10 摩周湖・阿寒湖・屈斜路湖

 翌日、朝食をご馳走になり、摩周湖に飛び立つ。

 全員が飛んでいることにアイヌの人々は驚いていたが、手を振って見送ってくれた。我々も旋回して、手を振ってお別れする。


 知床半島から摩周湖までは約20分で着いた。

 湖には霧が立ち込めており、その湖を眺望できる丘の上に降りてきた。

 早速、蓮月が魔核マスターの居場所を白樺の木々に聞く。


「それなら、さっきまで摩周湖にいたけど、いいふりこいで屈斜路湖とばくりっこしてるかば~」

 ・・・「いいふりこいで」 と 「ばくりっこ」 がよく分からないが、屈斜路湖の方にいるのだと思う。


 さて、摩周湖マスだったが、屈斜路マスに変えたほうがいいかな。

 どっちでもいいか。

 霧の摩周湖の上を通り、屈斜路湖へ飛んでいく。

 雲の上を飛んでいるようで気持ちがいい。


 屈斜路湖にはあっという間に着いた。

 上から見下ろすと、一つの小さな村が見えた。

 手を振っている。なんとなくアイヌ人に見える。

 魔物の気配はなかったので、その場所に降りてみる。


 『アイヌコタン』という村だった。

 ひとりの老人が出てきて、

「お主たちが、リップなんとかだな。知床の兄弟から連絡があったよ」

 たぶん、念波で教えてくれたのだろう。

「初めまして、 Lip Magic Generations です。

 この辺に魔核マスターがいると聞いてきました。知りませんか?」


「話は聞いておる。魔核マスターを退治してまわっておるようじゃのう。

 ありがたいことだ。

 それでそのマスターじゃが、さっきまで屈斜路湖の中の島におったんじゃが、阿寒湖に移動したようじゃぞ。

 あのマスターは毎日、湖を移動しておるようじゃ」


 ――また、移動したのか。阿寒マスになってしまった。

「そんなに移動して何やってるんですか?」

「魚釣りじゃ。釣っては魔物に変えておる。お陰で屈斜路湖にはほとんど、魚がいなくなってしもうた」


「分かりました。これ以上漁場を荒らされないように、魔核マスターを倒してきます」

 そう言って、阿寒湖に向け飛び立った。

 阿寒湖にもすぐに到着した。

 釣りをしている人影が見える。


 ――何かを釣り上げたな。 ……ん? 緑色の丸い玉だ。

 魔法陣を作ってその上に緑の玉を置いてる。


 緑の玉に手足が生えて、歩き出した。

 へ~あんな風に魔物って作るんだ。 ……って、感心して覗いている場合じゃないな。

「オイ! 何やってるんだ」 と魔核マスターに声を掛ける。

「見れば分かっぺ。魔物作りだ。 ってお前ら誰だ! なんか胡散臭い奴らだな。ヤッちまえ!」


 ……胡散臭いやつらにされてしまった。

 魔核マスターが見る胡散臭いやつって……傍目から見るとそう見えるのかもしれない。


 魔物「まりもん」が束になって襲って来る。

 緑の毛がフサフサした球体に、目と手と足がある。……なんとなくかわいい。

 束になってぶつかってくるが、痛くない。

 むしろフワフワしていて気持ちいい。


 魔物「まりもん」は無視して、阿寒マスに近寄っていく。

「小癪な。まりもんの攻撃が効かないようだな」と阿寒マスがいう。

 阿寒マスが箒に乗り飛び上がる。

 我々も羽で飛び上がり追いかける。


 ピーッと口笛を鳴らしながら、3つの湖の中央にきた。

 すると、湖からヌッと魔獣が現れた。

 かなり大きい。

 しかも、屈斜路湖、摩周湖の方からもドシン・ドシンと別の魔獣がやってくる。


 阿寒マスが、

「あーちゃん、くーちゃん、まーちゃん、あの胡散臭いの倒してけろ」


  ”あーちゃん、くーちゃん、まーちゃん” とかって、

 可愛いどっかのアイドルユニットみたいな名前つけてるけど、これって恐竜じゃないか。


 この世界には恐竜も出るんだな。 ……でも、いたかな?

 あまり覚えていない。 

 そんなことより、どうやって倒すかだ。


 Lip Magic Generations のメンバーはそれぞれ刀や槍を持つ。

 3体の魔獣は、首長竜で長い首を振り回し、さらに強い水流を口から吐き出して攻撃してくる。


 水流は瑠璃が、 「 水壁!」 で防いでいる。

 首の攻撃はクロが「 漆黒!」で目くらましをしているので、ただ振り回しているだけだ。

 あとは刀で足を弱らせ、美夜の「円炎」か碧衣の「竜巻」で倒せるかもしれない。


 と思っていたところに、

 息を切らしてやってきたアイヌコタンの尊長が涙ながらにいう。

「ダメだ! その魔獣は元は3つの湖の守り神だ。倒さないでくれ。たのむ!」 

 ――困ったぞ。傷をつけてはいけないようだ。食料にしてはダメだということだ。

 守り神が魔獣になったんだったら、もしかしたら

「紅々李!「ちはやぶる」をしてみてくれ」

「はい。でも大きすぎます。1頭くらいならいけると思うけど……」

「分かった。頼む!」


「ちはやぶる!」と紅々李が魔獣「あーちゃん」に神々しい光を天からあてる。

 あーちゃんはもがき苦しんでいる。

 でもまだ浄化できずにいるようだ。


 ――よし、奥の手だな。

 昨日の連携技「花吹雪」からヒントを得て考えていた技だ。

 これでダメなら尊長には申し訳ないが、殺るしかない。

 紅々李、 碧衣、 蓮月、 美夜を呼ぶ。


 ――ゴニョゴニョゴニョ……

「こんなイメージだ、出来るか?」

「分かった。任せろ! みんな行くぞ!」

美夜が号令をかけ四方に飛んでいく。

そして、4人が一斉に唱えた。


「 花鳥風月! 」


 4人は飛びながら四方から手を3体の魔獣の方に向けた。

 すると……


 不死鳥(フェニックス)が現れ、ぐるぐると魔獣の周りを廻り、神聖な炎の精霊が魔獣を囲んで踊り始める。

 さらに風の精霊が魔獣の身体に花を舞い上げていく。

 そして光の精霊が、強い光の月の矢を3体の魔獣に突き刺した。


 魔獣あーちゃん、くーちゃん、まーちゃんは、

「キューーゥ」という鳴き声とともに光に包まれた。

 眩い強い光が辺り一面をパッと照らすと、悪夢から覚めたように3体の魔獣は大人しくなり、顔をよせ舐め合っている。

 どうやら、無傷で”守り神”に戻ってくれたようだ。

 ――良かった。


 アイヌの尊長は涙を流して喜んでいる。

 残るは魔核マスターを倒すのみ。


「毎日、3つの湖に通って、交点作るのにかっぱつって大変だったんだぞ。よくも無駄にしてくれたな。」

 ――かっぱが釣れるのだろうか?


 よく分からんが、大変だったのはよく分かる。

 なるほど、交点を作れば大きな魔法陣が作れるからな。

 それで守り神を魔獣にしたのか。

 ……この阿寒屈斜路摩周湖マスターめ! ……名前が長いな。

 面倒だから3湖マスにしよう。


 3湖マスは、杖で雷を放ってくる。

 それを「魔断」で切ると、雷は2つに別れ湖に当たり激しく水蒸気を上げている。

 さらに杖から毒々しい液体を飛ばしてきた。


 今度はそれを「反射」で跳ね返す。

 反射され液体がマスターにかかると、顔が火傷を負ったようにただれていく。

 ――いままでのマスターに比べるとまともな攻撃をしてくるな。


 と思っていたら、

 今度は隣にいたハクビに杖を向けた。

 するとハクビの持っていた『妖刀イペタム』が鞘からサッと飛び出し、

 回転しながらその杖を持っている腕をスパッと切り落とした。


 イペタムは、回転しながら血糊を振り落とし、また元の鞘に戻ってくる。


 3湖マスが

「ウギャーー」  と叫び、箒に乗って逃げた。


 日葵がウズウズしていたようで、

「やっと、私の出番ね」といって、

「特別サービスよ  『 雷鳥! 』  」 

 といって雷を放つ鳥を3湖マスに飛ばした。


 雷鳴とともに雷鳥は、稲妻となって3湖マスを丸ごと貪り、放電とともに光になって消えた。

 雷鳥が消えた場所から、ひとつの魔核が落ちてくる。

 地上に降り立ち、紅々李が少し疲れたようだったので、魔力回復グミを食べてもらう。

 魔力が戻ってきたところで、まとわりついてくる「まりもん」に「ちはやぶる!」してもらった。


「まりもん」は普通の毬藻に戻っていく。

 それを静かに阿寒湖に戻した。

 ここで実際に倒した魔物はいない。

 マスターだけ倒したので、魔核は1個だけだ。

 1個だけなので札幌支店には転送しなかった。


 かなり力のあるマスターだったので、他のマスターと何が違うか日本支所に行ったら分析したいと思う。(忘れているかもしれないけど……)


 これで道東の魔核マスターは倒した。


 次は北の魔核マスターだ。


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*物語とは関係ありませんが、北海道弁講座の時間です。


「それなら、さっきまで摩周湖にいたけど、いいふりこいで屈斜路湖とばくりっこしてるかば~」

 ⇒それなら、さっきまで摩周湖にいたけど、格好つけて屈斜路湖と交換してるかば~

「かっぱつって大変だったんだぞ」 ⇒水に入って大変だったんだぞ


 だと思います。(北海道の方、間違ってたら教えてね)

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