13 妹の七五三

(1) 昇段試験


 妹も無事産まれたため、私は修行のため合宿に戻った。

 地縛霊とも仲良くなった頃、夏休みも終わり、寺子屋2年目が始まる。


 学問の授業はそのまま続けるが、剣術の方は1年に1回、9月1日に昇段試験がある。中級レベルの相手に勝つか引き分けると昇段する。

 中級レベルの昇段試験は、スキルがあれば殺傷力がない場合、この試合に限り使用することが許されている。


 ただし、上位のクラスのものはハンデとしてスキルは使用できない。

 例えば、初級対中級では初級はスキルを使えるが、中級は使えない。(上級レベルへの昇段試験(中級対上級)では、殺傷力があっても、中級者は使用が認められている。上級者はスキルは使用できない)


 私の対戦相手は、碧衣だ。

 碧衣は初級レベルの合宿には参加しておらず、私のスキルについては見たことがないはずだ。私は何度か熊に対して、このスキルを使って練習をしたが、殺すことも傷つけることもできなかったので、試合で使っても大丈夫だろう。


 目くらまし程度にしかならないだろうが……


 お互いに一礼し、試合開始だ。

 碧衣も私と同じく、木の長刀を使用する。互いに何度か刀の先を合わせ、目線をスッと逸らしたあと、木刀を叩き込んでくる。


 なんとか、刀を滑らせ攻撃をかわす。私も踏み込んで、切りつけるがまったく当たらない。


 私は、スキルを使うことにした。

 ――浄化のスキル――まだ反射のスキルは隠しておきたかった。

 ――浄化のイメージ、刀に口づけ……紫紺の炎が刀身に燃え上がる。


 碧衣は、少し驚いた様子を見せたが、さらに神経を集中してくる。

 刀身に気持ちを込め、紫紺の炎をさらに大きくする。そのまま、上段に構え、踏み込んで刀で切りつけた。


 碧衣は陽炎のようにスッと横にずれ、私の振り落とした腕に、刀を叩き込んだ。

 私は刀を落とし、決着した。


 一礼して、試合終了である。

 私はまた一年初級レベルで修行することになる。


 他にも試合は行われたが、結果は日葵がクロと引き分けで昇格し、他は去年と同じであった。

 初級は私の他、蓮月、紅々李

 中級はクロ、碧衣、日葵

 上級の美夜は剣聖との昇段試合を行っていないので、そのまま中級レベルの先生をする。



(2) 妹の七五三


 学習内容は違うが、同じような1年が過ぎ、2年が過ぎ・・・私は8歳になった。妹も3歳である。妹が3歳になった年の11月、京都の稲荷大社に行くことなった。

 妹は初めて蒸気新幹線に乗るので、とても興奮している。

 私が5歳になった時以来だから、3年ぶりだ。


「富士山って、いつ見ても本当にきれいだわ」

 妹が富士山を間近で見るのは初めてだ。前世の記憶があるのだろう。


 稲荷大社に着き、娘(狐)の好きなお稲荷さんを持ってお参りする。

「妖尾(ヨウビ)、こんちは」

「お父さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」

「うん。このとおり、元気だ。今日はお前の好きなお稲荷さんを持ってきたぞ」

「やった!ありがとう! すぐ食べたいです」

 白狐のヨウビはとても喜んでいる。


 お稲荷をお供えすると、スッと消える。ヨウビが食べ終えたあと、話しかけてきた。

「ごちそうさまです。とても美味しかったです。……お父さん、スキルが顕現したんですね」

「うん。浄化のスキルらしいんだ。」

「浄化? 少し違いますよ。……よく見てみるので、そのままじっとしててくださいね」

 動かず、じっとしている。

 周りから何してるんだろうみたいな感じで見られてる。


「その紫紺の炎は、浄化も含みますが魔力や霊力を切る力です」

「『魔断』といったほうがいいかもしれません」

「霊力を切ることで浄化することもできるようですね」


「それからもう一つ特別な力があります」――たぶん、反射の力のことだろう。

「想いの強いあるいは興奮した相手から口づけされると、その方のスキルを真似できるようになります。たぶんこの力は、お父さんが九尾の狐だったことと関係しているようです」 


 ――えっ! 相手の力を真似できるって、すごいんじゃね!?

 梅村先生にキスされて「反射」の力を真似できるようになったのもそのためかな?

「なんか、すごい力だな。全然わからなかった。ありがとうヨウビ」

「お父さんの力は、その強大なまなもそうですが、そのスキルは使い方によってとても危険なものになります。気をつけて使われてくださいね」


「それから、女性には気をつけてください。あまり多すぎると大変なことになりますよ」

 そんなにモテてないと思うけど、これから先のことだからな。気をつけるとしよう。


「そっか、分かったヨウビ。それから今日は妹を連れてきたんだ。少し見てやってくれないか」

「分かりました! 妹さんを呼んでください。」

「瑠璃!」と呼んで、隣に並ばせる。

 礼にに習って参拝し、暫くして……

「妹さんはまだスキルを顕現できてませんが、水とすごく相性がいいようです。水に関係するスキルが目覚めたらまたここに連れてきてください。もう少し詳しく調べられると思います」


「ありがとう。また美味しいもの持って、また来るよ」

「できればもう少し多く会いたいです。1年に1回くらいはいらしてくださいね」

「うん。そうするよ。じゃまたな」

 そう言って、稲荷大社を後にした。


 父、母、妹と一緒に京都見物をして、お土産の「黒あん三角」を買って江戸に帰ってきた。

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