4 函館

 翌日(5月22日)、

 早朝、函館に飛ぶ。


 函館には碧衣の風も利用し、30分ぐらいで到着し、函館山に降り立つ。

 小樽と同じように函館山の草木に蓮月が聞くと、五稜郭に函館マスがいることが分かった。


 ここも街の周りに城壁はあるものの、人気ひとけはない。

 街は魔物に乗っ取られているのだろう。


 五稜郭の近くまで函館山から飛んできて降り立つ。

 五稜郭は周りが堀で囲まれており、5つ星の形をしている。

 真ん中に塔が建っており、その中に函館マスはいるものと思われる。


 堀のところまで来ると、堀にかかっている橋に魔物がいた。

 クロが忍者のように、その魔物を音もなく倒してくる。


 それを見て、我々は隠れるように五稜郭に入っていった。

 魔物が住んでいるにしては中は清潔で整理整頓されている。

 敷地にあるトイレも綺麗だったので使わせてもらった。


 五稜郭の塔に入ると、1階には魔物「イカポッポ」が20匹いた。


 ハクビが 「食べ・・・」 全て言い終わる前に皆が頷き、刀で切っていく。

 もともと切れ込みがあるので、切ったかどうか分からないが、切るたびに頭から湯気を上げて怒ってくる。


「イカポッポ」はイカ墨魔法を使って、周りを黒い霧で覆った。

「イカポッポ」は見えない死角から、長い腕を伸ばし、吸盤で吸いつけてくる。


 紅々李や蓮月、私も長い腕でぐるぐる巻きにされた。

 紅々李や蓮月がぐるぐる巻きにされると少し色っぽい。

 と思っていたら、すぱっと碧衣や美夜が刀でその腕をみじん切りにした。


 なぜか、まだ私だけぐるぐる巻きにされている。

 ――なぜ?


 美夜が近くに寄ってきてキスをして闘いに戻る。

 クロ、碧衣、日葵、瑠璃、蓮月、紅々李も、どさくさに紛れキスしていく。


――👄👄👄――


 やっとハクビが苦笑いしながら助けてくれる。

 私が戦いに戻ると、「イカポッポ」はすでに魔核とドロップアイテム「イカの丸焼き」に変わっていた。


 2階へ登っていくと、そこには魔物「いくらどん」が10匹待っていた。

「いくらどん」は武器は持っていないが、お相撲さんのようにつっぱりをしてくる。

 シコを踏むと建物が揺れるため、足元が安定しない。

 ハクビが・・・もう言わなくても分かっているようだ。


「いくらどん」の身体は硬い陶器でできており刀が通らない。

 私が刀で切りかかると、体で受け

「ツッパリ、ツッパリー」と叫び、私を壁までドーン!と跳ね飛ばす。


 それを見て美夜と碧衣が「いくらどん」の頭に飛び乗る。

 そのまま頭の上でキラキラ光っているいくらを食べ始めた。


 すると、「いくらどん」は力を失ったように倒れていった。

 それを見たクロや日葵たちも頭に飛び乗り、食べ始めた。

 私も飛び乗り、赤くルビーのようないくらを食べてみる。


 口の中でぷちっと弾け、とろっとした甘味と旨みが口の中に広がる。

 もう食べるのを止められない。

 さらに奥にあるご飯もいただく。美味しいではないか!

 たぶん「ゆめぴりか」か「ななつぼし」だ。

 ごはんはかまどで炊いているな。

 お焦げもとても美味しいアクセントになっている。

 そして甘塩っぱいいくらとご飯がとてもマッチしている。

 丼を食べ終わると、どんぶりの底には赤く光った魔核が残っていた。

 魔核を取ると、「いくらどん」は倒れた。


 全て食べてしまったため、ドロップアイテムは「どんぶり」だけである。


――🍚🍚🍚――

 

 3階に来た。


 お腹もいっぱいで、力が漲っている。

 ここがボスの函館マスの部屋のようだ。

 クロと日葵が魔法機関銃を持ってきていたようで、部屋に着くなり機関銃をぶっぱなした。

(読者は残念がるだろうが)セーラー服は着ていない。


 函館マスの取り巻きは、魔核マスターが5人だったが、


 クロの弾は  「フラッシュバック」、

 日葵の弾には 「怒髪天」 が込められている。

 弾を受けた魔核マスターは黒く変色し、頭が爆発したようにチリチリになっている。


 そして、頭を抱え、もがき苦しみだした。

 たぶん、昔の悪い記憶が蘇ってきたのだろう。

(クロと日葵はどうなるか試してみたかったようである。確かに危険な技(スキル)はこうやって試すのもいいかもしれない。)


 そのまま苦しんだままにしておくのは可哀想なので、スパッと刀で切り捨てると、魔核になって霧散していく。


 クロと日葵は銃を持ち上げ「かいかん!」と言っている。

 残るはボスの函館マスだけだ。


 函館マスは、呆気にとられ見ていたが、このままだと自分が殺られると思い、呪文を唱え始めた。


「生麦生米生卵 生麦生米生卵 生麦生米生卵」

 えっ、これって?


 すると、小樽マスの目の前に、麦飯ご飯に生卵がかかったドンブリが出てきた。


 ――へ~もしかして詠唱呪文って早口言葉なのか?

 リオのときは外国語で気がつかなかったけど……でも、あのどんぶり飯でどうするんだろう? 面白そうだから少し様子を見るか。


 小樽マスは、いきなりどんぶり飯を口にかっ込んだ。


――🍚🍚🍚――


「ハッハッハッ これで、エネルギー補充ができたわ」

 ……生麦と生米って消化に悪そうな気がするけど――

 乙女達は、一気に緊張感が緩み、吹き出した。

「なにそれ~」


 そこへ、函館マスが奥義を出してきた。

「函館山ローププレー!」

 なぜ函館山がつくのか分からないが、無数の長いロープが現れた。

 たぶん、函館の出身だったのだろう。


 その無数のロープは我々目掛けて蛇のように襲って来る。

 私はぐるぐる巻きにされてなるものかと、咄嗟に「反射!」を使った。

 するとその1本のロープは跳ね返り、函館マスをぐるぐる巻きにしている。


 周りを見ると、私以外の Lip Magic Generations がロープでぐるぐる巻きにされていた。

 ――危なかった。 


 あのドンブリで緊張感が緩んで油断したからな。

 あのドンブリ飯は、精神攻撃の類だな。……気を付けないと。

 全員がロープで縛られたら身動きがとれないところだった。


 いつもの仕返しだと思い、じたばたしている仲間にキスをしてから、ロープで縛られている函館マスに止めを刺した。

 函館マスは大きな黒真珠のように光った魔核となり、霧散した。

 ロープはドロップアイテムだったようで残っている。


 ハクビだけロープを切り、少しジッとクニクニしている仲間を見ている。

 ロープに縛られている乙女もなんか艶かしい。

 ――う~ん。少しこのままにしておこうかな。


「お父様、趣味悪いですよ」

 とハクビに諭され、ロープを切っていく。

 美夜がぼそっと 「ロープに縛られるのも……」

 なんて声が聞こえたが、聞こえなかったことにする。


 ハクビが移動魔法陣を作り、1階から3階まである魔核やドロップアイテムを運び込む。

 瑠璃が魔力を通し、ギルド札幌支店にそれらを移動させた。


 調べてみるとこの塔には4階と5階があり、4階は客室、5階は展望室になっていた。

 もう日も落ちている。


 せっかくなので、その客室を使わせてもらうことにした。

 夜食はもう十分に「いくらどん」を摂っているので、必要ない。

 もう寝るだけだったが、人神世界の函館の風景を思い出し、函館山に皆で行ってみることにした。


――★🌜★――

  

 ロープウェイはないので、函館山まで飛んできたが、あたりは暗く、函館の夜景も見えない。

 当然だ。

 街灯も電飾もないのだから。


 美夜が「華燭!」というと函館の街全体が、篝火かがりびで照らされる。


 何とも幻想的な風景だ。

 暫くその風景を堪能したあと、五稜郭まで戻ってきた。


 五稜郭まで戻ってきても、周りは篝火で明るく照らされていた。


 ――まさか、街が燃えてるなんてことはないよな?

 ……人が住んでるわけじゃないし、気にするまでもないか。

 そのまま寝ることにした。明日は、襟裳に行こう。

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