6 釧路湿原

 次は道東(道西)方面に行くことにした。


 *魔神世界は、人神世界の地図を裏から見た形になっている。

 人神世界の道東というと、こちらでは道西ということになるが、イメージがつきにくいので、道東と呼ぼう。


 ハクビに聞くと、この北海道で襟裳から近くにいる魔核マスターは、釧路だということでそちらに飛ぶことにした。

 札幌から気流に乗り、約1時間ほどで釧路の上空に達した。


 ここには釧路市街を囲む城壁が残っており、かなりの人がそこに住んでいるのが分かる。魔物は他の場所にいるようだ。


 右に釧路市街、左に釧路湿原を展望できる小高い山に降り立った。

 蓮月がいつもと同じように草や木に「釧路マス」の居場所を聞く。

「釧路湿原の沼地の屋敷にじょっぴんかってるだ」と言っている。


 ”じょっぴんかる”が何を指しているのか分からないが、釧路湿原に行ってみる。

 釧路湿原は広く、少し遠いので、先に美夜に炎炎に乗って偵察してきてもらう。


 釧路湿原の上に「花筏!」を作り、歩いていくと、美夜が戻ってきて、一軒の屋敷を見つけたという。

 屋敷の方向に花筏を作り、フォーメーションXで進んでいく。

 こんな感じだ。


 美夜        日葵

   クロ    瑠璃

      碧衣

   蓮月    ハクビ

 紅々李       ショウ      


 釧路湿原を進んでいくと、魔物「ツルツル」が現れた。

「ツルツル」は丹頂鶴が2羽で1対になった魔物だ。


 比翼の鳥とでも言ったらいいのか、

 くちばしでツンツンして仲良く微笑ましく攻撃してくる。

 だが、魔物である。攻撃してくる以上、戦うしかない。


「ツルツル」を倒すのは簡単であった。

 お互い羽を伸ばし、羽を組んで突っついてくるのだが、羽を中央から分離すると、ヨヨと泣き崩れ、魔核に変わっていく。


 後にはドロップアイテム「機織もの」が落ちていた。

 鶴の羽で出来ておりとても綺麗だ。

 ときどき「ツルツル」に出会うのだが、とても倒すのが可哀想になってくる。

 すごい罪悪感が生まれる。

 瑠璃は戦いには参加しなかった

 瑠璃は涙ぐんでいる。鶴には強い思い入れがあるようだ。


 さらに進んでいくと、魔物「来たぁきっついね」に出会った。

「北きつね」が出て来たぁと思わせて、喜んでいる人間を魅す魔物である。

 クロが「どん底!」と言って、「来たぁきっついね」を底なし沼に落ちたように錯覚させると、あまり深くない沼で溺れている。

 この魔物もあまり強くなさそうなので、溺れたままにして通り過ぎる。


 ピクニック気分で、綺麗な水芭蕉やイチゲが咲いている日本最大の沼地を歩いていく。

 浮かれた気分で歩いていくと、一軒の屋敷が見えてきた。


 美夜が発見した建物だ。

 中に入ろうとドアを開けようとするが、鍵が掛かっていて入れない。


 ドアをノックしてみる。


 ”トントントン”


「誰もいませんよ~」 と声がする。 

 ……いるじゃないか!

 釧路マスの屋敷だと分かっているので、魔法機関銃でドアを破壊する。


 すると、

「ひどいなぁ。この落とし前はつけてもらいますよ」と

 釧路マスとその配下20人の魔物「もちょこい」と「ちゃんこい」が出て来た。


 この魔物たちも小さくてかわいい。

 こうかわいいと攻撃したくなくなる。……これも精神攻撃の一種かもしれない。

 釧路にはかわいい魔物が多い。


「もちょこい」が攻撃してきた。小さい割にすばしっこい。

 タタタタっと手を広げ近寄ってくる。

 我々に掴みかかり、こちょがしてくる(北海道弁でくすぐってくるの意)。


 こちょこちょこちょ


「ワハハハハハ……」 ――笑い殺す気だ。


 そこに「ちゃんこい」が隠し持っていた小(ちっこ)い刀で襲って来る。


 笑い転げながら何とか回避する。

 紅々李が笑い転げながら 「ホーリーカバー!」 というと光輝な光が我々を包み込む。

「もちょこい」と「ちゃんこい」は眩しがって外に逃げていった。

 たぶん、ホーリーカバーに触れてはいけないと思ったのだろう。

 無駄な殺生はせずに済んで良かった。


 小さいがなかなかの強敵であった。

 油断大敵である。


 残るは釧路マスただ一人。

 釧路マスは後ろで、「もちょこい」と「ちゃんこい」が戦っている間に、

 詠唱していた。

「親亀子亀子孫亀 親鶴子鶴子孫鶴 親亀子亀子孫亀 親鶴子鶴子孫鶴 

 親亀子がめままま・・」

 ―― あ 間違った。どうなるんだろう?


 ボンッ …… 釧路マスは、火に包まれ爆発した。


「もう! だからこの魔法唱えるの嫌なんだよな!」

「プッ」乙女達は吹き出してる。しかし油断をしてはならない。


 釧路マスが 「 ミルクロード! 」 と叫ぶと特有スキルなのだろうか、魔法陣が白く浮き上がり、辺一面真っ白い靄に包まれる。

 そして、白い板のような道が我々の頭の上に出来上がっていった。


 その上を釧路マスが歩いて外に逃げようとしていた。

 ちょうど我々の上を通り、見上げると「アカンベー」をしてきた。

 少し頭にきたので、皆で下から刀で小突く。


 白い壁を通して足の裏に刺さるようで、とても痛がっている。


 瑠璃が面倒くさいとばかりに「 水球! 」といって釧路マスを水中に閉じ込める。

 しかし、釧路マスは、マスだけに鱒のようにエラ呼吸器官があるのか平気なようだ。

 水の中をゆったりと泳いでいる。

 少し、弄ってみよう。

 「...蓮月、矢を1本だけ刺してみて__」

 蓮月は月光の矢で釧路マスを射抜く。

 釧路マスが顔を赤くして膨れてきた。

 まるで、フグのようだ。


 ――これは! 釧路フグと名前を変えないといけないかもしれない。

「蓮月、もう少し矢を刺してみて」

「うん」

 シュシュシュ……と何本も矢が刺さる。

 ――オォー ハリセンボンようだ。

 釧路針千本にしようかなって思ってたところで、釧路フグ(マス)は破裂して魔核になってしまった。

 ……終わってしまった。――次何にしようかと考えてたのに……少し残念だ。


 ダメだな。こんなことをしていると意地が悪くなってしまう。反省しよう。

 でも、「もちょこい」と「ちゃんこい」のように可愛くないので、あまり罪悪感がない。

 後に残った魔核やドロップアイテムを拾い集め、移動魔法陣で札幌支店に転送する。


 ここで、大変なことに気がついた。


 もうすぐお昼になるのに食料がない! 


 食料となる魔物がいなかったのだ。

 早く、次の場所に移動しなければいけない。

 このままでは乙女達の機嫌が最悪になる可能性がある!


 ハクビに聞くと、この近くの魔核マスターは、摩周湖か知床にいるという。

 どちらかというと、知床の方が食料に在りつけそうなので、知床に飛ぶことにした。


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 北海道弁講座です。

「釧路湿原の沼地の屋敷にじょっぴんかってるだ。」

「じょっぴんかる」とは鍵をかける又は戸締りをするの意だそうです。

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