1 魔神世界の入口


「あの~、私は何も伝授してもらえないのでしょうか? 土のスキルとかあったら便利だな~」

 私は何もスキルを開花してもらえなかったので、エルフの長老ラビにお願いしてみた。


「お前か? お前の特殊能力はすでに開花しておる。

 あとはそのスキルを使いこなせばいいだけじゃ。

 土のスキルはノブが開花させとるからな。

 土のスキルが必要ならノブを連れて行くことじゃ。

 なんなら儂のスキルをあげるか?

 儂もお主のことを嫌いではない。ププ(念波)」

 ラビは顔を少し紅潮させながら、唇を突き出す。


「いえいえ、滅相もない」

 私も嫌いではないが。。。(イヤイヤ、好きとか嫌いじゃなく対象外だ)


「そんなことより、お前「堕天使のショウ」だというではないか。 

 この世界樹が教えてくれたわ。かなり仲が良かったらしいぞ。 

 その時点でもうすでに通行許可を出しても良かったんじゃが、この世界樹がお主たちの力を使ってもらえば、世界樹が救えると申しての。

 少し試させてもらったのじゃ(念波)」

 目を綻ばせ、とても機嫌が良さそうだ。


「堕天使のころの記憶はないんです。なにかやらかしてしまったんでしょうか?」

「そうじゃな。人神は記憶操作に長けた神じゃからな。

 この世界樹の話だといろいろとな、ずいぶん悪戯したみたいじゃぞ。

 もう少し節度を弁えた行動をすることじゃ(念波)」


「といっても、何をしたのか分からないと……」


「まあ、魔神世界に行ったら、少しずつ思い出してくるとは思うがの。

 お主が天使だった頃、魔神世界の創造神の女(神)に手を出したらしいぞ。

 そのときは堕天使に降格させられて龍神世界に更迭されたくらいで済んだらしいが、やんちゃなお前は、龍神世界の創造神の女(神)にも手を出しおった。

 それで人神世界に追放となったみたいじゃな。ププ(念波)」


 ――確かにそれだったら追放になるわ。ゴキブリにされなくて良かったと思う。


「ついでに、そこにおるクロは、龍神世界の創造神の女(神)をしていたものじゃ(念波)」


 ――それでいろいろ知ってたのか。

「ありがとうございます。ラビ様。なんとなくスッキリしました。気をつけたいと思います」


「まあ気をつけるといっても、お前ばっかりを責められるわけではない。

 人神世界では自ら望んで平凡な人生を送ったようじゃが、もともとお前には女を引き寄せてしまう力があるようじゃ。

 引き寄せられた女がいろいろお前にしてくるんじゃ。

 こればっかりはどうしようもないからの。ププ(念波)」


 ――アハハ――(笑うしかないな)


 後で「ラビ様と何話してたの?」と瑠璃が聞いてきたことから、この会話の念波は周りの仲間には届いていないようだ。


「さて、お主らを魔神世界に送ってやろう。ワシに着いてきなさい。

 おっと、その前に炎駒を呼びなさい(念波)」


 美夜が炎駒を呼ぶ。


「そのままここを通ると、火が燃え移っては大変じゃ。

 この「ひょっこり瓢箪」に入れなさい(念波)」


 瓢箪は、本来おいしいお酒を入れておくためのものである。

 ラビが「ひょっこり瓢箪」の使い方を教えてくれた。


*「ひょっこり瓢箪」は、その瓢箪を持ったものが相手の名前を呼ぶと、その中にその相手がヒョッと瓢箪に吸い込まれ、逆に中に入った者の名前を呼ぶとヒョッコリと瓢箪から出てくる魔法の宝だ。


 美夜が「ひょっこり瓢箪」を持って、「炎炎エンエン」と呼ぶと、瓢箪の中に炎駒が入っていった。


 ――あの炎駒、「炎炎」っていうんだ。・・・初めて知った。美夜にしては可愛い名前をつけたな。


「その瓢箪はくれてやろう(念波)」

「ありがとうございます」

 いいんだろうか? かなり貴重なお宝だと思うが。


 我々は、ラビの後を着いていく。

 祠の奥に入っていくと、2手に分かれている。


「こっちが、魔神世界への入口じゃ。そっちは龍神世界じゃ(念波)」

「世界樹の根は、何本も他の世界樹の根と絡んでおる。

 齢3000年も経つと人が通れる大きさになるのじゃ(念波)」


 杖をその穴に向けて

「そのうちの一つをくり貫いて通路を作るのじゃ。

 さあ、ここを通って行きなさい(念波)」

 我々はその穴の前に立った。


「向こう側に行くと、わしと似たようなエルフの長老に会うであろう。

 もうすでに世界樹を通してお主たちのことは伝えてあるから安心するが良い。

 じゃ、またな。

 また楽しませておくれ。ププ(念波)」と、背中を押された。


 「ありがとうございま――――ッ」・・・・・・ヒェ~~~


 我々は、滑り台のような通路をすごい速さで降りて(というより滑り落ちて)行った。

 ジェットコースターのように右に左に、上へ下へ、たまに回転しながら滑り落ちていった。

 ほの暗く、時に明滅した光の中を滑っていく。


 キャァ――――


 ワハハハハ・・・・・・


 ニャァ――――


 キャハハハハ・・・


 ビュ――――ン


 乙女達の声が鳴り響く

 最初はドキドキしたが、だんだんと慣れてくるとけっこう面白い。

 摩擦熱でお尻が焼けてしまうかとも思ったが、根をくり抜いた壁は、ツルツルしていてほとんど摩擦もないようだ。


 ・・・

   ・・・

     ・・・


 1時間は滑り落ちたであろうか。

 だんだんとスピードは落ちていき、少し後ずさる。


 たぶん中央地点に来たのだと思う。

 後を見ると、ひとまとまりになり、団子状態で止まった。

 ここからは歩きだ。



 登りはツルツル滑って歩きにくいのかと思ってたら、螺旋階段状になっていて、滑ることはなかった。

 たぶん別世界へ行く時の通路と、帰ってくるときの通路は違うのだろう。

 両方とも滑り台では、上がっていくのは至難の業だ。


 時々、フラッシュライトのようにケセランパサラン金色が光っている。


 「さっきの光の明滅は、ケセランパサランか」


 周りについている光苔もほの暗く照らしている。

 登りには途中休憩を交えながら、約6時間を費やした。やっと出口が見えてきた。

 暗いところを通ってきたこともあって、出口の光が眩しい。


 ドクン!


 出口に着くと、私は ”ドクン” という胸の痛みに襲われ、そのまま倒れた。

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