9 アイヌの民

 アイヌ人らしい民は、竹やぶからこちらを眺めている。

 近くによって行って話しかけてみた。

 アイヌ語かなと思ったら、普通に日本語で話してくれたので良かった。


 アイヌの話によると、以前は観光客がたまに来るくらいだったが、魔核マスターが来てから熊や昆布が魔物に変えられて困っていたそうだ。


 熊は通常、人が近づくと逃げていくが、魔物「ひぐまん」は積極的に人を襲うらしい。

 海に出て漁をするにも、「コンブー」が船を沈めてしまう。


 ひっそりと比較的弱い魔物「シャケキング」や野草を食べて暮らしていたということで、肉料理は10年以上食べていないとのこと。

 とても美味しそうに食べている。


 その後、アイヌ人は自分たちの隠れ家に招待してくれた。

 乙女達があれを我慢していたようで、アイヌの民家にある花園にダッシュした。

 簡易花園は持ってきているのだが、私がいるとやっぱり恥ずかしいらしい。

 とてもすっきりした顔で戻ってくる。

 どおりであんまり食が進まないなと思っていた。


 戻ってきた乙女達は、アイヌが勧めてくれるお酒とさっきの熊鍋の残り、そして余っていた熊肉を焼いてもらい、また宴会が始まってしまった。


 アイヌが我々のことを聞いてくる。

 すると、それを聞いていた耳のいい蓮月が

「自己紹介します!」と言ってすっくと立ち上がってしまった。


 ――まさか―― 始まってしまった。蓮月、少し酔ってるな。


「アイヌのみなさん、自己紹介しまーす!」


「春爛漫、春の花、見目麗しい8人の乙女と威風堂々のショウが率いる我ら

 一騎当千 Lip Magic Generations! 」


 といって、ピピッとそれぞれポーズを決める。


 クロが身軽にくるりと廻り 「桃源郷!」 という

 ……周りに桃の花が咲き乱れ、いい香りがしてくる(幻覚だが)。


 蓮月が木立の上空を指差し 「月光!」 

 といってスポットライトが我々9人に当てられる。


 紅々李が手を広げ 「春は曙!」

 というと周りが朱色に染められた。


「我らショウと春の花 8人衆 Lip Magic Generations! 」 


 そしてスポットライトが私に集中する。

 美夜が「炎炎」といって飛び乗り、 「煙幕!」 をはりながら

 私の後ろにハートマークを煙で作る。


「略してL・M・G~」


 といいながら、クロと日葵が羽で飛び上がり同時にポーズをしながら


 クロが    「 暗闇!」 に包み、

 そこに日葵の 「 雷!」で激しい光と雷鳴とともに私に向かって雷が落ちた。


 そして皆でポーズを決める中、私は黒くなりピッと指を上げる。


 最後に瑠璃が羽で飛び上がり、 「水洗!」 

 で水をかぶったように綺麗に洗われ、

 碧衣が「春風!」

 でさわやかな風が吹かれる。


 最後に紅々李が私に「ホーリー」してくれた。

 ハクビは私を舐めてくれる。...うん。だいぶ慣れてきた。

 身体もだいぶ鍛えられた気がする。


 アイヌの方々が、目をパチクリさせ笑いを必死に堪えているのが分かる。

 ――だって、肩震わせてるし。


 たぶん、アイヌの人が聞きたかったのはそういうことじゃないと思うんだよね。

 まぁ余興になったみたいでいいけど、それからだいぶアイヌの民と打ち解けた様な気がする。


 我々が北海道に住んでいる魔核マスターや魔物を退治して回っていること。

 最終的には日本を清浄化したいことを話した。

 それを聞いたアイヌの尊長が一際大きな家に入っていき、ひとつの刀を持ってきた。


「妖刀イペタムだ。これを持っていけ」


 といって、その刀を手渡された。

「この刀は、魔力を込めるとこのように自在に飛んで相手を倒すことができる。何かの役にたつだろう」


 ……すごい!


 こんな妖刀は剣神世界でも見たことがない。

 大業物クラスいやそれ以上か!?


「こんなすばらしい妖刀見たことがありません。本当にもらっていいんですか?」

「さっきの自己紹介を見て、君らの力が確認できた。

 一見ふざけているようだが、あんな魔術はそんな簡単にできるものではない」


 ――いや、ふざけていると思うが、そういうふうに見てくれる人もいるんだ。


「うちの村には、うまくこの刀を活かすものはおらん。

 この地を救ってくれたお礼だ。もらってくれ」

「分かりました。うちのメンバーで最も適したものに使わせます。ありがとうございます」 とお礼を言って刀を貰い受けた。


 私はこの刀をハクビに預けることにした。

 ハクビはまだ刀剣をもっていないからだ。

 護身用にいいだろう。

 皆もそれがいいと同意してくれた。


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