10 金沢


 ――ステルス戦闘機—―

 もとい改造フロートシップが完成した翌日、北海道に向かうことにした。


 北海道からカムチャッカ半島を抜け、ベールング海峡を抜けて北アメリカのアラスカ地方に行くルートを選択した。


 北海道は、食材が豊富だ。肉食系の乙女達は、毎日カプセル料理ばかりで「肉」に飢えている。最近はそのためか少しイライラしている感じがする。とても危険な匂いが漂ってきていた。


 今日は、フロートシップの試運転も兼ねている。

 皆、運転してみたいようで、くじで順番を決め、運転者を決める。


 なお、この世界では、通常フロートシップが自動運転してくれるため、運転免許はいらない。

 最初は例によって紅々李のようだ。


 紅々李が緊張しながらフロートシップの運転席に乗り込む。

 私は助手席だ。その隣にはノブ。紅々李は男性に囲まれさらに緊張している。


 紅々李が右レバーをもった。フロートシップが静かに浮き上がる。

 はるか下へ下へと街並みが遠ざかっていく。同じくらいの高さに鳥が飛んできた。

 その鳥を避けるように紅々李は左レバーで慌てて右方向へ滑らせるように動かす。

 バタバタバタッとすぐ脇を鳥が飛んでいった。


 後ろの席では、キャッキャと乙女達が騒いでいる。やはり3Dルームで体験した感覚と現実は体感が違う。


 このフロートシップには、自動操舵はついていないが、ナビがついている。

 北海道方向にシップを向け、ゆっくり進みだした。時速は50kmくらいになったであろうか。それ以上はスピードは上がらないようだ。


 ――🐦🐦🐦――


 時速50kmくらいでも、空を飛ぶのは早い。京都から1時間もすると金沢の街並みが見えてきた。お昼時なので魔物のいそうな海岸沿いの原っぱに降りてきた。


 すると都合よく、魔物が襲ってきた。

 魔物の「ひみかんぶりっこ」、「のどまっくろ」、「白いAB」そして「大岡越前のかに」だ。


 *LMG第2期 魔神編第4章の北陸地方で出てきた魔物だがもう一度紹介しておこう。

 魔物「ひみかんぶりっこ」は鰤(ぶり)がぶりっこして、火のついたみかんを投げてくる魔物だ。

 魔物「のどまっくろ」は、喉を覗くと、腹黒いのが分かる魔物だ。

 魔物「白いAB」は、白い血液がAB型の魔物だ。

 魔物「大岡越前のかに」はカニの背中の部分に花吹雪の刺青をした大型のカニの魔物だ。


 どれもとても美味しい、いや恐ろしい魔物だ。

 フロートシップから降りるなり、乙女たちは目をギラつかせヨダレを拭き取りながら抜刀する。


 魔物が襲ってくる! 

 と思ったら乙女たちに慄いて逃げ出した。たぶん、恐ろしい殺気を感じ取ったのであろう。

 それを素早く、美夜とクロが逃げるのを阻止する。


 魔物たちは「大岡越前のかに」を中心に、隊列を組んだ。

「大岡越前のかに」の周りに10匹ほどの「のどまっくろ」、その周りに20匹の「ひみかんぶりっこ」、さらにその周りに50匹ほどの「白いAB」だ。

 魔神世界で戦った時よりも数が多く、しかも隊列まで組んでいる。少し知能が高いようだ。

「白いAB」がまず前面に何かの貝殻なのか盾のように周りを固めた。そして「ひみかんぶりっこ」が火のついたミカンを投げてくる。


 瑠璃はすばやくそれを消火する。火の消えたみかんは私や紅々李が手早く集める。

 それを見た「のどまっくろ」がクックックッと笑っている。

「大岡越前のかに」が「のどまっくろ」の頭をパコッと叩き、攻撃をするように指示した。

「のどまっくろ」は口から黒い液体を飛ばしてくる。魔神世界ではこの攻撃を受ける前に倒してしまった。


 乙女達の足元に黒い液体が落ちるとその液体は硬く固まった。コールタールのようだ。乙女達は足元が固められ、まったく身動き出来なくなる。


 そこに「ひみかんぶりっこ」が皮むき用の果物ナイフを抜刀し、乙女達を襲ってきた。乙女達は足元が固められ身動きできないが、立った姿勢のまま難なくその果物ナイフをいなしている。

 ノブが地面に手をつき、「地割れ!」と叫ぶと、コールタールが砕けていく。

 動けるようになった乙女達は、「ひみかんぶりっこ」と「のどまっくろ」をスパッスパッと3枚に下ろしていく。


 残るは「白いAB」と「大岡越前のかに」のみ。

 白いABは私の刀「吹雪」を使いながら完全凍結させて処理した。

「大岡越前のかに」は奥義を出してきた。

 桜吹雪の入れ墨を見せたかと思うと、全ての手(カニの鋏)に太刀を持ち竜巻のように回転し、桜の花を吹雪のように巻き上げた。

 桜吹雪が目隠しとなり相手の攻撃が見えない。さすがに大物、簡単には倒せないようだ。


 それを見てた碧衣が「任せて!」というと、ろくろ刀「天風あまかぜ」を同じように回転させた。

 天風は「大岡越前のかに」の刀にカカカカンと衝突するが、相手の刀はただの業物のようでいとも簡単に削られていく。

 碧衣が「天風」の回転を止めると「大岡越前のかに」の太刀は刃の部分がなくなっていた。

 さらに「大岡越前のかに」が鋏を前面に出してきた。

 ―――以前のように鋏を飛ばしてくるのか?


 と思いきや、鋏を開いた。そして「ダダダダッ」と撃ってきたのである。

 素早く、瑠璃がガントレットの「蟒蛇」で水幕を張る。そしてその外にノブも「ぬりかべ~」で土壁を作る。

 弾は水幕と土壁に阻まれ、こちらまで届かない。


 美夜が素早く炎炎に乗り、大太刀「不死鳥の舞」で真一文字に切った。


 ――♋♋♋――


 さてお待ちかねの食事タイムだ。

 やっぱり北陸は豪華食材がてんこ盛りだ。


「やはり、日本はいいのう」ノブは出てきた食材を見て感激しているようだ。久しぶりの日本の食材に前世の記憶が蘇ってきたのだろう。


 瑠璃がいそいそとカニやエビの刺身、ノドグロの焼き魚をノブに持っていく。

 ちょこんと隣に座り、「あーん」して食べさせている。

 まだ夫婦にはなっていないが夫婦円満な感じがする。


 それを見ていた乙女達が何を思ったのか私の周りに集まってきた。

 みんな同時に「あ~ん」といって私に食べさせようとする。


 ――そんないっぺんに食べられる訳ないだろ――美夜たちがキッと睨む。


 私は仕方なく、「あーん」と言ったら8人の乙女達に手に持っていた全ての食材を無理やり口に突っ込まれた。


 ――おい! そんな一辺に入れたらどんな美味しい食材だって不味くなるだろ

 と思ったが、意外と美味しかった。


 でも一気にはさすがに無理があるので、今度からは順番にしてねとお願いした。

 乙女たちから食べさせてもらうなんて、たぶん、これもかなり贅沢な悩みなのだろう。


 そんな楽しい食事も終わり、また出発することにした。

 しかし、最後の「大岡越前のかに」の攻撃は思いもよらなかった。


 ――こちらの世界では、違った進化をしているのかもしれない――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます