1 エジプトへ

 翌朝、ノブと別れケープタウンから蒸気新幹線に乗った。

 エジプトまで天使(悪魔)の羽で飛んでいっても良かったのだが、とても蒸気新幹線に乗りたい気分だったのだ。


 最後までノブと瑠璃は照れながら手を結んでいたのが印象的だった。

 ――これで、ブラコンともお別れだな。一先ず安心した。


(しかし、瑠璃はこう思うのであった。いつまでも私がついてると発展しない感じだからなぁ……この世界だと兄弟でも結婚とかあるんだけど、ノブもいい人だし後は皆に任せるわ。このままだとシスコンとか思われて、折角の美女たちが逃げちゃうからね)


――♥♥♥――


 次はエジプトのカイロに行く。

 ケープタウンからエジプトのカイロまで約9500km 約20時間くらいかかる。

 さすがアフリカ大陸だ。端から端まで行く感じだから、けっこうな距離だ。


 お昼出発の蒸気新幹線があったので、夜よく眠れるように特別車両(普通車両の倍額)の切符を買った。1人95万円で8人で760万円の出費である。


 でも、冒険者をやっているとお金の感覚がずれてくる。

 1回の冒険で、何千万円と入ってくることもあるからだろう。

 ――あまりいいことじゃないな。


 魔神世界に行くためにケープタウンに来たときは、キリマンジャロ側の陸路を通ってきたが、今度は急ぐ旅でもないので反対側を通っていくことにした。


 ナムビア→アンゴラ→コンゴ→カメルーン→ナイアフメスアと経由し、ここから蒸気新幹線は2手に海岸線沿いと内地に分かれる。

 我々は、エジプトに行くので内地側を通っていく。


 ニジェール→リビア→エジプトの順番だ。


 ノブの国は、この中でナムビアを支配に入れている。

 他にはタンザニア、モザンピーク、ザンビア、ジンバブエが支配地なので、約アフリカ大陸の3分の1を領土にしたことになる。

 そのほとんどが、調略というか、あまり戦争をしないで交渉により国土を広げている感じだという。


 お昼に出発し、午後2時30分頃、蒸気新幹線はナムビアに入ってきた。

 ナムビアの海岸線沿いに蒸気新幹線は走っていく。


 特別車両の展望デッキから乙女達と一緒に眺めると、行く手には紺碧の海または赤い砂で覆われたナミブ砂漠が左右に広がる。ギラギラする灼熱の太陽が照りつけ、赤い熱砂を蹴散らしながら蒸気新幹線は飛ぶように駆け抜けていく。

 オレンジ川に架かる鉄橋を渡ると、眼下には1000羽くらいのフラミンゴが沈む夕日とともに踊っていた。


 午後6時頃、アンゴラに入る。

 時々内戦なのかクーデターなのかところどころで人々が争っている光景を目にする。このように戦争ばかりしていると、内地は荒れ、人々の心も荒んでくる。

 早く、ノブの国に統合されることを願うばかりである。

 楽しみにしていたアンゴラ村長は出てこなかった。


 列車の中は、国際的な協定によりアフリカの国の中では最も安全な場所であるといえよう。

 そのような戦争の光景はあまり見たくないので、蒸気新幹線の席に戻り乙女たちとトランプなどをして談笑する。


 そして、ディナーだ。

 ノブに招待された晩餐会には負けるが、特別車両なのでそれなりに豪華だ。羊やダチョウの肉を使ったタジン鍋料理、その場でローストした肉を取り分けてくれるケバブやシチューのようなクスクス、アフリカ版春巻きのブリックをご馳走になった。


 ――蒸気新幹線に乗りながら思いを馳せる。やはりこの剣神世界や人神世界の日本は平和だと思う。


 戦争の原因は、宗教や思想、民族、価値観、政治など、いろいろとあるのだろうが、根底には貧困、貧しさがあるような気がする。

 といって平等ばかりを追求しても、経済活動はうまくいかない。

 究極的に、人間の欲やエゴが戦争や争いの原因なのだろう。


 ノブのように戦いのない世を作る過程としての戦いはどうなのだろうか?

 私としては、この世の中、綺麗事だけでは済まないし、致し方ないと思う。

 それを言い訳にして戦争するのは許せないが……


 夕食を戴いていると、コンゴに入った。

 コンゴは内陸に大きく日本の3倍の国土を持つ国だ。海側に接している土地は少なく、コンゴに入ったと思ったら、10分もしないうちに通り抜けてしまった。


 午後9時頃、カメルーンに入る。

 外は、熱帯雨林が生い茂り、砂漠のような荒涼とした感じではない。

 ジャングルの中を通り過ぎ、首都ヤウンデで一旦停車した。

 蒸気新幹線の燃料や水などを補充し15分後に出発だ。


 ここの蒸気新幹線は、時間に厳しい。

 だいたい時刻表通りに発着する。

(日本人にはいいだろうが、外国人には厳しいだろう。実際に乗り遅れている人がいて、外で焦った顔をしていた)


 ヤウンデを過ぎると、国内最高峰(4000m級)のカメルーン山が見えてくる。 まだ火山活動が活発で、噴火していた。

 午後11時過ぎ、ナイアフメスアに入る。首都ラゴスは国の中央部にある。

 そこでも10分間停車する。


 首都ラゴスからは、蒸気新幹線は内陸を通るエジプト行とガーナやコートジボワール、モロッコなどを通る海岸線側に分かれる。


 我々は内陸を通る蒸気新幹線に乗る。


 もうすでに時刻は0時を回っており、外の景色は見えない。

 駅構内はひっそり静まり返っており、100人足らずの人々が向かい側に停まっている蒸気新幹線に乗り換えた。

 ニジェールからリビアを通ってエジプトに至るが、そのほとんどはトンネルだ。

 ニジェールやリビアも内戦がひどい状態であまり景色も見たいとも思わないし、深夜ということもあり、就寝することにした。


 ――朝にはエジプトに着いてるのかな。やっぱり列車はいいな。魔神世界の時は魔法陣で飛んでいったけど、味気なかったし、とんでもない目にあった気がする。

 瑠璃も兄離れしてくれるといいなぁ……なんて思っていると寝てしまったようだ。


 朝起きると、蒸気新幹線はナイル川の川沿いを走っている。

 時刻は午前7時、もうすぐエジプトカイロに到着である。


 9時には到着するようなので、急いで朝食を皆と一緒に食べた。

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