10 死者の書(後編)


「たぶん。大丈夫だと思う。なにか出てきたら、皆で戦うしかない」

「分かったわ」

 山女ちゃんは、懐から包丁を取り出し、スパッスパッとあっさり本をみじん切りにした。

「私の包丁は、魔力の強いものほどよく切れるからね」


 もう書き込むのが難しいほど、細かく切断されている。

 すると、本から金色の粉煙が渦を巻き立ち上がった。

 金色の粉煙は、収束し本の上に人の形を作る。


「我はクレオパトラ・フィロパトル。よくぞここまで来た。我が子孫よ」

「これは、我が祖先クレオパトラ様。大変恐れ多いことではありますが、あなた様を封印した「死者の書」を毀棄ききしにきました」アフメスが畏まりながら答える。


「まぁ良い。この書は危険なものであることは承知しておる。

 私も2000年余りこの本に封印されていたからな。

 出たいと思っていたところだ。

 それより、我が子孫でない輩もおるようだが、そなたたちは何者だ?」

 クレオパトラは、表情は変えないが威圧的なオーラを放っている。


 そこへ瑠璃が、「ふふん。自己紹介して欲しいのね。いいわよ」

 ……あちゃ~出てしまった! 今日2回目だぞ。

 でも、瑠璃って全然臆しないな。


(2回目なので前半省略)

「我らはリーダーのショウ率いる絶世の美女軍団 Lip Magic Generations!」

「略してL・M・G~」

 私に向かって火柱が立ち、雷が落ちた。

 そして皆でポーズを決める中、私は黒くなりピッと指を上げる。


 クレオパトラが「あはは。面白い奴らよのう。それでなぜこの部屋におる」

 そこへ雪ちゃんが現れた。


「久しぶりだな。クゥちゃん」

「あっ お前は雪の女王のL(Pee)じゃないか!」(*Peeは作品防護音)

「フフフ。いまはL(Pee)じゃなくて、雪ちゃんよ」

「で、雪ちゃんたちは、なぜここにいるんだ? ここは王族しか入れないようにしたんだけど」

 クレオパトラがいきなり砕けた感じになった。


「もしあのまま、あっちに残ってたら私のショウは、どうしろっていうのよ」

 ……私のとかって……後ろの乙女たちが変な雲行になってる。


「まぁ餓死するしかないだろうな。でも、雪ちゃんなら何とかするんじゃないか?」

「あたいのスキルだとちょっと厳しいけどね。

 あの本を切った山女ちゃんがいるから、穴開けてでも脱出できるわね。

 ね、山女ちゃん」

「ふふふ。面白そうね。やってみようかしら」


「待て! 穴を開けられては困る。ちゃんと帰すから安心しろ」

 無事、妖怪(?)たちの会話は終わったようだ。


「ところで、次期王は決まったのか?」とクレオパトラがティアリたちに訊く。

「はい。アフメスがすることになりました」

「よかろう。アフメスは人を引き付ける力が備わっておる。

 ジェフラーよ。お主は才に長けておるな。しっかりとアフメスを補佐するがよい」

「分かりました」アフメスとジェフラーが答える。


「ところで、ティアリよ。お主はどうする?

 ただ、王宮に大人しくしている玉ではなかろう」

「はい。私はこの Lip Magic Generations と一緒に冒険したいと考えています」

「それは面白そうだな。分かった。私はお主の精霊となろう。

 顔も性格も似ておるからな」

「ほんとですか! 是非お願いします」ティアリは満面の笑みを浮かべる。


 ティアリは精霊「クレオパトラ」を授かった。


「さて、お主たちをこの部屋から解放しよう。

 ティアリを囲んでそれぞれの右肩に左手を置き輪になりなさい。

 そしてティアリに右手で触れなさい」

 クレオパトラが魔法陣を足元に作ると、金色の光に包まれ、私たちはシュッと転移した。


 意識が少し遠のく感覚の後、ピラミッドが見える外部に転移したようだ。

 そこは、スフィンクスの足元だった。


「これは我が主、クレオパトラ様」スフィンクスが畏まってこうべを垂れる。

「よくぞ、これまで守り抜いてくれた。お礼を申す」

「そのお姿を現したということは、死者の書はなくなったということですね」

「そうだ。私は解放された。これからはティアリとともに旅をする」


「私はどうすればよろしいですか?」

「できれば、このピラミッドを守護してほしい。悪い輩がまた来るかもしれないのでな」

「仰せのままに」


 そしてクレオパトラは、我々の方に向きなおる。

「私は、空間を司る精霊だ。ティアリが一度行った場所ならどこでも移動できる。必要な時は呼ぶがよい」

 そう言って、クレオパトラの精霊はティアリの中に包まれるように金色の眩い光とともに消えていった。


「ショウ、私も一緒に冒険させてくれないか?」ティアリが私を見て頼んできた。

 ――この流れだと断るわけにもいかないけど


「オレはいいけど、皆はどう?」

「いいですよ」

「ショウがいいならいいよ」

「ライバル増えるけど、同じようなもんだしね」

「また面白くなるニャン」

「転移魔法、便利そうね」

 皆、肯いている。


「分かった。ティアリよろしく頼む」

 ティアリは Lip Magic Generations のメンバーになった。


「このチームの決まりなんだけど、魔物でもなんでも好き嫌いしないで食べる。

 それだけだけど、守れるかい?」

「分かった。なんでも食べるようにするよ」


 スフィンクスから離れ、沼の渕まで来る。

 完全凍結していた沼の水を美夜に熱してもらうと、泥水となっていく。

 沼の泥水は、ピラミッドとスフィンクスを隠すようにまた元の状態に戻った。

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