4 王家の迷宮(前編)

 王家の谷からツタンカーメンの墓を通り、昨日のように炎炎と雷雷を呼び出す。

 フォーメーションは I だが、その中央にティアリ王女たちを置く。


 時々、雷雷や私、アフメス王子やジェフラー王子も所々に印をつけながら、迷路を進んでいった。

 そして、昨日ティアリ王女に逢った場所に辿り着いた。


 つまりここから先は、 Lip Magic Generations にとって未知の領域だ。

 少し行くと、広い空洞に出た。 


 空洞は、あたり一面に数mもある水晶石が乱立していて、どこに光源があるのかわからないが、眩しいくらいに明るかった。


 その巨大な水晶石を囲むように、幅の広い葉を持った花や被子植物、ヤシの木が生えている。

 地下の風景とは思えない光景が広がっていた。

 エジプトは砂漠が多いところだが、地下にこんなジャングルがあるとはとても想像できなかった。


「ティアリ王女。この先は道案内をまかせてもいいかな?」

「もう、ティアリでいいよ。うちらも途中までしか分かんないけど、任せて。

 でもここから先は魔物が出るから気をつけてね」


「じゃ、ティアリ。行けるところまで行って。適当なところで休憩を取ろう」

「OK!」

 ――少し、ティアリ達の実力も見たいしね。危なくなったら助けよう。


 ティアリたちに道案内をお願いし、最初はジェフラーが道案内として先頭を行くことになった。

 フォーメーションはHだ。


 ジェフラー    日葵

  瑠璃      クロ

 紅々李 アフメス ショウ

  碧衣     ティアリ

  美夜      蓮月


 確かに、このジャングルで目印もつけずに歩いていたら迷ってしまう。

 エジプトとはいえ、かなり蒸し暑いぞ。さっきまで歩いていた回廊とは別世界だ。


「右前方、何か飛んでくる!」碧衣が未来視で予言する。

 それは4つの翼を持ったトンボだった。

 ……あのトンボは図鑑にあったな。こんなところでも生息してるんだ。

 名前は確か「極楽トンボ」だった気がする。


 だんだん近づいてくる。

 ――ん? 意外と大きいぞ。 5mぐらいある。

 図鑑だと1mくらいだったのに、この場所は不思議な力が働いているのかもしれない。


 我々を見つけ、襲ってきた。

 急降下してくる。

 と思ったら、スッと上へ昇っていく。

 はるか上まで昇って行くと、ヘッヘッヘッと笑っている。


 あざけってバカにしているようだ

「蓮月。あのトンボ撃ってみて」

「うん」……蓮月が月光の矢で羽4つを射抜く。


 極楽トンボがくるくる回って落ちてくる。

 ドサッとティアリの真上に落ちてきた。


 ティアリがサッと瞬歩で移動する。

 ――動きが見えなかったな。これが「瞬歩」か。


 落ちてきた極楽トンボは、目を回したのか蛇のようにウネウネしている。

 『なんか大きいけど、始末するほどの魔物じゃないな。放っておくか』


 しかし、それを見つけた極楽鳥が、目にも止まらぬ速さで極楽トンボを咥えていった。

 ……どこにいたんだろう?


 極楽鳥は、実際にいる鳥だが、翼を広げると5mくらいあり、若草色の羽毛に長い尾がある。見ただけでは魔物かどうかは分からなかった。

 我々を襲ってくるわけでもないので、極楽鳥も無視する。


 よく見ると、ジャングルの葉がカモフラージュになって見えなかったが、かなりの数の極楽鳥が木の枝に留まっていた。

 クロに訊くと、「ほら、あそこにもいるにゃん」って教えてくれる。


 そうやって歩いて行くと、フワフワと蝶の極楽蝶が私の鼻にとまるように飛んできた。

 綺麗だなって見とれていると、アフメスにいきなり突き飛ばされた。


 突き飛ばされた私は誤って、後ろのティアリにキスする形で倒れこんだ。

(ほんとに誤ってなのか~と突っ込まれそうだが、こういう小説やマンガでは必ず起こる突発的必然現象だ)

 『あれっ 頭の中に金色の光が浮かび上がる』


「ごめん。ティアリ痛くなかった?」

 ティアリが恥ずかしそうに頬を紅潮させている。


「ショウに初めてのキスが奪われちゃった」

「そうだったの!? ごめんティアリ」


 ティアリがもじもじしながら教えてくれた。

「私のキスは高いよ。でも昨日も助けてもらったし、これで貸し借りなしね。

 でもこの極楽蝶は猛毒を持っていて、触ると極楽に逝ってしまうんだ」

 こんな綺麗な蝶なのに危険な蝶だ。危なく極楽に行くところだった。


「その脇に転がってる、極楽蝶の塊を見てみろ。

 あれは一緒に来たうちの兵士だ。うちの兵隊の中では5本の指に入る強者つわものだったんだがな。残念なことをした」


 アフメスの指差す方向をよく見ると、極楽蝶が群がり、干からびた兵士が体液を吸われていた。

「この極楽蝶、殺ってしまっていいのか?」

 兵士をこのままにしておくのも忍びない。


「触らないで殺す方法があるならやってほしい」

「美夜、頼む」

「分かった……『 豪炎!』…… 」 蝶とミイラのようになった兵士は一瞬にして火に包まれ、燃えた灰が空へ舞い上がった。


 空には水晶から出る光彩で円形の虹がかかっていた。

 皆で合掌し、兵士を弔う。

 その後には極楽蝶の虹のような魔核が残されていた。

 せっかくなので、虹の魔核を回収しておく。


 ティアリの話では、極楽蝶は人間臭に集まってくるのだという。特に人族が好みだそうだ。

 ティアリ達は、最初は兵士が7人いて10人のパーティーだったそうである。

 それが、魔物や極楽蝶に襲われたり、罠に落ちたりで、残ったのは王族の3人だけになったようだ。


「ところで、アフメスやジェフラーのスキルって何なの?」

「うちら兄弟は皆同じスキルだ」とティアリが自慢げに大きな胸を張って教えてくれた。


 瑠璃がひそかにほくそ笑む。『やったわね。これで第一目標達成だわ』

「すごいですね~」と紅々李が褒める。

「まあな。王家代々の血筋だ」

「どんな感じで使うんですか?」とかわいい紅々李が王子のアフメスに訊く。

「う~ん。それはね。瞬時に移動したい場所を考えると、勝手に移動してる感じかな。こんな感じさ」と言って、シュッと水晶石の天辺に移動した。


 パチパチパチ「うわっ すごい。すごい」と日葵や碧衣たちが拍手する。

 アフメスはドヤ顔だ。


「そういえば、教えてはもらったけど、実際に君らのスキルってまだ見てないな」

「誰のを見たい?」と瑠璃が聞く。

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