4 ギルド


 皆と一緒に日本支部京都支店までやってきた。

 外観は京都御所である。


 京都御所の作りはそのままに、中に案内図があったので、ギルド支店を探すと地下に降りる階段の先にあるようである。

 案内図のままに木で出来た階段を降りていくと、ギルド支店という看板が出ていたので中に入ってみた。


 中に入ると、部屋の内装が一変する。

 京都御所は文化財でそのまま保管しているようだが、この部屋に入ると科学技術が発展しているのがよくわかる。

 窓口は普通のギルド支店と変わらず、総合窓口、鑑定窓口、買取窓口などがある。

 見たこともないハイテク機械をギルド職員が操作している。


 窓口に座っている職員は片眼鏡のようなものをかけて、何かを操作しており、美人だがみな見分けが付かない同じような顔をしていた。

 皆、無表情で無口だ。異様な静けさに少し気が引ける。


 ……まずは総合窓口に行ってみるか。

「あの。冒険者なんですけど、教えて欲しいことがあります」

「あ、はい。何でしょう?」

 私たちはまず剣神世界のギルド会員証を提示した。

「あら、珍しいですね。剣神世界からいらしたんですか?」

「はい。この会員証は有効ですか?」


 *ギルド会員証メモ欄 2月24日 35000P 累計777777P

 貯金額333百万円


「ええ。有効ですよ。ちょっとだけお時間頂きますね」

 なにかの読み取り機なのだろうか、その機械にメンバー全員の会員証を載せていく。


 たぶん目につけた片眼鏡で確認ができるのだと思うが、目をキョロキョロさせている。

 3分もしないうちに

「はい確認が取れました。全て有効です」


 ……はや!

「あのお金は使えますか?」

「フフ。使えますよ。極まれに剣神や魔神世界の方も来られるのでこの世界では有効にしてます。ご安心ください。でも物価が違うので、こちらのレートに移行して使えるようにしますか?」

「どのくらい違うんですか?」


「はい。剣神の場合は10分の1くらいになります。魔神は100分の1ですね。こちらに書かれているショウさんのお金だと33百万龍(Ron)になります」


「33百万龍はどのくらいの価値なんでしょうか?」

「えーと、何と比較しましょうね。私たちの給料が月50万龍くらいですので、ホテルは1泊5万龍くらいだといえばわかりますか? ちなみに「龍(Ron)」は世界統一通貨単位で、基本的には電子通貨となっております。一部の民族で紙幣や貨幣などを使っている場合があります」

「なんとなく、分かりました。龍に変更してください」


 ……ん~実際使ってみないと分かんないや。でも当面生活費には困らないくらいかな。

 ポイントなどについても確認する。


「階級はAクラスということでいいですか?」

「はい。でも確か剣神世界だと階級はSクラスまでだったと思いますが、こちらは更にその上にSSクラスとSSSクラスがあります。SクラスからSSクラスへの昇格は1000万ポイント、SSSクラスへは1億ポイントで昇格できます」


 ……嘘! Sクラスの上があるなんて、ってことはSS級やSSS級の魔物がいるってことか?

「つまりは、年会費はどのくらいになるんですか?」

「Sクラスは1年で100万龍、SSクラスは1000万龍です。SSSクラスは永年無料となっております」


 ……ゲ! そんなに!


「と、申し上げたいところですが、別世界からこられた方は会費は無料となっています。実はこちらの人口調節は、遺伝子操作で行っていて、別世界の方の遺伝子はとても貴重なものとなっております。別世界の方には特別優遇措置が取られています。そのため、一夫一妻制とはなっておりませんので、原始的な方法ですが何人でも子づくりしていただいて構いません。サンプルとして精子、卵子を提供いただければ、高く買い取らせていただきます。特にそちらの龍人族の方のサンプルは……」


「もういいです。分かりました」


 ……なんかとんでもない方向に進みそうだったので、やめさせた。


「あの、もし宜しければ、マイクロチップを埋め込んで欲しいのですが」

「それはどのようなものなのでしょう?」


「こちらでは、冒険者登録時にチップを埋め込むことになっています。それに全ての情報を入れておくのです。魔物などを倒した場合、ギルドでその情報をチップに記録します。

 また、この世界で商品の売買や使用した経費などは、そのチップを入れていれば自動的に処理されます。それから一番重要なのは、冒険者の場所の特定と生死の確認です。ただ、別世界からこられた場合は、生死の確認は取れても別世界に連絡する手段はありませんので、チップを入れるという義務は生じません。いかがいたしますか?」


「もし埋め込んだとして、取り外しも簡単にできるんですか」

「もちろんです。ギルドに来ていただければ取り出せます」

 ……ICカードのようなものか。身体に入れてても戦いの邪魔になることはないだろう。


「みんな、どうする? オレは、埋め込んでいてもいいと思うけど」

 皆、ショウがやるならかまわないと言っている。


「それじゃお願いします」

「ではこちらへ」

「この器具で埋め込みます。どこがいいですか? このペンで点をつけてください」

 私は、左腕の上腕に点をつけた。

 受付のお姉さんが器具を当てる。


「Pi!」 「はい。次の方どうぞ」……


 痛みは全くなかった。違和感もない。実に簡単なものだった。

 全員が終わったところでお姉さんから

「マイクロチップを埋め込んでいただいた冒険者の皆さんには、無償でこちらのモニターを差し上げております」

……それは、片メガネ型のモニターで、お姉さんがしている者と同じものだ。

「これはどのように使うのですか」

「はい。大きく2つの機能があります。ひとつは多言語翻訳機能です。どの様な国、どのような民族にあってもそのモニターをつけていれば自動で自分の分かる言葉に翻訳してくれます。それを骨伝導を通して相手の声の波長で伝えてくれます。

 もう一つは、一度戦った相手であれば相手の情報をモニターに映してくれます。グループで共有化しておけば便利ですよ」

「ありがとうございます。使わせてもらいます」……確かに便利そうだ。言葉の壁に悩まなくても済む。


「ところで、こちらの世界の魔物はどのへんにいるのですか?」

「魔物はいることはいるのですが、この日本では天上族が支配していることもあり、あまり見かけません。魔物を倒すのであれば、大陸の魔窟をお勧めします」


「大陸への移動手段は何がありますか?」

「通常は反重力飛行艇ですね。ただ北アメリカは機械族の支配領域となっていて移動手段はありません」


「北アメリカに行くにはどうしたらいいんですか?」

「え? 北アメリカには行くのはやめたほうがいいです。まだAクラスでは早すぎます」


「いずれ行きたいと思ってるので、教えていだだけませんか?」

「せめてSクラスになってから行くことをお勧めしますが、北アメリカに行くためには2つのルートがあります。

 日本からだと、北海道からカムチャッカ半島を抜け、ベールング海峡を抜けて北アメリカのアラスカ地方に入るのが早いでしょう。もうひとつは、南アメリカまで飛んでいき、そこからメキシコ地方や南アメリカから海を渡って北アメリカに行けます。でも北アメリカは機械族が支配していることは知っていますか?」


「知ってます。Aクラスでは無理ですか?」


「冒険者なので、渡航を止めさせる権利はないのですが、かなり危険を伴うと思います。ただ皆さんは10人という集団のAクラスですから前線の機械族は倒せる可能性は高いと思います。それと別世界で培われた経験があり、それはわれわれにとっては未知数となります。なお、機械族を倒してもポイントと機械族のクラスに応じた報酬を提供しています」


「機械族にも魔核はあるのですか?」

「いえ、ありませんが、機械族のICチップを冒険者さんの身体に埋め込んだマイクロチップが自動的に読み込んで、機械族のICチップが破壊されると記録されるようになっています。どこかのギルドでそれを読み込ませればポイントと報酬が支払われます」


「ありがとうございます。いろいろ教えていただいて助かりました。また分からないことがあったら教えてください」

「はい。いつでもどうぞ。お気をつけて」


 この後、ギルドにホテルの手配をしてもらって、モニターを装着してギルドを出てきた。モニターを装着すると未来人になった気がする。

 ……優しいお姉さんだったな。今までのほかの世界のギルドと比較してみても一番応対がまともな気がした。

 

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