16 マーメイド


 今日は天気はいいが、海が少し荒れている。

 サーフィン日和だな――できないけど。


 今日も海水浴だ。

 女子は、お肌が焼けないようにしっかりお手入れしているが、クロは気にせずそのままだ。今日もまた、それぞれビーチバレー、水泳、砂山遊びに興じている。

 私はビーチパラソルを開き、砂の上に寝ていた。


 日差しはキツイが、海の風が心地よい。しばらく寝ていたら、妹に起こされ水泳の練習に付き合わされた。

 うまいものだ。もうすでにクロールができるようになっている。本当に何をやらせても上達が早いな。私は、まだ足が立つところで、不格好な平泳ぎのようなものしかできない。


――○●○――


 妹が「少し泳いでくる」といって、少し沖の方に行ってしまった。

 置いてけぼりだ。見てると、すごい勢いで離れていく。

 ……ずいぶん、上達したな……って思っていたら、少し様子が変だ。

 潮に流されてるんじゃないか?


「瑠璃!!」 念波で大きな声で叫ぶ。

 瑠璃は振り返り、沖に流されたことに気がついたようだ。

 慌てて、こちらに戻ろうとするが、潮の流れが強く戻ってこれないらしい。


「おにいちゃん!!」って念波で叫んでいる。

 瑠璃はそのまま姿が見えなくなった。慌てて、瑠璃を追いかける。


 ★瑠璃視点

「瑠璃!!」 お兄ちゃんの声が頭に聞こえる。

 振り返ると、お兄ちゃんが遠くに見える。――こんなに遠くまで泳いできたんだ。

『戻らないと』……えっ全然前に進まない!……足が疲れてきた。


「――アゥ――」 大きな波が来る

「おにいちゃん!」あっしまった。お兄ちゃんを呼んでしまった。

 まだ、泳げないのに……「お兄ちゃん来ちゃダメ」


 波間から太陽の光芒が振りそそいでいる。……このまま海に沈んじゃうのかな?

 海ってきれいだな……息がもうできない。

 ――あっお兄ちゃんだ。『来ちゃダメ――』

 ……意識が遠のいていく…… …… ……


――◆□◇――


 その時、瑠璃の身体が瑠璃色の光に包まれるように、輝いた。

『水の精霊』が瑠璃の周りに集まってくる。

 すると人魚が近づいてきて、瑠璃とショウを掴み、海面から飛び上がった。


 バッシャーン!! 


 海面を叩きつけるような音の後、マーメイドは砂浜まで2人を運んでいった。


 2人は意識を失っていた。


 真っ先に異変に気がついた、美夜とクロ、日葵が集まってきた。その後、梅村先生や紅々李、蓮月、碧衣たちも遠くから次々集まってくる。

 陸に上がったマーメイドはとても息切れしている。


 クロがショウに、美夜が瑠璃に人工呼吸を始めた。

 心臓の位置にある胸の中央を30回押す、次に2回息を吹き込む。その繰り返しだ。5回くらい繰り返したところで、ショウは海水を吹き出した。


「……ゴホッ。ハーハーハァー ――」

 むせたあと、深呼吸する。(頭の中に黒い炎が燃え上がった)

 妹は! 大丈夫なのか? 

 隣を見ると、妹が人工呼吸されている。

「瑠璃!! まだ死んじゃダメだ!」……オレは妹に叫び、揺り動かす。


 間もなく、妹も激しく咳き込んで、意識を取り戻した。

 ――良かったぁ――周りを見渡すと集まってきた仲間が、心配そうに青い顔をして覗き込んでいた。


「みんなごめん。というより本当にありがとう。助かった。妹も助けてもらって本当にありがとう」私は涙ぐみながらお礼を言った。


「おにいちゃん!!」

 正気に戻った妹が、オレを抱きしめキスをしてきた。……ちょっとびっくりしたが、6歳だし気が動転しているんだろう。あまり気にしないことにしよう。


 周りはかなり驚いていたようだが――アレッ 瑠璃色の炎が瞬いている。


 妹は泣きながら、

「怖かったぁ。お兄ちゃんが助けてくれたの?」と聞いてきた。

「助けには行ったけど、オレも溺れてしまって、その後のことは覚えてないんだ」


「あのマーメイドが助けてくれたんだよ」と美夜が教えてくれる。

 私はふらつきながら人魚のところに行き、

「本当にありがとうございます。助かりました。なんてお礼を言っていいか……」


「あ、はい。驚きました。海を泳いでいたら、遠くから二人を見かけたんです。そしたら、あちらの方が光って、――あれはそう、水の精霊の加護ですね。精霊が呼んでるのが聞こえて、2人を掴んで、後は無我夢中で……助かってよかったです」


 マーメイドは尾ひれをパタパタさせ、安堵した表情だ。

「そうですか。助かりました。このお礼はいずれなにかの時にお返ししないと。  ――もし、困ったことがあったら、私を頼ってください。オレは「立花 翔」っていいます」

 今の私に何かできるわけではないが、こう言わずにはおれなかった。


「ん? あなたも少し水の精霊の加護があるような? でも少し違うかな。いずれまた会うこともあるような気がします。…あちらの方は妹さんですか? これからもよろしくお願いしますね」

 マーメイドは私にウインクしてきた。

「はい! こちらこそよろしくお願いします」

 初めて見るとても美しいマーメイドにカチコチになってお礼をした。


「もしできればなんですけど……私たちあんまり洞窟には入らないんですね。洞窟の中に悪さをするタイ魔王いるんです。いつも私たちが愛し合ってると、邪魔をしにくるんです。タイ魔王を退治してくれるとうれしいかな」


「大魔王ですね。かなり強そうな魔物のようですが、皆と協力して倒してみたいと思います」

「無理しないでくださいね。いずれ皆さんが強くなってからでいいので」

 大魔王だもんな。今すぐには倒せないような気がする。いずれ、きっと!


 そして人魚は海に戻っていった。――マーメイドって本当に綺麗だな。

 私は、思いがけず2つのスキルを取得してしまったようだ。


――★☪★――


 夕日が落ち、クロに誘われて、天の川が見える夜の浜辺を歩いている。

 クロは浴衣姿だ。

 昼間に人工呼吸とはいえ、口づけをした仲だし、ちょっと気不味い。


「クロ、ほんとにありがとう」

「ほんとだにゃん。すごいびっくりしたんだから……また死んじゃうんじゃないかって思って」


 ――え? また?


「あたしね、変身できるようになったんだにゃん。ほら」と言って猫に変身した。

 猫の姿のままで

「好きな人とキスすると変身できるんだにゃん」

 ――って、それってある意味告白だよね。

 クロはまた元の姿に戻った。


 人以外の種族は、変身ができる。

 ただそれには条件があり、好きな相手に対して口づけをすることであった。


「オレもクロのことは好きだよ。でももっと前から好きだったような気がする。 また死んだって、前世からオレのこと知ってるってこと?」

「ふふ~ ないしょ。 もっともっと前かな~ もっと親密な関係になったら、教えてあげるにゃ」

 クロは謎めいているよなぁと思いつつ、夜の浜辺ということもあり、人工呼吸ではなく、


 ――本当の『キス』をした――

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