した。

「ヨウビ様。もしやその剣はイペタムではありませんか?」


 アイヌの尊長が妖刀イペタムを不思議そうに見ている。

「その妖刀も魔神世界のアイヌの尊長からいただいものなのです。大変貴重な剣だと思うのですが、この世を救ってほしいといただきました」

 私はその剣を手に取り説明した。


 すると、その尊長が自分の家へ行き、大事そうに抱えながら一振りの剣を持ってきた。

「これは、わが村に代々伝わる「妖刀イペタム」の一種オポコロペです。ぜひこれも使ってください」

「そんな貴重な刀いただけません」


「我が村にこの妖刀を使えるものはいなくなってしまいました。この妖刀オポコロペはそのイペタムのように勝手に殺傷したりしませんが、持っているだけで敵の攻撃を吸収する刀です。是非ヨウビ様に使っていただきたく存じます」

「ヨウビ、どうする?」


「私でよければ、ありがたく使わせていただきたいと思います」

「尊長さん。ではヨウビに使わせたいと思います。お気遣いいただきありがとうございます」

 ヨウビは2つのイペタムを所有することとなった。魔神世界の短刀の妖刀イペタムと龍神世界の太刀の妖刀オポコロペだ。


 その後、焚き火を囲んで一緒に踊り歌った。


 宴席も終わり、就寝することとなった。

 今日は尊長の家に皆で雑魚寝だ。


 瑠璃はノブの隣に初めて寝るためか少し恥かんでいる。

 ……瑠璃もこういうところがあるんだな。恥じらうところとか初めて見た気がする。


 やっぱりカプセルで1人で寝るより、皆で寝た方が安心感がある。

 そのためかぐっすり眠ることができ、翌朝の目覚めが良かった。


――☆彡★☆彡――


 早朝、アイヌの人々に囲まれながら、フロートシップに乗り込もうとしたら、アイヌの尊長からアイヌのお守り2つを貰った。

 さらに帰り際に尊長が

「これを持って行きなさい。この毛皮は「ひぐまん」や「きたきっついね」の毛皮を防寒用に作ったものだ。ここから先はその格好では寒かろう」

「助かります。ちょうど探していたところなんです。遠慮なくいただきます」

 防寒具をフロートシップに積み込み出立する。


 アイヌの民が手を振る姿が遠のいていく。

 はるか上空まで上がっていったところで、フロートシップは千島列島へ方向を向けて駆けていく。

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