20 Lip Magic Generations

(1) 上級試験


 時は遡る。


 キャンプファイヤーに行った後の寺子屋での出来事。

 クロに呼び出された。

「昨日の晩。 ショウの家に行ったにゃ。初めての時は、ショウと決めていたにゃ」 ……なんか、卑猥に聞こえる。

「これ見て欲しいにゃ」といって、ある短刀を見せられた。

 見覚えのある短刀だ。といっても「黒猫マークとクロ参上」とか名刺が置いてあったから盗られたのは分かっていたけど。


「玄関に置いてあった刀も良かったけど、記念になるものが欲しかったにゃ。いろいろ探していたら、ショウの寝ている部屋を見つけたにゃ。そのまま、ショウのお布団に入って寝ても良かったけど、瑠璃が一緒に寝ていたし、いろいろやるのは遠慮したにゃ」

 いろいろって何だ?


「それで、辺りを探したら、この刀を見つけたにゃ。猫になっていたし、咥えるのにはちょうど良かったので、この短刀を貰ってきたにゃ。帰って来てよく見たら、すごい出来なのにゃ。もしかしたらこれって大業物かもしないと思って……返すにゃ」

 そんなにすごい出来だったんだ。逆にうれしい。


「クロが持っててよ。それって俺が作ったんだよ。もともとクロにあげようと思ってたんだ」

「ほんとに? ショウが作ったのこれ。すごいにゃ! 尚更欲しいにゃ。遠慮なく貰うにゃ」といってまたキスされた。

 好きな人に使ってもらうのは嬉しいことだ。


――★☪●――


 それからしばらくして、私は14歳になった。できれば今年、上級クラスになって卒業したいと思っている。今度の昇段試験は、またクロが相手だ。

 勝てる要素があるとすれば、私がスキルを使えることくらいだ。上級者はハンデとしてスキルは使っていけないことになっている。

 それで、引き分け以上なら昇段できる。


 試合開始だ。 互いに礼をして、蹲踞そんきょする。

「試合開始!」と梅村先生の声

 私は、蹲踞の姿勢から飛び出すように、クロに木刀を打ち込む。

 しかし、クロはスッと後ろに下がり、何事もないように躱す。

 私は猫が嫌がる水のスキルを使った。刀の周りに水流が蜷局をまいて巻き上がる。

 刀を振り下ろすと、水流がクロを襲う。


 といっても切れるほど水の勢いは強めていない。

 瑠璃なら本気を出すと、水の勢いを強め多少厚い板でも切ることができる。

 水流を避け、クロが飛び上がった。――そこを横からクロを切る。


 クロは、スッと猫になり避けた。


「試合終了!」梅村先生の声が響いた。

「 九鷺さん。 変身スキルは使用すると反則で負けです」

「まいったにゃ。つい切られると思って、小さくなったにゃ」

「それだけ切羽詰っていたということですね。翔さんの勝ちです。おめでとう!」


「ありがとうございます。」 礼をして試合終了だ。

 良かった~なんとか昇段できた。目標達成だ。


 稽古は上級になるか20歳を迎えるまで続けられ、上級者は剣聖学院に入学することができる。これとは、別に寺子屋の学習は、20歳を区切りに卒業するか、進学(大学レベル)することができる。


――★◇★――


 ショウたちは、寺子屋の大学レベルに進学した。4年の歳月が流れ、20歳レベル5年目を迎えた。


★この昇段後の寺子屋の最初に入った同じクラスの稽古場でのレベル

 初級は、女子14人 男子17人

 中級は、女子26人 男子15人。

 上級は美夜、クロ、碧衣、蓮月、日葵、紅々李、ショウの他 女子10人、男子10人。 そして、後から入った特待生の瑠璃も上級になった。

(甘すぎると思われるがそうではない。――作者の願望とご都合主義である)



(2) Lip Magic Generations


 我々が卒業するまで、後一年たらずである。

 主だった仲間が集まって、計画を立てることにした。

 卒業後どうするか? 卒業までどのように過ごすかである。


 今現在、ここにいるのは、瑠璃を除いて14~15歳で同じ世代の仲間である。

 紅葉が美しいもみじの木の下に、美夜、クロ、碧衣、蓮月、日葵、紅々李、ショウ、瑠璃が集まっていた。


 この剣神世界では、卒業後、一定の期間「修行の旅」に出るのが通例である。一定の期間とは、その者のレベルや種族によっても変わってくるが、通常3~5年だ。


「ねぇねぇ、どうする?」日葵が話のきっかけを作る。

「そうだにゃぁ。旅に行くのは決まりとして、みんなはどこ行くにゃ?」

「決まってない」

 皆が口々にいう。皆の肩に緋く染まったもみじの葉が舞ってくる。


「それじゃ、ここにいるみんなで修行に行こうよ」美夜が提案した。

「いいね」 碧衣たちが頷く。私も同意した。

「で、どこに行くにゃ?」

「とりあえず、大陸方面ということで、中国とかどうかな?」

 チャイナ服の蓮月は中国に行ってみたいようだ。


「いいんじゃない。みんなで行けば、上級者が8人もいるんだし、大抵の魔物はなんとかなるよ」と瑠璃が賛同する。

「どうせ魔物を倒すんだったら、みんなでチーム作ってギルドに入ろうよ」

 日葵がギルド入会を提案する。ギルド日本支部は富士山の麓にある。


「いいね、いいね」どんどん話が進んでいく。

「じゃ、来年の夏までに準備しとかないとね」

「旅をするのに必要なものって何かな?」耳をピョコンとあげて蓮月が皆に聞く。

「まずはお金かな。できれば都市間は蒸気新幹線で移動したいよね」


 私は当面準備するものについて考えてみた。

「魔物倒しながら資金を稼げばいいから、そんなにたくさんお金はいらないけど、最初の出費は覚悟しないといけないな。着替えもある程度必要かな。着替えは2、3着程度もっていけばいいと思う」

「一番大切なのは、防具と武器だね。なんてったって修行なんだから」

「分かった。みんなの武器はオレが作っておくよ」


「やったぁ。ショウの作った武器、欲しかったんだぁ」……美夜達が手を取り合って喜んでる。

「防具は、自分にあった防具をそれぞれ揃えといてね」紅々李がいう。

「あたいは、これでいいにゃ」とクロが胸元を広げて忍者服を見せる。

「クロは、軽装でいいよね~」碧衣たちがうらやましそうに見てる。

「私は、盾も欲しいからなぁ。ちょっと重装備になっちゃう」日葵はフフと笑いながらが腕こぶしを作った。


「食べ物はどうする?」紅々李が口に指をあてて、聞いてきた。

「基本は現地で食べる。獣とか魔物とかも好き嫌いしないで食べる。いいね!」


 そう美夜が言って、さらにみんなを見渡しながら、

「チームを作ることになったんだから、みんなのスキルを確認しておきたいんだけど、いいかな?」

「分かった」と皆が頷く。


 最初にクロが教えてくれるようだ。

「わてのスキルは、みんな知ってると思うけど「漆黒」にゃ。敵の目くらましができるのにゃ。それから、もともとあるスキルだけど、目がいいにゃ。暗闇でも見えるし、遠視もできるにゃ」


「私は龍人族だから「身体強化」が生まれながらにある。5年くらい前に、「火」のスキルが使えるようになった。まだいろいろ練習中だけど、火を操ることができるみたいだ」美夜が手からボッと火を出して見せる。


「私は大したことないけど、ヒールだよ。魔力量にもよるんだけど、たいていの怪我は治せるし、簡単な病気も治せる」紅々李が照れながら話した。

「一番重要なスキルだよ! ヒーラーがいるといないでは、戦い方がまるっきり変わってくるし、ヒーラーがいると持続力が格段に長くなる」

 美夜がそういうと、紅々李がうれしそうに微笑む。


「私のスキルは「矢」を放つことができるんだ。昼でも夜でも月があると威力が増すんだ。「月光の矢」って言ってる。あとこれはスキルっていうのかな? 耳がもともといいんだよね。かなり遠くの音が聞こえる。一度聞けば、何が動いているか直感でわかる」蓮月が両耳を立てて遠くの音を聞いている。


「私のは「未来視」、数分先までの事を見ることができるんだ。たまに予知夢を見るわ」と碧衣がいうと日葵が、

「数分先とかって、戦ってたら、全部避けることできるじゃん。すごいね~」と褒め称える。

「ある程度はね、よけられるんだけど、レベルが全く違うとどんな風に避けても切られる場面が見えるんだ。だから無敵じゃないの」


「次は私ね。」と日葵が続ける。

「私のスキルは「稲妻」ピカーって稲妻を相手に当てるの。でも制限できないから、たまに私も痺れちゃうんだ。けっこう強力だよ。それから、私の場合犬族だからもともと鼻がすごくいいの。誰の匂いとかスグわかっちゃうよ」


 そして瑠璃が「私は『水』だよ。美夜さんと同じ感じかな。水を操れるの」

「ゲリラ豪雨!」っていうとザァーっとすごい雨が降ってきた。

「って感じで、雨が降るんだ」

 みんなずぶ濡れである。

「ホット」といって、美夜が暖かい火を出してくれた。

 その火で透けたシャツを乾かしながら話を続ける。

(――とても目の保養になる――瑠璃よくやった)


 最後に私だ。

「オレのスキルはあまり言いたくないんだけど……」

「みんな分かってるにゃ。「魔断」と「反射」、「水」にゃ。でももうひとつあるって言わなかったっけ?」

「確かにそうなんだけど、一番最初のスキルは浄化だと思ってた「魔断」なんだ。

 それから、「リップマジック」っていうんだけど、口づけするとその相手のスキルを真似することができるようになるんだ」


「えぇ~~~~~」って皆から悲鳴のような叫びが上がった。

「ってことは、わての「漆黒」とか使えるのか?」

「そういうことになる」


 美夜が驚いたように「おれの火もか?」と聞いてくる。

「そういうことになる」

「とんでもスキルだな。何でも有りじゃないか」

「ん~でも、条件があってね。相手がオレのことを好きじゃないとダメみたいで、誰でもいいってわけじゃない。それに男とキスするとか死んでも拒絶する。

 それから、美夜の身体強化みたいな潜在的にあるスキルもダメみたいだし、かなり強力なスキルも真似できないみたいだ」


 それを聞いた女性陣は、少し距離をとって円陣を組み、ゴニョゴニョ相談している。

「ショウくんが嫌いな人、手挙げて」……シーン

「ショウくんが好きでも嫌いでもない人、手を挙げて」……シーン

「まだ人属以外で、変身できない人、手挙げて」……蓮月、日葵、碧衣が手を挙げる。

「ショウくんとキスしたい人、手を挙げて」……シュッと全員が手を挙げる。

「瑠璃ちゃんはダメだよ~妹なんだから」……瑠璃が「関係ないもん」という。

「ということで、決まったな」と美夜が言った。「ふふふ……」


 ん? なんだ?


――???――


「漆黒!」と声が響き、……目の前が暗くなり何も見えなくなる。

「キャ」と瑠璃の声が聞こえた。……たぶん瑠璃も何も見えなくなったのだろう。

 美夜がサッと私のそばに来て、その辺にあった縄で私をグルグル巻にする。

 私はまったく身動き出来なくなった。

 油断していたとはいえ、こんなにあっさりやられるとは、オレもまだまだ修行が足りない。


「さぁ準備は整った」と美夜が宣言する。

「順番だからな。まず蓮月だ」

 蓮月らしき女性にキスされた。……頭の中に月の明かりが灯る


 続けて、 日葵らしき女性にキスされた。……頭の中に太陽が眩しく輝く

 さらに、 碧衣らしき女性にキスされた。……頭の中に若葉の香りとともに瑞々しい碧色の炎が瞬く。


 そして、 紅々李らしき女性にキスされた。……頭の中に薄紅色の柔らかい炎が灯る。


 なぜか、 クロらしき女性にキスされた……「おまえはいいだろ!」って美夜が言う。


 ついでに、 「だったらオレだって」……美夜らしき女性にキスされた。


――♥♠♥――


 縄を解かれ、「漆黒」が解除される。

「どうだ、極楽だっただろう」と美夜が言った。

 ……う~ん。 極楽かどうかは怪しいが、とても感触が良かった。

「なんだその顔は? しょうがないな。後でキスしてやるからな」

 といっていたが、ほかの女子が文句を言っている。中でも瑠璃がかなり怒っている。


 美夜が説明してくれた。

「皆と相談してな。いくらかでも戦力は高いほうがいいということで、特にヒーラーがもう一人いると助かる。みんなお前のことが好きみたいだし、変身スキルもほしい。ってことで、全員でキスすることになった」

 ……クロと美夜はしなくてもいいんじゃね。と思ったがついでなのだろう。


「これで、おまえは全員のスキルが使えるようになった。ちゃんと練習しておけよ。特にヒールをな」

 ヒールか、しっかり練習しておこう。

 薬とか作らなくてもいいんじゃないかって思ったけど、怪我だけじゃないからな。魔力にも限界があるし、薬は作れるだけ作っておこう。


「最後にギルドに登録するチーム名を決めようか」美夜が言う。


 皆しばらく考えた後、クロが立ち上がった。

「Lip magicって面白いスキルにゃ。今日はうちら、うら若きの世代の美女がショウに口づけをして、ショウがいろんな魔法が使えるようになったにゃん。

 たぶん、もっといろんな魔法が集まってくるにゃ。んでもって、冒険をしてうちらが新時代を築くにゃ!


 ―― だから、Lip Magic Generations ってどうにゃ?」


(3) 新たな真実


……Lip Magic Generations(リップ マジック ジェネレーション)か。


 日本語にすると「口びるによる魔法の世代または年代あるいは時代」という感じかな。オレの魔法で世界を変えていく世代……少し大げさだな。

 ひっくるめて、Lip Magic Generations とでもいうべきか。

 略してLMGとかリプマとでもしておくか?


 でも、オレのスキルの名前だとか安直すぎる感じだけど、いい名前だと思う。

 チームのみんながそれで良ければいいや。


 美夜がみんなに聞いて、「いいよ!」「異議なし!」「OKサー」「いいねー」などの声が上がり、その名前で来年の夏休み後にギルドに届け出ることになった。

 それから「リーダーは、ショウにしたよ」と美夜が私を見て言う。

「そこは、美夜でいいんじゃないか」私は訂正を求めた。


「いや、私は戦いになると無我夢中になって、我を忘れる。リーダーは冷静沈着なショウがいい」

「それにもう一つ。ショウはこの中で最弱だ。瑠璃も含めて全員の中でな」

 えっ、オレってそんなに弱かったの? なんとなく気づいていたけど。改めて言われるとなんか傷つく。

「だから、我々、美女軍団がショウを守ることにした。ショウは守りの要でもあるからな」


 美女って、自分で言うか?……確かに美女だけど

 女子に守られるオレって――少し複雑

「それから、さっき皆で話してて分かったことだが、ショウには不思議な力がある。女ったらしのな。そんなに男前でもないし、弱い。

 私はあまり弱い男には興味を惹かれないんだが、ショウには初めて会った時からショウを見るたびにキュンとくる」


 男前でもないし、弱いとか……確かにそうなんだけど、繰り返し言われるとなんだかなぁ~

「その原因の一つが、ショウの匂いだ。日葵いわく、とても馨しいいい匂いがするそうだ。いわゆるフェロモンだな。

 クロがいうには、前の前の前の時からそういう匂いを出していたらしいぞ。だから我々が、悪い虫が憑かないように、ショウを守ることにした」


「ショウと美女軍団、名付けてLip Magic Generations 略して

 L(エル)、M(エム)、G(ジー)」ピッっとみんな変なポーズをとる。

 紅々李と碧衣、蓮月が恥ずかしそうに赤い顔をしている。

 クロと美夜、日葵、瑠璃はノリノリだ。


 なんだこの変ポーズは? どっかのテレビアニメじゃあるまいし……この世界にはテレビはないから、クロの影響だな。――これだけは、辞めさせよう。


――★☪●――


 しばらくして、時は過ぎ、

 皆、着々と準備を済ませ、寺子屋最後の夏休みがやってきた。ちなみに、この世界では卒業式はない。最後の夏休みは、皆で卒業旅行に行くことにした。梅村先生も同行している。


 まず、京都に行くことにした。蒸気新幹線の中で、皆に私が作った得物を渡した。全てに私の血液を練りこんでいる。各自に渡した得物は次のとおりである。


 碧衣: 脇差とキセル型の吹き矢

 蓮月: 蛇のように伸びる蛇腹刀

 日葵: 丈夫な槍

 クロ: 短刀と手裏剣

 紅々李: しなやかな薙刀

 美夜: 長刀

 瑠璃: 脇差

 

 みんな思い思いに喜んでいる。苦労して作った甲斐がある。

 梅村先生にも、私がカニグラタンの魔核で初めて作った太刀をあげた。

 卒業生から貰う記念の刀だと言って喜んでもらえた。


 京都駅につき、まず馬車で稲荷大社に向かった。京都に来たのには訳がある。

 娘のヨウビに彼女を紹介するためだ。

 例に倣って参拝する。


「クロさんお久しぶりです」神使はお参りに来た人と、話すことができる。

 通常は神の御言葉を伝えるためだが……

「にゃ? その声はどっかで聞いたことがあるにゃ」

「父上のショウの娘、白狐のヨウビです」

「すっごい久しぶりだにゃ」

「猫むすめさんの時には、お世話になりました」    

「よく民家に忍び込んで、一緒に魚食べてきたにゃ」

「そうですね~ また父の世話を焼いてくれてるんですね」

「このことは黙ってるにゃ。まだ、知られたくないにゃ」

「分かりました。まだ2人だけの秘密としておきますね」

 なお、この会話は、ほかの人には聞こえない。


「お父上、こんにちは」

「おはよう。ヨウビ。今日はカップラーメンを持ってきたぞ」

 お湯を注ぎ、3分待つ。・・・それをお供えとして神棚にあげる。

「熱いから気をつけろよ。」

「うん。じゃ早速食べるね」スッとカップラーメンが消える。


 それを見ていた周りの仲間が驚く。

「神棚にラーメンあげるとか罰当たりだな~って思ってたら、ラーメン消えたぞ。どんな魔法使ったんだ?」と日葵が聞く。

「ここの神様はおれの娘なんだ」


「えっ~ いつの間に子作りしたの? 悪い虫がつかないように見張ってたのに」

「前の前世の時だよ。オレ以前は狐だった時があるんだ。その時の子供」

「先越されたかと思ったよ~」……皆が安堵の表情を浮かべる。


 ヨウビから念波がとどく。

「ご馳走様でした。美味しかったです。やはり日本のラーメンは美味しいですね~」

「ところで父上、こんなに彼女さんいらしたんですか?」

「う、うん。なんか成り行きでね」

「だから、気をつけないと……こちらの世界の女子は、肉食系が多いんですよ」

「皆さんのスキルも貰っているようだし、油断も隙も無いですね~」

「なんか、ぐるぐる巻きにされて、強制的にね……」


「父上、気付いていましたか? 父上の『Lip Magic』は貰うだけじゃないんですよ。与えることもできるんです」

「ほんとに! 気が付かなかった。なんか条件とかあるのか?」

「あります。まず、父上が好意を寄せている方でないといけません。

 それから、付与できるのは1人につき1つで、時間制限があります」

「時間制限ってどのくらい?」


「今の父上の魔力だと約1時間ですが、複数人に付与すると、等分されます。例えば、2人にスキルを与えると1人30分になります。それに与えたスキルの魔力は父上から供給されますので、父上の魔力が多いといっても、魔力切れを起こす危険性が高まります」

「ありがとう。新発見だよ。今度、試してみる。」


 でもどうやって発現させるんだろう?

 ヨウビが気持ちを読んだようで、

「発動は、相手の唇以外の場所に、お父上の唇で触れることです。相手の唇と触れると、その相手方のスキルを真似できるようになりましたが、それ以外の部分に触れると、父上がイメージしたスキルを一時的に授けることができます」


 なるほど、額とか首筋、手あたりがいいのかな。

「髪でもいいのか?」

「いいえ、皮膚の部分でないといけません。でも、粘膜の部分は、敏感すぎて暴走してしまいます」

 粘膜の部分って……変な想像をしてしまう。

「お父様、如何わしい想像は辞めてくださいね」

「ごめん、ごめん。ついね」


 礼をいって、稲荷大社を後にした。

 皆にヨウビに教えられたことを説明する。

 いたく感心していた。たぶん、私のことよりできた娘のことだろう。

 私からスキルが貰えるということは、バリエーションがそれだけ増えるということだ。戦況に合わせて使っていかなければいけない。しかも、魔力は無限大ではない。

 このスキルはいろいろ試してみなければいけないが、できるだけピンチの時に使用することにしよう。


 その後、東大寺、安芸の宮島、出雲大社、大宰府天満宮などを巡って江戸に帰ってきた。


 さぁいよいよ、海外に向けて出発である。

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