10 リップマジック開眼

 青い炎は、青といっても、とても落ち着いた清い感じのする色、紫紺色。

 恐る恐る炎に手を近づけてみたが、熱くない。むしろ『冷っ』とした感じ。折角、炎が出たので、その木刀で地縛霊を切ってみたら、素通りせず切れてしまった。


「ありがとう」という声が聞こえた気がした。地縛霊は、『スーっ』と完全に消えてしまった。そしたら、私も私もみたいに地縛霊が寄ってくる。


 次々切っていく。・・・107体目を切ったところで、108番目にラスボスらしい地縛霊が出てきた。この屋敷に住んでいたのであろう、ガタイの大きいドワーフだ。


「ぼうず、いいものを持っているな。オレもやっと成仏できそうだ。この屋敷は自由に使ってくれていい。お前にやろう。オレも生まれ変わって、ドワーフの森に生まれ変わりたい。

 頼む、ぼうず、思いっきり切ってくれ」


 そう言われ、思い切りよく、ズバッと縦に切った。

 ドワーフは微笑み、手を振りながらながら消えていった。


「キャーーー ステキーー!!」と、梅村先生がキスしてきた。

 ――僕の初めてのキスが奪われてしまった(この世に生まれてからだけど)。

 

 梅村先生の前世ってたぶん外人さんだから、キスも挨拶程度なんだろうな。

 なんて考えていたら、頭の中に、赤い炎が舞い上がった。

 ……なんだろう? この感じ。 この前(稲荷大社)の時とは違う。


「梅村先生のスキルって何ですか?」

「ん~どうしよう? あまり他人に教えるもんじゃないんだけどね。

 ショウくんは特別だよ。今回はずいぶん助けてもらったからね。

 私はね、スキルを反射できるんだよ。けっこうレアなんだから」


 スキル(魔法の技)は、生まれた時又は成人(種族によって成人年齢が異なる)になるまでに、通常1人に1つ与えられる。潜在的にもって生まれてくる場合が多く、両親のスキルを真似て稽古で使えるようになったり、家庭環境の変化やちょっとしたショックで目覚める場合もある。


 あの紫紺の炎は何だったんだろう? どうやって、刀が燃え上がったのか調べないといけない。


 順番に考えてみよう。

 まず考え事をしていたな。……お化けを浄化したいと思ってた。

 次に先生に抱きつかれた。……いつも抱きつかれていたし、これは違うな。

 その後、刀が顔に当たった。……顔にぶつけるといいのかな?頭か?

 頭に刀をぶつけてみる。……何も起こらない。

 鼻か? ……鼻血が出たが、刀は何ともない。

 口か? ……刀に炎が燃え広がった――オォやったぞ!

 集中して気を入れると、炎が大きくなる。集中を解くと、炎は消えた。


 条件は3つだな。浄化するイメージ。刀に口をぶつける。気合を入れる。

 オレのスキルは、浄化能力だったんだ。

 お化けには効くかもしれないけど、あまり凄くはないよな。

 戦いにはあまり向いてないのかもしれない。


 それに刀を口にぶつけるとか、かなり痛いぞ。

 そっと刀に唇で触れてみる。……発火した。

 な~んだ。ぶつける必要はなかったのか。

 違うイメージだとどうなるんだろう?


 梅村先生にキスされたら、赤い……『紅色』の……炎が頭の中に浮かんだけど。

 梅村先生のスキルは、『反射』……魔法を反射するイメージを作る。

 刀に口で触れる……『紅色』の炎が出てきた。

 これってもしかしたら――今度、試合で使ってみるか。


 今日は梅村先生と初体験(キス)できたし、とてもいい日になった。

 隣で黙って見ていた梅村先生は、目をパチクリしていた。


「 ??何何?? どうやったの? だいたい、魔力伝導性のない木刀に炎なんて点かないんだから!」


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