9 エルフ

 今度は、美夜やクロの周りを太鼓や笛を吹いて踊りだした。美夜たちもいるし、何とかなると思った私は、トゲトゲの実を刀で割ってみる。


 「臭!」……とんでもなく、臭い! 玉ねぎの腐ったような匂いだ。 


 美夜とクロが鼻を摘んで離れていく。 ……あっ置いてかないで~ 

 ものは試しなので、少し食べてみる。 ……あれっ!? けっこういけるじゃん。

 濃厚でチーズの様な甘さがする。

 美味しそうに食べてたら、美夜とクロが鼻を摘んでやってきた。

 一片くれと手招きする。美夜とクロも恐る恐る口の中に入れた。


 ! 驚いたように、もっとくれという。 ……もういやしいなぁ~なんて思ってたら、……


「お兄ちゃん!」 遠くから声が聞こえた。

 どうやら蓮月の耳と日葵の鼻で私やクロ、美夜を探してきたらしい。

 瑠璃たちが近づいて来ると、後ろに松明を持った先住民がいる。

 ここにいる先住民Aの仲間かと思ったら、こっちの先住民Aが槍を構えた。

 どうやら敵対してるらしい。


「ΨаiτuιoДo Ω♂ΨЮ(悪魔さん。あいつら殺っちゃって。でないと、このオスいじめるぞ)」

 ……なんかオレに槍を向けて、美夜たちに戦えって言ってるみたいだ。

 瑠璃たちが、刀を持ってさらに近づいてくる。

 先住民Aは後ずさりする。

 瑠璃たちの後ろにいる先住民Bは、勝ち誇ったように雄叫びをあげ、槍を突き上げ瑠璃たちについてくる。


 瑠璃たちが天使の羽で飛び立ち、我々と合流した。

 そして、日葵が「やってきました我ら8人衆「Lip Magic Generations」よ。

 略してL・M・G~」と言って私の檻に「雷!」と雷を落とした。


 ズど~~ん! という、けたたましい音と煙とともに檻が壊れ、黒くなり、亀甲縛りにされたオレがポーズをピッと決めた。

 そして、碧衣が

「たとえどんな困難に遮られようと、私たちを引き裂くなんてできないわ!」と先住民に向けて言った。

 あの~、檻に閉じ込められていた時より、雷に打たれた時の方が死にそうだったんですけど ……まぁそんな小さなことはどうでもいい。


 先住民AとBはびびって腰を抜かしている。そして、両手をがっしりと合わせ私たちを崇めるように大粒の涙を流し始めた。先住民にも碧衣の意が伝わったのだろう。

 さっきまで、敵同士だった先住民たちが握手している。


「ooΦφχψΘOÅ&Ψ◎(おらだぢは何て馬鹿だったんだべ。天使と悪魔だってあんなに仲良くしてるだじゃ。たった1つ石ころが当たったぐれで、仲違いしでだなんて。おらだぢも天使と悪魔を見習って仲良くしていぐべ)」

 何を言っているか分からないが、まずはグッジョブだ。

 と思っていたら、瑠璃たちが鼻をつまんでスススススと離れていく。


 美夜とクロが無理やり、瑠璃たちの口にさっきの果物を入れた。皆、恍惚の表情に変わっていく。

 この果物って「悪魔の実」だな。 ……と思ってしまった。

(後で調べてわかったことだが、「王様の実」というらしい)


 その光景を見ていたのだろう。

 木の上から1人のエルフが悶え苦しみながら落ちてきた。

「あっエルフだ。初めて見た」 みんなもまじまじと見ている。

 落ちてきたエルフは、地面を叩きながら転げ回っている。

 よほど面白いものを見たに違いない。


 たぶん自己紹介の場面だな。やっとあのギャグが分かってくれるものが出てきて私はうれしい。

 エルフが笑いながら、私たちの頭に念波で話しかけてくる。

「いや~愉快なものを見せてもらった。笑ったのは200年ぶりくらいかな。アハハハハ(念波)」

……

  ……

    ……

「君ら、口で話さないと分からないぞ(念波)」とエルフが念波で語りかけてくる。こちらからは念波は届かないようだ。

「こんにちは。エルフ様。お会いしたかったです」と口で言った。

「私たちエルフに何かようかい? 面白いものを見せてもらったから少し聞いてあげるよ(念波)」

 エルフは口で話すことはないみたいだ。

(なお、エルフの念波はイメージとして入ってくるので、実際は言葉で話すよりかなり短い)


「実は世界樹の下にいるエルフの長老に会いたいのです」

「ん~それは難しいと思うよ。長老って人族が嫌いだから(念波)」

 私は、そのエルフにノブからもらった親書を見せた。

 親書はエルフ語で書かれており、私らには読むことはできない。


「なんだ、君らノブの友達か。それなら話は別だな。長老に会うまでは私が責任をもとう。私はエルフ族のライトだ。ライトと呼んでくれ(念波)」

「ライトさま」

「ライトでいい(念波)」

「ライト、あまり関係ないことだけど、何であの先住民は喧嘩してたんですか?」


「もう30年も前になるけど、獲物を採ろうと先住民Aが石を投げたんだ。それが先住民Bに当たってな。喧嘩を始めたんだ。

 それからその家族、親戚と広がっていって、ついには2つの部族になって戦争まで始めてしまった(念波)」

「石ころ一つでね~最初はそういうものかもしれませんね」


「それが、君らのギャグひとつで収まってしまった。すごいよ君ら(念波)」

 瑠璃たちは小首を傾げている。

 蓮月が訊ねた。

「エルフさまに会うの初めてなんです。少しエルフのことを教えてもらっていいですか?」

「いいよ。エルフは簡単に言うと植物なんだ。知識を持った植物だと思ってくれ。

 寿命はだいたい1000年くらいかな。エルフは世界樹から生まれる。

 世界樹は100年に1回花を咲かすんだ。その花の実が我々エルフさ。

 エルフはこのように最初は歩いたり飛べたりできるんだけど、1000年も過ぎると足が動かなくなって、地に根をはるんだ。

 その後約5000年から1万年世界樹として生きることになる(念波)」


 紅々李が続けて訊ねた。

「すごい長命なんですね。他の陸地でエルフを見ませんでしたがなぜですか?」

「エルフは自然破壊をすごく嫌うんだ。それは我々の命に関わることだからね。

 エルフは長命だけど、汚染された土地ではエルフとしても世界樹としても生きていけないんだ。このアトランティスも少し毒されている部分があってね、それを清浄化するために動けるエルフが活動している(念波)」

「私は前世を人神世界で過ごしたんですが、アトランティス大陸がありませんでした。それも自然破壊が原因ですか?」


「そうか、君の前世は人神世界か。長老に聞いた話だけど、あそこのアトランティスは人の力も借りてすごい文明が発達していたんだ。ただ、その見返りに公害がひどくてね。世界樹は枯れ、世界樹がなくなった大陸は支えるものがなくなり、火山の噴火とともに地は割れ、洪水が襲い、跡形もなく消失してしまったと聞いた。

 大半のエルフは世界樹が枯れる前に別世界に避難したらしいけど、そこに残った子孫は滅亡したらしい。

 人神世界に世界樹があったときは、向こうにも簡単に行けたらしいけど、こちらから行くことはもうできなくなってしまったな(念波)」


「おっと、君ら長老に会いたいんだったな。時間がもったいないから、飛びながら話そう(念波)」といって、羽もないのに飛び上がっていった。

 姿かたちといい「ピーターパン」みたいだ。

 私は美夜の予備の天使の羽を使って皆と一緒に飛び上がる。

 地上には手を振っている先住民がいた。手を振り返してお別れをする。


 碧衣が飛びながらライトの傍に行き聞いた。

「さっき、別の世界に行き来できるようなことおっしゃってましたが、人神世界以外のところなら簡単にいけるんですか?」


「長老が認めた者ならばね(念波)」

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