12 エルフの試験とスキル開花

「父上。頑張ってください。草葉の陰から応援してます」


「そういうことで、試験をするぞ。Lip Magic Generationsよ。ププ(念波)」

 まだ、ひきずってるな……手で口を押えてるイメージとか念波で送らなくてもいいと思うのだが ……


「実はな。ここから真西へ行くと、1本の枯れかけた世界樹がある。その世界樹を100年でも200年でもよいから生き永らえさせてほしい。できるか?(念波)」

「できるかどうか分かりませんが、やってみます。ライトさんに一緒に来ていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「許可する。ライト一緒に行って手伝ってやれ(念波)」

「分かりました。ラビ様(念波)」


――♠♥♠――


 我々は、ライトの先導の元、枯れかけた世界樹まで真西へ飛んで行った。

 その世界樹は幹回りが約3mで世界樹としてはまだ幼いように見えた。

 しかし、葉はしな垂れ、葉の色もくすんでいる。心なしか元気がないように見える。

「ライトは、世界樹と話ができますか?」

「うん。できるよ。この世界樹は世界樹になってから、まだ300歳くらいなんだ。私が生まれたときには、この世界樹は生き生きとしていた。なぜこのように病気になったのか、原因が分からないんだ(念波)」


「この世界樹の症状とか分かりますか?」

「うん。聞いてみるよ(念波)」


――◆♥◆――


「まず、すごく怠い。水が木の上や幹の先まで上がっていかない。

 ところどころ痒いところがある。最近は呼吸が苦しくなってきたそうだ(念波)」

 この場所って、一番真西だから、南アメリカ大陸に近い位置だ。

 風に乗って有害物質が飛んできた可能性もある。


 一度思い出してみよう。この世界は人神世界とどう違うか?

 地図を180度回した世界である。この世界では下にある方を北と呼んでいるので、実質人神世界と変わりない。

 地球の自転も同じ方向に回っているので、偏西風も西から東に吹く。


 南アメリカは、発展途上国が多く工場が多いと聞く。どのような工場があるのか知らないが、PM2.5やスモッグなどの有害物質が飛んできてもおかしくない。世界樹からさらに西の方は、砂漠地帯が広がっていた。

 このまま放置するとこの世界樹だけでなく、他の世界樹にも広がっていく可能性があるだろう。


 瑠璃に聞いて、水脈を見てもらう。地下水は汚染されていないが、水の動きがあまり良くないという。

「瑠璃。このあたりにオアシスは作れるか?」

「そんなの簡単サー」

「オアシス!」……まんま、世界樹の西側に大きなオアシスを作ってしまった。


 水脈も正常に戻したという。さすがわが妹だ。

「ついでに、この世界樹にも水を送ってくれ」

 瑠璃は世界樹に手を当て、「ほい。「水巡り!」」と叫んだ。


(瑠璃が「オアシス」とか「水巡り」とか言っているが、実はイメージで魔を発動するので、どのような言葉でも良い。イメージにあった言葉が、「オアシス」のように言葉として出てくるに過ぎない)


――水清水――


 水が世界樹に行き渡ると、萎れていた葉が生き生きしてくる。

 それとともに・・・


 世界樹の樹皮から糸のような虫がウヨウヨ出てきた。……ウッ気持ち悪い。

 たぶん、水圧に押されて出てきたんだろう。

 瑠璃もびっくりして、木から飛び退いた。

 これが、世界樹の病気の元凶だったのだろう。


 美夜に落ちた虫を焼いてもらう。問題は木にまだ憑いている虫だ。

 私はキャンプでテントに塗った殺虫剤を思い出し、樹皮に塗ってみた。

 すると、ポロポロ虫が落ちていく。その虫も美夜に焼いてもらう。

 たぶんこれで世界樹の寿命は少しは長くなったと思う。


 でも100年は持つだろうか? 根本の原因は違うところにある気がする。

 私は世界樹の周辺を調べることにした。

 しばらく歩いて調べていると、昨日瑠璃が救った鶴のような怪鳥が虫を食べていた。糸のような虫ではなく、バッタを食べている。


 原因は怪鳥かとも思ったが、バッタの方が怪しい。

 このバッタを他の場所で見たことがあるかライトに聞いたが、ライトも初めて見たという。仮説だが、南アメリカの公害が、このバッタを追いやり、このアトランティス大陸までバッタが移動してきたのではないか?


 バッタには糸のような寄生虫がいて、その寄生虫が世界樹を蝕んで枯らせたのではないか? 根本の原因は人間が生み出した廃棄ガスつまり公害だとも思える。

 しかし、今この場所で工場の排気ガスを無くす術は私にはない。


――虫虫虫――


 現実的なのはバッタの根絶であろう。どうすればよいか皆に相談してみた。


 美夜が「そんなの、この辺一帯、焼け野原にすれば簡単だ」という。

 瑠璃が「そんなの、大量の水で流せばいいんじゃない」という。

 クロが「そんなの、みんなでイナゴ狩りすればいいにゃん」という。

 蓮月が「そんなの、怪鳥に食べてもらえばいいんじゃないの」という。

 碧衣が「そんなの、ショウの殺虫剤でイチコロでしょ」という。

 日葵が「そんなの、雷で痺れさせればいいじゃん」という。

 紅々李が「そんなの、世界樹の耐性を強めればいいんじゃないでしょうか」という。


 ……ここで問題です。皆さんは、どうしたらいいと考えますか?


 正解は…… 


――???――


 全て採用することにした。

 どれか一つだけ行っても世界樹の生き残りとバッタの根絶は難しいと考えた。

 他にもいろいろ方法はあるかもしれないが、私たちの考え得る方法として、


 1.世界樹や草の中に逃げ込んでいるバッタに瑠璃が雨を降らせたあと、雷で気絶させる。

 2.世界樹を瑠璃の水壁で守りつつ、原っぱを焼く。

 これでほとんど根絶に近い状態になってると思うが、


 3.土の中に隠れているバッタもいるかもしれないので、出てきたところを怪鳥に食べてもらう。

 4.年に数回、エルフや先住民にバッタ狩りをしてもらい、佃煮にしてノブに売る。

 5.世界樹の耐性を強めるため、先住民に木登りをしてもらう。

 (過保護すぎるのも良くないと思う。)

 6.それでも虫が出てくるようなら殺虫剤を使う。

 殺虫剤は最後の手段だ。それに材料が調達できるか不明だ。


 対策はできた。あとは実行あるのみ。


 ライトにも相談して、1の方法に不安があるようだったので、世界樹に雷が落ちないように導雷針を砂漠に立て、雷を落としたあと、世界樹は紅々李のホーリーで回復させる事で承諾してもらった。

 枯れかけた世界樹もそれでいいという。


 瑠璃が「ゲリラ豪雨!」で水浸しにした後、「稲妻!」で雷を落とし、感電させる。(私たちは飛んでいるので、感電しない。)

「ホーリー!」で世界樹を回復させ、「水壁!」で世界樹を保護しながら、「豪炎!」で世界樹を残し焼き畑にした。


 その後は瑠璃が、怪鳥に対して、

「バッタ食べてちょうだい!」とやや強制的にお願いする。

 鶴に似た怪鳥も、「ツッツルーー恩返しします」と言ったらしく、しっかりと食べてくれるようだ。


 先住民には天使コスプレをした紅々李たちが先住民のところに降り立ち、

 エルフのライトが影から念波で「イナゴ刈りを毎年4回しなさい!」と命じた。

 律儀な先住民は、神聖な恒例行事とするであろう。

 ……少し後ろめたい。


 また、先住民の子供には

「積極的に世界樹の木登りをしなさい。だだし、神聖な木であるから傷は付けないように」と命じてもらった。

 子供が木に登るくらいが調度いいだろう。


 これでだいたいのことは終了した。

 問題は殺虫剤だ。


――虫蝗虫――


 エルフの街に戻り、これまでの経緯を長老に報告した。

 長老は、それだけでももうすでに合格だと言ってもらえたが、殺虫剤の是非について聞いてみた。虫であっても殺していいものか?


 長老が「あまり気にしないよ。土壌汚染とか起こさなければね(念波)」

 と言ってきたので、殺虫剤も有害物質にならなければ問題ないようだ。

「このアトランティスにケセランパサランはいますか?」

「ケセランパサランって針のついたふわっとした生き物かい? それなら……(念波)」と言って念波を送ったらしく、

 ケセランパサランが祠の奥や世界樹の上の方から集まってきた。


 ケセランパサランも植物の一種で魔物化したものらしい。

 魔物といっても、危害を加えなければいい魔物なので共生しているという。

 ここにいるケセランパサランは色とりどりで白、赤、黒、青、藍、緑、金色と様々だ。

 できれば全て研究材料に欲しいところだったが我慢した。


 私が知っている藍色のケセランパサランに集まってもらい、針からコップに毒を出してもらう。それを1000倍に薄めれば、殺虫液ができることをエルフのライトに教えた。

 万一、世界樹にバッタや糸のような虫が出たらこれで殺して欲しいと説明した。


――藍愛♥――


 あの枯れかけた世界樹は、長老の昔からの友達だったようで、今でも話しかたり相談したりしているそうだ。


 長老は友達を救ってくれたお礼だと言って、

 この世界と人神世界以外の別世界を行き来する権利と眠っているスキルを開花してくれた。

 ――キスしたわけではない。


 別世界で役に立つからと、それぞれの額に手を当て、


 碧衣に対して、 風の精霊「シルフ」を

 日葵に対して、 雷の精霊「ヴォルト」を

 蓮月に対して、 月の精霊「アルテミス」を

 紅々李に対して、光の精霊「アスカ」を

 クロに対して、 闇の精霊「プルートー」を 開花させた。


 そして

 美夜に対して、 火の精霊「サラマンダー」の命名を

 瑠璃に対して、 水の精霊「ウンディーネ」は目覚めているので、

 さらなる魔力の器を広げ、さらに第2のスキル「吸収」を開花させた。


 もともとそれぞれに眠っていた力を引き出しただけだという。さすが長老だ。


 ただ、己の力に過信しないようにすることと、この世界の剣の力は他の世界でこそ生きてくることを忘れないように と教えてくれた。


 美夜の場合、もうすでにほとんど目覚めている状態に近いが、サラマンダーの命名によって力を制御しやすくなるのだという。

 瑠璃の「吸収」は手で触ることで魔力を吸収できるそうだ。

 ……このスキルもすごいな。瑠璃って……


 ――ん? あの、私は?


         ( 第2期へつづく )

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます