11 宗谷岬

 アイヌコタンの村で、お昼をご馳走になった。

 川魚を焼いたものだ。

 なんでも「イトウ」という名字みたいな名前の魚だ。

 魔核マスターが湖の魚を魔物に変えてしまうので、湖にはほとんど魚はいなくなってしまったそうだが、川にはまだいるらしい。


 川にいるということは、湖にも鮭や鱒が戻ってくるだろう。

 天気も魔核マスターを倒してから、太陽が燦燦さんさんと日を差してきた。


 旅立つ時に、尊長さんからお礼だと言って、9人のメンバーそれぞれに首にかけるお守りをもらった。

 首飾りのようなもので、中心部には何かの獣のつのや骨で出来ているらしい飾りと、紐には翡翠に穴を通して角を中心に対象に配置されている。


 とても質素だが、それでいてとてもデザインがいい。


 以前は観光客に売っていたらしいが、ここ数年魔核マスターが来るようになってから、観光客は来なくなったという。

 北海道にいる魔核マスターを討伐すればまた来るようになるだろう。

 お守りは、尊長の特別製で魔力を込めているとのこと。

 とてもご利益がありそうだ。


 羽を装着し、手を振ってお別れだ。

 一度札幌に帰る。

 ここで数日休息をとった。

 次に倒すべき魔核マスターと魔物の調査を行い、対策を立てる。

・・・

  ・・・

    ・・・


 ハクビに聞くと北の方にいる魔核マスターは、宗谷岬と利尻島だそうだ。

 6月10日、まずは宗谷岬に飛び立った。


 途中、街や村はなく、見かけるのは「ひぐまん」や「きっついね」のような魔物だ。

 飛んでるし、お腹もすいていないので無視して先を急ぐ。


 札幌から約1時間くらいで日本本土の最北端、宗谷岬に降り立つ。

 前に海、後ろには草原と山が見える。

 海を見渡すと、遠くにカラフトらしき島がうっすらと見える。

 ここも、どす暗く曇っている。


 近くの樹木に蓮月が聞く。

「この辺で魔核マスター見ませんでしたか?」

「ほんずけねやつだば、あっちの牧場でかがまってだよ」

 ...「ほんずけね」と「かがまる」がよく分からんが、裏山の牧場にいるようだ。


 ハクビをひょっこり瓢箪から出し、牧場まで歩いていく。

 フォーメーションMだ。


  日葵            美夜 

  ハクビ  瑠璃  クロ  ショウ

  紅々李    碧衣     蓮月


 牧場に入ると、上空から氷の刃が飛んできた。

 碧衣が「 颶風!」で氷の刃を跳ね返す。


 敵の姿は見えない。

 すると土埃とともに魔物が襲ってきた。

 魔物「ほるすたいん」と「じゃーじー」だ。

 角をこちらに向け、赤い目をギラギラさせている。


 ……ここは闘牛場じゃないんだけどな。……あの魔物は、乳牛が変化したものだな。


 瑠璃がβの笛を吹く。 ……まさか?

 ここにポセイドーンが? 

 ここは山の中だ。

 海は近くにあるが海ではない。

 すると、βの笛に引き寄せられて、山の中から犬が5匹集まってきた。

 瑠璃が指示すると、犬は魔物の乳牛を山側へ誘導していく。


 山の方から「ギャーー」という悲鳴のようなものが聞こえた。

 その近くに行ってみると、一人の魔核マスターが魔物の乳牛に、幾重にも踏み倒されていた。

 ムクッとゾンビのようにその魔核マスターは起き上がった。


「ゾンビか?」

「ちがうわい! よくも我が「ほるすたいん」と「じゃーじー」を操りやがったな。なまら痛てかったべ」

「お前のじゃないだろ」

「魔物にした時点で、おらのものじゃ」


 瑠璃がβの笛を吹く。

「ピッーー」

 また犬が誘導し、ドドドっと「ほるすたいん」と「じゃーじー」がマスターを幾重にも踏みつけていく。


 マスターが、ムクッと

「ピッーー」  ドドドドドッ

 ムクッと

「ピッーー」ドドドドドッ

 ムクッと

「ピッーー」ドドドドドッ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・


 何度かそれを繰り返し、魔核マスターは箒に乗って空に逃げた。

 あれだけ踏みつけられて生きているなんてすごい。


 たぶん宗谷マスターだ。

 でも、はじめから空に逃げればいいのに……


「ハァハァ 死ぬかと思ったわ。これでもケエ!」


 そう宗谷マスが言うと、杖の先から無数の氷の刃を発生させ、我々に向けて発射させた。

 美夜が宗谷マスに向けて 「 豪炎! 」 を放つ。

 氷の刃は溶けて蒸発していく。

 その間に、紅々李が 「ちはやぶる!」 で魔物となった乳牛を浄化していった。


 乳牛は大人しくなり、瑠璃と蓮月が乳搾りをしている。

「あっ。おらの魔物が……(泣)」

 かなわないと思ったのか、箒に乗って逃げようとしている。

 碧衣が「颪!」というと、上から下への強風が吹き、宗谷マスは叩き落とされた。


 クロが 「毒(ポイズン)!」 

 と宗谷マスに幻覚を見せると、

「うわっ。何しただ。身体がバターのように溶けていくだ。目が回るゥ。ウワーーーッ」

 瑠璃に指示され、犬と牛が宗谷マスの周りをグルグル回っている。

 宗谷マスは気が狂ったように悶え苦しんで、そのままバターと倒れ、魔核に変わってしまった。

 ドロップアイテムに、バターとチーズが残されていた。


 ……へぇー精神攻撃でも、倒すことが出来るんだ。

 やっぱり、クロの攻撃が一番やばいと思う。


 少し一服しよう。

 日葵が今回は出番がなかったので、少しションボリしている。

「日葵。日葵の攻撃は、強力だからな。

 特別なんだ。 強いマスターが出てきたらお願いするよ」と日葵に声をかける。

「ふふーん。そうね。次は任せておいて」と尻尾を振って笑顔を見せた。 


 搾りたてのミルクとチーズ、焼きたてのパンにバターを塗ってお昼にする。

 パンはアイヌコタンのアイヌの娘さんから帰り際に北海道産の小麦粉を貰ったので、今朝焼いてきたものだ。

 さらにパンを程よく美夜が焼いていれる。


 牧場から見る宗谷岬と海も絶景だ。

 絶景を見ながらのお昼は格別だった。

 お腹が満たされたところで、ハクビをひょっこり瓢箪に入れ利尻島に飛び立つ。


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 *北海道弁講座の時間です。(間違ってたら教えてね)

「ほんずけねやつだば、あっちの牧場でかがまってだよ」

 ⇒分けわかんない(または、間抜けな)やつなら、あっちの牧場でしゃがんでいたよ。

「ハァハァ 死ぬかと思ったわ。これでもケエ!」

*「けえ」は北海道弁で「食え(くらえ)」の意です。

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