9 夏休み


 夏といえば、太陽、海、海水浴だ!


 。。。よね普通

 ここは鬱蒼とした森林地帯。

 休みとは名ばかりの、強化合宿。。。夏休みはどこに行った(泣)

 まぁ楽しみは、もう少し少女が成長してからでもいいだろう。


 夏休みは、レベルに合わせた魔窟に行って、修行を行うことになっている。

 初級レベルは、幽霊屋敷だ。

 一応、梅村先生が引率しているが、お化けはきらいだそうだ。

 幽霊屋敷は、以前洋館だったようで、森の奥にひっそりと建っている。庭の雑草は生え放題で、窓も壊れている。いかにも……って感じである。


 魔物は、主に地縛霊で、攻撃力はほとんどない。たまにポルターガイストで机や椅子を飛ばしてきたり、壁から顔や腕を出して、脅かしてくるらしい。

 こちらの世界のお化けは、半透明で誰でも見ることができる。

 地縛霊など、霊体がこの現世界にいることは少なく、ほとんどの霊体は死後天界に向かう。ただ、死を認識していなかったり、恨み、嫉みが強い霊体、残した家族を強く心配する霊体は現世に残ることがあるそうだ。


 幽霊屋敷……子供騙しだなと思うが、まだ5~6歳の子供だからしょうがない。

 霊は、刀では切ることができないし、まだ我々では浄化だってできない。

 梅村先生によると、「お祓い」がいいって言ってるが、そんなことができる生徒もいない。


 星が瞬き、月が4つ、影が4つできる中、真夜中にお化け大会は始まった。

 お化け大会(本当のお化けなのだが)よろしく、2人一組で幽霊屋敷を探索することになった。もちろん男女ペアである。

 ここに来た剣術初級の生徒は9人と先生が1人。併せて10人だ。


 洋館は3階まであり、横にも広い。たぶん昔、外国の貴族が住んでいたのだろう。お化け大会(あくまで修行)は、まず徒歩で温泉付き宿舎から、幽霊屋敷まで移動する。


「キャ~~~」


 って一番驚いているのが、梅村先生。私は梅村先生と一緒だ。幽霊屋敷だけでなく、幽霊屋敷に行くまでの道中で、いろいろなところから幽霊が脅かしてくる。

 池や井戸、柳や道の下から突然出てみたり、怖い化粧やお面をつけていたりしている。幽霊もたまに人が来たものだから、楽しんでいるのではないか?

 と思うほど、脅かし方に趣向を凝らしている。


 幽霊屋敷の2階で、階段を上っている途中、いきなり腕が100本も出てきたときは流石に私も心臓が止まるほど驚いた。いたるところで、悲鳴が鳴り響いている。


 私は、七五三で稲荷大社に行って娘に会ってから、手から狐火が出せるようになっていた。大きくしたり、小さくしたりできるようになったが、それだけである。

 お祓いの効果があるかなと、地縛霊に狐火を見せてみたが、かえって地縛霊が集まってくる始末である。


――★☪★――


 いろいろ試しているいるうちに10日間が過ぎてしまった。

 噂では、この幽霊屋敷は、幽霊退治が目的ではなく、

「恐怖を克服し、精神を鍛える」ことが目的だそうだ。


 梅村先生とも3度目のペアである。

 今日も「キャ~~~」という悲鳴とともに梅村先生に抱きつかれる。

 抱きつかれると、大きな胸で苦しくなったのは僥倖であったが……

 梅村先生に抱きつかれること数十回。何度となく前から横から後ろから、柔らかい双丘に襲われることになる。


『刀で切っても切れないし、どうしたら浄化できるんだろう?』

 なんて、考えていたら、「キャ~~~」という声とともに梅村先生が後ろから抱きついてきた。

 その時、梅村先生が後ろから木刀ごと抱きついてきたものだから、私の顔に木刀の峰がしこたま当たった。

 そのまま倒れ、梅村先生とぐるぐる床を回転した。


 いった(痛)ぁ――木刀なので梅村先生の手は切れることはないが、私の顔はたぶん額から顎まで赤い線で引いたようになっていたに違いない。


 ---! その時、木刀からブワっと青い炎が吹き出した。

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