2 ケープタウン

 ケープタウンは、今、日本の季節でいえば夏から秋に向かっている。

 北から南半球に来ると季節感が逆になり不思議な感じだ。


 ケープタウンに着くと、まずは女性陣のお買いものに付き合う。恒例行事だ。

 南アフリカというと、あまりファッションとか分からないので興味は湧かないのだが、ここは宝石、特にダイヤモンドの産地だ。

 個人的にはあまり高い買い物はして欲しくないところである。


 先日かなり散財しちゃったしね。

 時計だと、探検には必需品だけど、宝石ってあまり必要性がないような気がする。まあ、刀剣や杖に装飾として埋め込まれることはあるから無縁とは言えないが……

 私の忍耐力も上がったところで、買い物は終了し、ギルド支部に向かう。


 ここのギルド支部は、3階建てで中身はほとんど他の支部と同じだ。

 一つ違う所がある。船の発着場がギルド支部の裏側にあり、月に1度アトランティスに極秘裡に定期便を出していることだ。

 私たちは、受付窓口にギルド会員証を提示し、アトランティスの定期便について聞いた。

 私たちの年齢とB級とのギャップに受付嬢は目を白黒させていたが、ギルド本部との念波ですぐに解決したようだ。


「定期便は、1週間後に出る予定です。それまでホテルでゆっくり休んでください」といわれ、夕食を食べたあとホテルへ向かう。

 美夜だけなら、炎駒に乗って行くこともできるだろうが、我々全員がアトランティスに行く方法は今のところそれしかないので、それまでの時間は有意義に過ごしたい。


 ギルド支部で購入した魔物図鑑を見て、明日は、ケープタウン近辺の魔窟を探索することにした。


――●☪★――


 翌日、ケープタウンの街からすぐに見える魔窟テーブルマウンテンに行くことにした。

 テーブルマウンテンは読んで字のごとく、山の上がテーブル状になっていて、広く長い平らな頂上を持つ山だ。

 標高は約2800mで平らな頂上とは裏腹に、その頂上に行くためには絶壁を登っていかないといけない。


 人神世界では、ケーブルカーやヘリコプターなんて乗り物があるがこの世界にはない。自分で登っていかなければいけないのだ。

 しかし、我々には秘密道具がある。


 先のケセランパサランとの戦いで、ケセランパサランの魔核を大量ゲットしたが、それを加工し、身体を浮かせる羽を作ったのだ。

 羽には「βの笛」で集めた羊の毛と松ボックリの「松脂」を使っている。

 天使の羽を身体に装着させると、天使の羽が背中から生えたように見え、身体が軽くなる。


 ジャンプすると、脚力にもよるが10mくらいの高さまで飛び、羽を広げながらゆっくり着地できるようにしてある。

 しかも風を利用することで、さらに上へ登っていくこともできるのだ。

 天使に見えることから女子には大受けであった。


 欠点は強風に煽られると、どこに飛んでいくか分からないので普段は着用しない。


――羽♀羽――


 我々はテーブルマウンテンの麓まで来ると、天使の羽を装着し、ピョンピョンと崖を登っていった。

 崖の上まで来ると、崖の縁に生えていた最初の魔物ルイボスに遭遇した。

 ルイボスは植物性の魔物で、発火性の種を飛ばしてくる。

 あまり強い魔物ではないと思われ、種をぶつけられてもそんなに痛くない。


 種が当たると火が出るが、これまでの戦いに比べると、そんなに熱くも感じない。

 せいぜいD級の魔物だろう。

 逆に我々が強くなっているのかもしれない。

 少し、物足りないので、私も美夜の火をイメージし、ルイボスに発火させてみた。


 見る見るうちに火は広がり、野原は火で包まれたが、瑠璃が「ゲリラ豪雨!」で鎮火した。すると、ルイボスの魔核からすぐに芽が出て成長していった。

 すごい生命力だ。

 また攻撃してきたが、また繰り返すのも面倒なので相手にしなかった。


 ただ、炭となったルイボスの葉からすごくいい香りがしたので、袋に入れて持ち帰ることにした。

 フォーメーションZの隊列で先を進む。このような隊列だ


   日葵 美夜 クロ

      紅々李

     ショウ 

    瑠璃 碧衣 蓮月



 野原から少し先に進むと、魔物ダンデライオンが出てきた。

 ライオンのような容姿をしているが、顔の周りにある毛が黄色い花のようだ。

 ライオンのように獰猛だがこれも植物性の魔物である。鋭い牙と爪を持ち、襲ってくる。

 ピンチになると黄色い毛を飛ばし、煙幕を張って逃げるようだ。


 ダンデライオンは高く飛び上がり、前衛にいるクロと日葵を襲ってきたが、日葵が「雷!」を叩き込み、クロが短刀で難なく仕留めた。ダンデライオンの魔核とドロップアイテム「たんぽぽの牙」を手に入れた。


 さらに進むと、魔物ケープハイラックスが無数に現れた。……とてもかわいい。

 目がクリッとしていて栗鼠に似ている。こちらを見て固まったようにじっとしている。あまり戦いたくなかったので、静かに通り過ぎた。


 もう1kmは歩いただろうか、魔物カカオナッツの森に遭遇した。カカオナッツは木の魔物である。魔物図鑑によると、近くを通り過ぎる人に、黒く甘い煙幕を張り、根で感じた人の気配に向けナッツを飛ばして攻撃してくる。

 煙幕には人の感覚を惑わせる効果があるという。ナッツは高速回転して人や動物の身体を弾丸のように突き破って殺す。


 そうして自分の栄養とするのだ。私は試しに天使の羽を皆に装着させた。

 煙幕が張られると同時に、上へジャンプする。

 人の気配がなくなったため、カカオナッツは動揺しているようだ。

 石を落とすと、そこ目掛けてナッツが四方八方から飛んできた。

 あの数を剣で受け止めるのは至難の業だろう。


 美夜の炎だと、また焼け野原になるし、あまり自然を壊したくないな。

 何かいい方法はないだろうか?


 瑠璃は水を操れるよな。もしかしたら水を吸収することもできるんだろうか?

 瑠璃に聞いてみた。

「瑠璃。あの魔物から水を吸い取れるか?」

「ん~できるかな? やってみたことないけど、ちょっとやってみるね」

「枯水!」

 と瑠璃が言って、手をカカオナッツに向けると、カカオナッツの木が枯れていった。

 お~すごい!

「瑠璃、こっち半分だけやっちゃって」

「OK。「枯水!」」

 枯れた木の辺りに、我々は羽を使って降りてきた。

 枯れた木は、足で蹴っただけで倒れていった。


 残骸には魔物カカオナッツの魔核とドロップアイテム「ナッツチョコレート」が落ちていた。もうお昼も過ぎたし、帰る頃だ。お昼は、ナッツチョコレートとルイボス茶だ。

 昼食というよりおやつタイムみたいな感じだが、チョコレートはけっこうカロリーが高いので栄養補給には調度いい。


 ルイボス茶の香ばしい薫りと気品のある味がとても合っている。

 少し上流階級の気分を味わったところで、帰る事にする。


 帰りは楽だ。

 うまい具合に風が街の方へ吹いていたので、その気流に乗り天使の羽で降りていく。登って探検するときは6時間もかかってしまったが、帰りは2時間で着いてしまった。

 天使の羽も好評で、「鳥になったみたい」 とか 「街と人があんなに小さく見える」 とか飛びながら会話してきた。


 クロは面白がって宙返りまでしていた。少し寂しそうに炎駒が隣で見ていたのが気になる。たまに美夜が炎駒の傍に行き、背に乗っていたから問題ないだろう。

 美夜も優しいところがある。

 天使の羽はまだ操作性に難があるので、改良する余地が多いと感じた。


 羽を自分の意のままに動かせる魔術でもあればいいのだが。

 一番先に改良する点があるとすれば、美夜が炎駒に乗った時に、羽の一部が燃えてしまった点だ。

 少なくとも美夜の羽は防火加工しないといけない。

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