2 ケセランパサラン

 遊技場を遊びつくして満足していた仲間と合流し、少し稼ごうということで、富士の魔窟、樹林の中の洞窟ダンジョンに向かった。

 富士の魔窟は数十箇所あるそうで、適当に歩いて日葵の感に任せて歩いて行った。

 ギルドショップ内に地図が売っていたので、1部買って地図を見ながら歩いているが、その地図にある魔窟とは見当違いの方向に歩いていく。


 ……まぁ日葵が嗅ぎ分けているのだから、何かあるとは思うが……


 鬱蒼とした樹海の中をしばらく歩いていくと、地図にはない洞窟を見つけた。洞窟の入口には、古い鳥居があり、その周りには冒険者であったのだろう白くなった骸骨が何体か転がっていた。

 乙女たちはあまり気にしないで洞窟の中に入っていく。洞窟は高さはあるのだが道が狭く、1人通れるくらいの幅しかない。

 フォーメーションIで進んでいく。

 洞窟で薄暗いため、クロを先頭に、中心部が私と紅々李、殿は美夜でその間をほかのメンバーで埋めている。フォーメーションIは、一直線の陣営だ。


 少し奥に行くと、人が100人は入れるであろう広間を見つけた。広間の上から光が漏れ、雑草が生い茂り、苔が生えた小川がいたるところに流れている。

 岩の上を飛びながらその小川を辿っていくと、、滝壺があり細い滝が流れ落ちている。


 その奥の滝の裏には巨大な樹木の下に祭壇があった。

 巨大な樹木の葉は、水しぶきを受けキラキラ輝いている。

 祭壇を守るように樹木は生い茂っていた。

 きっと何かの神を祀っていたものと思われる。祭壇の周りの壁には、緑色のあざやかな苔がびっしりと生えている。


 その祭壇を調べようと思い、手を触れたら、苔が変化し魔物が飛び出てきた。

「キャッ!」

 紅々李が尻餅をつき悲鳴を上げる。

 宙に浮き、ふわふわ飛んでいる。大小さまざまあるが、形は同じ球体である。

 周りが緑の羽毛のような毛で覆われている。


 刀でつついてみると、毛が逆立ち直立した。しかもかなりの硬い。大きいものでは直径2mはあるだろう。刀や薙刀で切っても、ふわっと逃げていく。


 そうこうしているうちに、その魔物に回りを囲まれてしまった。だんだんと、間合いを詰めてくる。

 このままでは、全員串刺しになってしまう。


 美夜が叫ぶ。

「フォーメーションO・・・ショウ、紅々李を中心に回りを囲め!」

 私と紅々李を中心に、少しずつ右回りで回転しながら移動する。

「日葵、今だ! あの洞窟の方向に稲妻を放て!」と私が指示する。

「稲妻!」 雷鳴が轟く。 稲妻が落ちたところにいた魔物は焼け落ち、日葵の前方に道が開けた。

「よし。開けた道の前の方に洞窟の入口がある。そこにみんなでダッシュだ!」


 ダダダダダッ――


 私が先導を切って走り出す。……というか先に洞窟に逃げる。

 美夜が殿しんがりだ。全員、洞窟に入ってそのまま少し奥に入る。

 魔物も一緒に追いかけてきた。


 それを見た美夜が、その魔物に向かって、手の先から「豪火!」を放った。

 美夜の手の先、洞窟の中に火の渦が燃え広がる。

 一網打尽だ。洞窟に入った魔物は焼け焦げになり……消えた。

 地面には、鋭い針が落ちていた。でも、魔核が見当たらない。

 どこにあるのか探していると、日葵が匂いで、なんと洞窟の天井に張り付いている魔核を見つけた。


 それをクロや蓮月が壁を利用して上へ飛び上がり、器用に袋に回収していく。

 魔核を入れた袋は、手を離すと上に登っていく。

 20個くらいの数を回収し、リュックに入れると足が地面から離れてしまった。

 どうやらこの魔核は、浮力を持っているようである。


 これを利用すれば、面白いものができるんじゃないか?

 ここにある魔核は、全て回収し、それぞれのリュックに入れてもらった。

 地面を見ると、緑の液が粘着した針が落ちている。

 これも何かに使えそうなので手袋をはめ、できるだけ回収した。


 もと来た道を戻り、洞窟を出た。祭壇を離れたためか、これ以上追ってくる魔物はいない。

 最初に見た骸骨を見ると、針で刺したような小さな穴が無数に空いていた。さっきの魔物に殺されたのであろう。たぶん地図に載っていなかったのは、ギルドまで帰還できたものがいなかったからだと思う。


 でも、我々もこの秘密の洞窟は伏せておくことにした。

 祭壇もあるし、あの魔物はなんとなくあの祭壇を守るための魔物だったような気がしたからだ。


――◇◆◇――


 ギルドに帰り、持っていた魔核の半分を鑑定してもらった。残り半分は、研究用だ。たいしたものでなければ、後で鑑定窓口に出せばいい。

 しばらく鑑定に時間がかかったが、鑑定士が図鑑で調べ、ケセランパサラン亜種緑という珍魔獣の魔核であることがわかった。強さはD級だが、レアな魔物ということで大きい魔核はC級で取引されているらしい。


 魔核ポイントは全部で3615ポイントついた。8人で割ると1人451ポイントである。


 魔物の魔核のポイントは、

 F級が1~9、

 E級が10~19、

 D級が20~99、

 C級が100~499、

 B級が500~2499、

 A級が2500~9999、

 S級が10000ポイント以上である。


 上位級への昇格は、累積ポイントで決まり、

 FからE級へは100ポイント以上、

 D級は250ポイント以上、

 C級は1000ポイント以上、

 B級は1万ポイント以上、

 A級は10万ポイント以上、

 S級は100万ポイント以上で昇格する。


 なお、C級以上は、2段階以下の魔物を倒しても、ポイントは加算されない。

 例えば、C級になるとE,Fクラスの魔物を倒してもポイントされない。


 鑑定とともに提出したギルド会員証が戻ってきた。

 級がDとなり、メモ欄には月日とポイント数が記入されている。


 メモ欄 剣神歴5030年9月3日 451P 累計451P 


 我々は、入会初日でD級に昇格してしまった。


 あれでも、強さD級なんだ。C級くらいはあるかと思っていたのに……

 少しがっかりしながら、あの魔核と針をうまく使えないか考えていた。

 ケセランパサランが出たという噂はギルド内で広まり、どこで見つけたのかと他の冒険者から問い詰められた。

「あっちの方の樹海で遭遇したけど、どのへんだったのか良くわかんないです」

 そう言って、適当な方向を指差した。冒険者たちはこぞってそっちの方に向かっていく。


 ギルドでの買取価格は、魔物の級やポイントとは比例しない。希少性も加味されるためで、レア魔獣のケセランパサラン亜種緑は、大きい魔核で100万円、小さい魔核でも20万円した。合計で2000万円くらいになった。


 どおりで、冒険者の目が変わるわけだ。冒険者ってこんなに儲かるんだろうか?

 でもあの魔獣、倒してもうまくやらないと魔核は空に飛んでいくんだよね~


 みんなで1人200万円ずつで、余ったお金は共通経費用にする。

 現金で持ち運ぶのは窃盗に合う可能性があるため、当面の現金だけを残し、総合窓口で貯金した。貯金すると貯金額が会員証の貯金通帳欄に印字される。


 なお、ここの貯金は利子はつかない。しかも預ける経費として、1年3%の費用を取られる。貯金は、ギルド会館なら世界中どこでも降ろすことができ、ギルド会員証を見せることでキャッシュカードとしても利用できる。

 会員証に記載されている貯金額以内ならギルド登録店(だいたいの店舗が登録されている)で、利用できる。

 登録店は会員証の番号とサインでギルドに請求する仕組みになっている。

 もし、多くの店舗で利用し、請求額が貯金額を超えた場合は、ギルドで法外な利息を付けるので無理な買い物をする冒険者はまずいない。


――◇◆◇――


 瑠璃が「水」といって、手にあふれた水で顔を洗っていたら、その水がケセランパサランの針にかかった。

 あれだけ硬かった針が、羽毛のように柔らかくなっている。


 我々はギルド会館の研究室を借りることにした。

 魔核やアイテムを鑑定に全て出さなかったのには理由がある。鑑定に出すと、ギルド会館では買取か鍛冶屋による加工しかできないためだ。

 ある程度時間をかけて調べるためには、それらを残し研究する必要があった。

 針についていた粘着性の緑の液体は、針の先端から飛び出すようになっていた。 その液体を1滴シリンジに吸い取り、研究室の実験用マウスに注射する。


 マウスは数秒で動かなくなり、痙攣して死んでしまった。麻痺性の毒であると思われる。

『麻痺性の毒』……これは私の前世の知識が一番生かされるところだ。

 そのまま、武器として毒矢のように使ってもいいが、この毒を薄めて使用することで、麻酔や痛み止めとしても使用できるかもしれない。

 固くなっている針の根元を水で洗ったあと、針の中心に穴が先端まで通っているので、針の先端に瓶を置き、針の根元から息を吹き込むと先端から毒成分を瓶に集めることができた。

 毒成分を、数滴スポイトでとり、100倍、1000倍と薄めていく。

 ヌードマウスの皮膚に、トオガラシ成分を塗るとヌードマウスが痛がって走り回る。そのヌードマウスに、1000倍に薄めた毒成分を塗ると、ヌードマウスは大人しくなった。痙攣して死んでしまうこともない。

 次に私自身の皮膚にも、トウガラシ成分を塗り、同じ実験をする。痛みが引いていく。皮膚がおかしくなることもない。

 1000倍にして鎮痛薬として使用することにした。


 ケセランパサランの毒の原液は、「ケセランパサラン毒」とラベルに書いて、瓶に貼って、瓶を厳重な箱に入れてカバンに入れた。


 針は、水で軟化し、乾燥させると硬質化する。熱で炙ると、強く固まり、水をかけても硬いままだ。針に残っている毒成分がないように入念に洗浄した。

 ケセランパサランの魔核をもったいなかったが、実験のため、飛ばないように袋の中に入れて押さえ、砕いて粉状にした。粉状にしてもふわふわと浮き上がっていく。

 私はあることを思いついたので、粉状にした魔核と柔らかくなった羽毛状の針をスライムゼリーで混ぜ合わせ、数個の塊を作った。

 その塊も空中に浮かんでいるが、上に登っていくわけでもなく、目の前に静止してふわふわ浮かんでいる。

『これは面白いものができるぞ』


 鍛冶場にやってきた。立花家の家紋のある小十郎のところだ。

 私は仲間の身を守るため、防具を作りたかったのだ。


 特に大事な心臓を守る強固な「胸当て」だ。みんな大きさが違うので、胸当ての大きさを決めるため、しっかり触って大きさを決めていく。

 ――けっしてふしだらな気持ちからではない。


 小十郎もやりたそうに見ていたが、それはダメだ。

 。。。もう一度言う、けっしてふしだらな気持ちからではない。


 小十郎はヨダレを垂らして見ている。工賃ははずんだ。小十郎には守秘義務があるはずだ

 。。。さらにもう一度いう。けっしてふしだらな気持ちからではない。


――♥♠♥――


 乙女達は、防具を作るためとあって、もじもじしながら協力してくれた。

 クロは別にいいよ~みたいにドンと胸を前につき出してきたが、他のメンバーは乙女の恥じらいもあって、「ショウだけだよ」とかいいながら採寸させてくれた。


 ――これが役得ってやつだな。

 。。。何度も言う。けっしてふしだらな気持ちからではない。

 やっぱり柔らかい。へ~微妙に違うんだな~大きさだけでなく硬さとか形とか。採寸し、だいたいの形を決める。


 研究所で作ったケセランパサランの塊を一人ひとり交互に触りながら大きさ・形を正確に整えていく。

 今後の成長も考え、少し大きめの胸の大きさにして、四隅に紐を通す穴を開けた後、焼き締めを行う。小十郎も炉の温度や時間を調節してくれる。

 だいたい出来上がったところで、一度胸に当て大きさを確認する。

 少しだけ余裕を持たせ、研磨し仕上げる。出来上がりだ。


 ほかの部分も作りたかったが、材料の関係上、今回は胸当てだけだ。

 できあがった胸当てを実際に女子達に装着してもらう。女子にはかなり好評で、黒く焼成された胸当ては、まったく重さがなく、剣を振り回しても邪魔にならない。

 これなら弓を引いても胸に当たらず、痛くないだろう。弓矢使いは今のところいないが――


 小十郎にも「これは高く売れるぞ。」と褒めてもらった。小十郎にはこれからも世話になるであろう。自分用の胸当ての分だけとって、余った塊を全てあげたら、すごく喜んでいた。

「やった。これで1000万は儲けられるぜ」


 最後に自分の胸当てを作る。上半身裸となり、ケセランパサランの塊を胸に当て伸ばしていく。あとは焼き締めを行い、出来上がりだ。実に簡単なものだった。

 女子も自分自身でやればよかったんじゃないかと、思う者がいるかもしれない。


 いや、違う!

 女子の身体はデリケートなものなのだ!

 細心部まで注意を払うのが男子たる勤めだと思う。


 最後にもう一度だけ言う。。。けっしてふしだらな気持ちからではない!!

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