9 死者の書(前編)

 

 部屋のいたるところを探すが、書物は見つからない。

 部屋に書いてあるヒエログリフにもその在り処は書かれていないようだ。


 ――あまり、柩とかを開けるものではないけど、ミイラを調べてみるか。

 ミイラが入っている柩の蓋を開ける。

 ミイラを見ると「ツタンカーメン」のような黄金のマスクが被せられており、杖を持たせられている。

 蓋の裏側に何か文字が書いてあるようだ。


 ジェフラーが読んでみる。

「我を求めば、我の上に立ち、我の力を発揮せよ」

「どういうことだ? 我を求めるって」


 アフメスが「たぶん、死者の書のことじゃないかな」

「我の上に立ちは?」

「王よりも上になれってこと?」


「ん~このエジプトでは王より上の階位はないし……」

「柩の上に立てってことじゃないか?」

「そんな罰当たりな……」と日葵が言う。

「物は試しだな」とティアリが柩の蓋を閉め、上に立ってみるようだ。


「 ! あっ 下からは見えなかったけど、ここに立つとここの前の壁、凹んでいるところがあって、穴があいてる」

 下からその壁を見上げると、ただ石が積み重なっているようにしか見えない。

 視覚のマジックだ。


「我の力って、王族が持っている瞬歩のことじゃないでしょうか?」と紅々李が閃いた。

「なるほど! ちょっとあの穴の先に行ってみるよ」

 ――瞬歩は、見えるところに移動できるからな。

 でも穴の大きさとか関係ないんだろうか?


「瞬歩!」 ティアリは、スッと消えた。


 どこからか 

「オーイ!」とティアリの声がする。


 柩の上にあがるのは少し気が引けたので、一度皆で柩を床に下ろした。

 そして近くにあった石を3段くらい持ち上げ、元あった柩と同じ高さにする。


 そしてその上に登ってみると、穴が見え、その穴の奥にティアりの瞳が見えた。

 ティアリがまた「オーイ!」と叫んできた。

「戻って来れるか?」と聞いたら、

「ダメなんだ。なんか不思議な力に邪魔されて、そっちに行けない!」

 戻っては来れないようだ。


 しかたないので、まず王子たちをティアリがいる部屋に「瞬歩」で行ってもらう。

 ――ちょっと試してみるか。


 瑠璃を呼んで”瞬歩”をイメージし手の甲にキスをする。

「お兄ちゃん。分かったよ」さすが我が妹、何も言わなくても分かったようだ。


 石の上に立ち「瞬歩!」と瑠璃が叫ぶとスッと消え、向こうの部屋に移動したようだ。

 クロ、美夜、日葵、蓮月、碧衣、紅々李と次々肌にキスをし、「瞬歩!」で移動させ最後は私が移動した。


「なんだ!? お前らうちらの血筋だったのか?」とティアリたちが驚いている。

「実はこれがオレの能力なんだ」

 よく分からないようで、不思議な顔をしている。


「簡単に言うと、能力を真似られるんだよ」

「えっーーーー!」

「なんだ!? そのとんでもないスキルは!」

「まぁ、後で詳しく教えてあげるよ。ところで死者の書は?」

「ちょっと納得できないが……まぁ、後で教えろよ。本は、あそこの台の上だ」


 ティアリが指さした先には、これも黄金の煌く台があり、その上に黒い書物が載っていた。

「ところで、この”死者の書”って何が書いてあるんだ?」

「たぶん、何も書いてないよ」


「何も書いてないのに危険なの? 処分するって、どうして?」

「これは書き込むものなんだ。知っている人の名前を書くと、その者が死んでしまうっていう伝説がある」

 それが本当なら、かなり危ない書物だ。


「代々言い伝えられていてね。私がそれを聞いたとき、弟たちと話し合って処分することに決めたんだ」

 アフメスがこれまであったことを簡単に教えてくれた。

「この書物を見つけ出そうとして、もうかなりの人が亡くなっている。

 それに仮に盗賊に盗まれでもしたら、どう悪用されるかわからないからね」


「事情は分かった。確かにかなり危険なものだな。どうやって処分するんだ」

「あはは。考えてなかった」

 ……ってオイ!

「本当に処分していいんだな!? それじゃ、美夜、燃やしてくれ」


 美夜は”死者の書”に手を伸ばし、「豪炎!」と叫んだ。

 炎が燃えがった。

 炎を沈め、本を見る。

「死者の書」は何事のなかったかのように存在している。

 ――美夜の炎でも燃えないなんて、これは厄介だぞ。


「この本、神聖な力で守られているようです」と紅々李が本を見ていう。

 その後、「雷!」「鎌鼬!」「月光の矢!」などを試してみたが無傷だ。

 瑠璃が「ポセイドーンの鉾」で突いてみたがバチッと弾かれる。

 ――ここはクロでもいいが、山女ちゃんの出番だな。

 魔法陣を広げ

「山女ちゃん。召喚!」というと、

「はぁ~い。お待たせ~」といって山女ちゃんが出てきてチュッとキスされた。

 またクロと美夜とティアリで、もみ合いになる。


 そこは無視して、「山女ちゃん。この本、切れるかな?」

「あら、随分魔力の強い本ね。やってみるけど、この本には魂が封じ込められているわ。いいの? なにか出てくるかも知れないわよ」


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