7 北極星


 空は燃えていた。


 はるか遠くに見える太陽が、どこまでもたなびく群青の巨大な雲の淵を金色に染めていく。

 地平線に太陽が次第に沈んでいくと、星も瞬き始め、4つの月が顔を出す。


 マータンガ丘の上にある寺院の廃墟の屋上に出て、沈みゆく太陽と瞬き始めた星を眺めながら、塔の淵から足を投げ出し胡桃とともに腰かける。


 広い大地には見渡す限り、大小様々な石と廃墟そして魔窟と思われる寺院が点在し、長い影を草原に作っていた。

 ひと際、大きな岩が聳え立つ岩の袂には一凛の小さな花が、一陣の風に晒されながらも折れずに咲いている。


 胡桃が天蓋の星を見上げながら私に語りかけてくる。


「あの中国のことがなかったら、私たち盗賊になってたんでしょうね。しかもダメダメな盗賊。私がんばったんですよ。ショウさんたちに少しでも近づきたくて……

 でもショウさんたちは、もっと先に行ってる感じ……追いつけないですね」


 胡桃の目からひと雫の涙がこぼれた。


「胡桃はとても強くなってるよ。それにこんなに仲間に慕われてるじゃないか」

「う~ん。なんていうんでしょうね。ショウさんたちは別次元にいる感じです。私、いくら頑張っても美夜さんのようにあんなに強くはなれないです。今日、あの闘いを見てつくづく感じました。私たちはアイドルを見ている観客って感じかな」


「そんなことないよ。同じ人間なんだし」

「そういうことじゃなくて。違ってていいんです。私たちの目標っていうか、あの空に輝く星、そうですね、ショウさんは北極星のような人です。私たちの目指すべき方向を示してくれるような存在かな」


「そうありたいけど、オレはそんなに強くないし、いやチームの中で一番弱いし、優柔不断だからな」

「まぁ確かにこんなに女の子侍らせて優柔不断ですね」

 ――そこは否定して欲しかったな。けっこう大変なんだが


「北極星って2等星なんですよ。一番光り輝いているわけじゃないんです。光り輝く1等星を侍らせて、その中央にいるのが北極星です。私は3等星、いえ、もっと下の5等星くらいまでこれたかな。そんなたくさんある星の目標がショウさんです」


「でも弱くはないですよ。ショウさんがいるからこんなに強いチームなんです。私もA級になったら Lip Magic Generations  に入りたいです。特殊なスキルないけど、足でまといにならないくらいには強くなってみせます。いいですか?」


「分かった。待ってるよ。いずれ会おう」

「良かった」と言ってキスされた。


 乙女達はなぜか何も言わずに後ろを向いている。

 ――気を使っているのかな? かえって恐ろしい。


 澄み切った満天の空には、ペルセウス座の流星群が涙の雫を笑い飛ばすかのように駆けていった。


――★☪★――☆彡彡彡


 少しして、手を振って胡桃たちとお別れだ。

 ティアリを中心に腕を組み円くなる。


 ティアリが「ニューデリー」と叫ぶ。

 スッと身体が宙に浮かぶ感覚の後、ニューデリーのホテル前に現れた。


 ニューデリーに来たら、なぜか無言で乙女達に小突かれた。

「ショウ。オレのほうが先だぞ。大魔神と闘った後、約束しただろ」

 ――あっ、そういえば忘れてた。


「もういいにゃ。そういう運命にゃ」クロは相変わらずあっけらかんとしている。


「ハァー」と、他の乙女達はため息をつくのであった。

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