13 アイヌの民(1)

 昼食後、フロートシップに乗り込み釧路方面に向かう。

 途中、海岸で魔物「釧路コンブー」と「トキシラズ」が暴れていた。


「コンブー」は10mくらいの海藻の昆布が海に沈んだ魔核を取り込み魔物化したものだ。「トキシラズ」は海から川に鮭が遡上する際に誤って魔核を取り込んでしまい魔物になってしまったもので、通常であれば秋から初冬には採り終わってしまう鮭なのだが、時季外れに採れたもので脂がのっていてとても美味しいらしい。


 我々は、上空から現地人が魔物「コンブー」と「トキシラズ」に襲われているのを見かけたため助けることとした。


 近づいてみると、未来的な服装はしておらずアイヌ人のようだ。


 魔物「釧路コンブー」がアイヌ人をぐるぐる巻いている。

 魔物「トキシラズ」には手足が生えており、手から何か輪になった赤い怪光線を出している。それを浴びたアイヌ人は意識が朦朧としているようで、ぐったりしている。


 アイヌ人が眠ったようにぐったりしているところをコンブーが昆布締めにした。

 まずは昆布締めになっているアイヌ人を救出しよう。


「ショーゥ喚にゃ」 とクロが山女ちゃんを呼び出した(やってみたかったようだ)。


「はぁ~~い。お待たせ」と山女ちゃんが出てきてチュッとキスされた。

「そっちじゃないにゃ。あのコンブーを切るにゃ」


「フフ。任せて」

 山女ちゃんはフロートシップから羽衣を輪のように広げ、地上まで降りて行き、コンブーをスパスパ切っていく。

 コンブーの中から、アイヌ人が粘々した緑色の液体に体全体を包まれて出てきた。……アイヌ人は気を失っていた。


 それを見た白狐のヨウビが狐火を使って浄化していく。

「プハーッ」アイヌ人は息を深く吸い込み気がついたようだ。


 それを見て魔物「トキシラズ」が怪光線を出し襲ってくる。

 と同時に、妖刀イペタムが鞘から飛び出し、トキシラズを3枚に下ろしてしまった。妖刀イペタムは鞘をつけている主に危険が及ぶとその敵を切り刻むという最上大業物だ。


 早速、昆布コンブーを日葵が天日で乾かし、碧衣が乾燥させていく。

 時鮭トキシラズは、一部はルイベにして食べ、余った部分は燻製にして保存食とした。

 高級な昆布と時鮭をフロートシップに積み込んでいると、魔物「イモ男爵」と「とうビキニ」が出てきた。さすが北海道だ。おいしい……いや、おそろしい魔物がたくさん出てくる。


 魔物「イモ男爵」はジャガイモがマツポックリと同じように爆弾になった魔物だ。

 魔物「とうビキニ」はなぜかトウモロコシがビキニを着ているという不思議な魔物だ。

 先頭が「イモ男爵」、次列が「とうビキニ」そしてなんと、その後ろには魔物「鬼オン」と「キャロケット」がいるではないか!


――これは香ちゃんに美味しいカレーを作ってもらえるぞ。


 魔物「イモ男爵」は盾と剣を持ち「キャロケット」たちを囲むように守っている。「イモ男爵」にはジャガイモの芽のように触覚が2本生えており、その触覚には猛毒成分があるため、綺麗に切り落とさなければならない。


 さらに「とうビキニ」がとうきびの皮を開はだけてビキニ姿で誘惑してくる。だが、そんな誘惑に乗る私とノブではない。

 ビキニを見て油断していると、「キャロケット」が人参型のロケットを飛ばしてきた。ロケットは着弾すると大きく爆発する。

 その爆炎の中から、「鬼オン」が鉄砲を持って、オンオン泣きながら襲ってきた。


「鬼オン」がテカった頭から霧のような催涙性のガスを撒いた。すると、目が涙で開けられなくなる。そこを鉄砲で撃ってくる。“パンパンパン”

 素早く、瑠璃が「氷壁!」で、ノブが「土壁!」で弾を防ぐ。

 蓮月が涙をハンカチで拭きながら、ピストルで「荊棘!」を発射した。

 荊棘の弾丸が「鬼オン」に当たると、そこから荊棘が生えてきて「鬼オン」を拘束した。「鬼オン」が動けなくなったところを、得物でズバッと切る。


「鬼オン」が倒れ催涙性のガスを碧衣が吹き飛ばす。

 我々をビキニ姿で誘惑していた「とうビキニ」の頭から生えている金色の髪を乙女たちが切っていくと、黄色の魔核ととうもろこしになっていった。

 さらにその後ろに控えている「イモ男爵」を乙女たちはいとも簡単に、その触覚ごと切り刻んでいく。すると「イモ男爵」も魔核(芽の部分)とジャガイモになった。


 私は、何かもの足りないなと悩んでいた。


 そこへ赤い頭をした魔物「福神」が岩の後ろに隠れているのを見つけた。

「福神」という名前から、神の一種なのかもしれないが、見るからに魔物なので乙女たちは不気味な笑いを浮かべ魔物「福神」に襲い掛かった。


――🍛🍛🍛――


 魔核と食材(人参、玉ねぎ、じゃがいも、とうもろこし、福神漬け)を拾い集め、香ちゃんを呼び出し、カレーを作ってもらう。今日のカレーは、燻製熊肉のカレーだ。


 フロートシップには冷蔵庫や冷凍庫もあり余った食材を入れておく。

 その後しばし、香ちゃんと剣の訓練をした後、ギルド釧路支店に行った。

 ギルド支店で魔核の鑑定をしてもらったところ、意外と高値で買い取ってくれた。

 ちなみにポイントは全てC級の魔物だったのでついていない。(A級は2段階より下のC級以下の魔物を倒してもポイントにはならない)


 約10万龍である。剣神で考えれば100万円だ。こちらの魔物はレベルも高いような気がするし、妥当な金額なのだろう。

 カレーの匂いを漂わせたフロートシップは、一路「アイヌコタン」の村に向かう。アイヌコタンには先ほど昆布巻きにされた青年が、お礼をしてくれるようで歓迎してくれるそうだ。


 我々もカプセルホテルには味気ないと思っていたところだったので、お邪魔することにした。

 アイヌコタンは現地人のアイヌが集まって出来ている村で、フロートシップで飛んでいくと、助けた青年が下の方で手を振っている。そこにフロートシップはゆっくり降りていった。


「おーい。さっきはありがとう」その青年が声をかけてきた。


 我々はフロートシップから降り、その青年と握手する。

「せっかくなので、ご馳走になりに来ました。よろしくお願いします」

 そう話していると、後ろからその村の尊長だと思われるおじいさんが出てきた。

「うちの若いものがお世話になった。今日はゆるりとしていくがいい。

 ん? その首にかけているのはもしやアイヌのお守りではないか? どこでそれを」


「これは魔神世界のアイヌの尊長にもらったものです」

 私は魔神世界での出来事を簡単に話した。


「ちょっと見せてもらっていいですか?」

「いいですよ。どうぞ」といって私は首にぶら下げているお守りを尊長に渡した。

「これは!・・・・・・」

「これには、とてもすごい魔力が篭められています。これは肌身離さず、持ち歩いてください。命の危険に晒されたとき、守ってくれるかもしれません」


 そんなにすごいものだったんだ。ただの飾りかと思ってた。

「ありがとうございます。常に持ち歩くようにします」

 私は返してもらったお守りをまた首にかけた。

 でも、ティアリやノブは持ってないんだよな・・・・・・


「そちらのお2人方は持っていないようじゃの。魔神世界のアイヌのように強い魔力は篭めることはできぬが、似たようなものは作れるはずだ。明日までに作っておこう」

「はい。ありがとうございます」


 そこへ、フロートシップから白狐のヨウビがキツネの姿で降りてきた。


 アイヌの尊長はすごく驚いたような顔をしてひざまづいた。

「これは、神使様。このようなアイヌの村にようこそいらっしゃいました」

 ……見ただけで分かるなんて、アイヌ人って心神深いんだな。


「私は、剣神世界の神使です。気を使わないでください」

「いえ、どこの世界であろうと、神使は神使です。ハハァー」


 尊長に習って、他のアイヌ人も跪づき、頭を下げてくる。

「父上からも、あまり気をつかわないように話して頂けませんか。かえってやりにくいです」

「確かに……娘もこのように言ってます。どうか気を使わないようにお願いします」


「えっ 神使の親御さんでしたか。 ハハァー」

 今度は私に向かって頭下げてきたぞ。ちょっと困ったな。


「まぁ皆の者。そんなに畏まるでない。ヨウビ殿もやりにくいと言ってるではないか。今日は無礼講で行こうではないか」

 ノブが尊長の肩を叩き、ニカッと微笑みかけた。


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