1 剣神世界への転生

 結局、こちら(剣神世界)の世界に来れたのは、3人だけだったようだ。

 殿様カエルと黒猫むすめと私だ。


 天使というよりは天女といった方がイメージとしてしっくりする羽衣を纏った天使が

「これから、お三方には転生してもらいます。前世界で教えられてきたと思うので、詳細は説明しませんが、これまでの前世での行いや学習してきたことは記憶として蘇ることがあります。

 しかし、こちらの世界に対して大きな影響が出ることはけっして行わないようにしてください。それ以外のことは、どのような行いであろうと不問に付します。

 ただ、あなた方が亡くなった時、前世界と同じように査定されますから、できるだけこの世界にとって良い方向に進むよう努力していただきたいと存じます」


 ――記憶か――どのくらい先まで思い出すんだろう?

 剣至上主義の世界というからには、戦が多いのだろう。多少の殺傷は許されるのかもしれない。


「それでは転生させます。お三方とも目を閉じてください。」

 目を閉じると、身体が硬直し凝縮されるような感覚とともに、ひとりの胎児の中に引き込まれていった。


――◇◆●――


 ここは、お腹の中である。胎盤から栄養をもらい、スクスクと大きくなっているようだ。

 心臓の音が心地よい。母の声が主に聞こえるが、父の声も時々聞こえる。聞き覚えのある日本語だ。

 お腹の中では、特に何もすることはないので、過去の記憶を整理している。


 まずは前世、人間だった頃、何をしていたのか?

 職業は、薬剤師。薬の専門家だ。 薬の構造。 成分。 抽出方法。

 効果と副作用。

 薬は量によって効果が変わる。 副作用とは、主に薬の量が多くなったときに起こる。つまり、薬は毒ともなる。

 薬は、主に植物から抽出される。 草、木、根、葉、茎、植物の部位によっても成分が異なる。

 この世でも役に立つかも知れないし、化学成分を思い出しておこう。


 趣味は、音楽と百人一首「かるた」だったか。

 この世界の音楽はどんな調べをもっているのだろう? 新しい音源に出会えるだろうか? 楽しみだ。

 百人一首はたぶん前前世の狐の影響もあるのだろう。古の歌人の調べをとても懐かしく想う。


 前前世が九尾の狐。 

 こちらの世界に来てから徐々に思い出してきた。

 完全に覚えてるわけではないが、炎を使った魔術が得意だった気がする。


 若い頃は、よく守銭奴や悪徳商人を騙したり、屋敷に忍び込んで小判を稼いでいたが、100歳も過ぎる頃には人に化けるのがうまくなった。


 江戸の不忍池の近くで、茶店を開いていたこともあった。

 旅人やお侍も狐火を使って入れたお茶を飲むと、身体が癒えて疲れがとれたようだし、特製のきつねうどんに舌鼓を売っていたっけ・・・

 いつもうどんを食べに来てくれるお侍さんが、磔されそうになって、助けたこともあった。


 その後、全国を行脚して「仁義八行の珠玉」を集め、数珠を作り魔力を高めた。

 いつだったか、1000年以上前に京都に白狐の嫁と伴だって旅行に行ったときのことである。

 いくつもある朱色の門を通って行くと向こうから巫女が来たため、慌てて石に変幻した。

 巫女は何を思ったのか、大層有り難がって神社に祀られてしまった。居心地が良かったのでそのままそこで暮らすことにした。

 たまに抜け出して、家内と一緒に外国旅行も楽しんでるが、そのときは子狐に私の代わりを勤めてもらう。


 お稲荷さんを食べながら、お参りに来た人のお願い事を聞いてあげるんだが、まぁ大抵は、お金に関する碌でもない自己中なお願いが多かった。

 でも、気持ちのいいお願いや感謝の言葉を言われると助言を与えてあげた。すごくびっくりしてたが、とても感謝された。


 昔から外国人が参拝することはあったが、昭和になってから、急に外国人が増え始めた。

 中国に修行に行ったこともあるので中国語はわかるが、最初は英語やフランス語とか何を話しているか分からなかった。

 でも、気持ちは理解できたので話している内容も分かってくる。片言くらいは外国語も話せるようになった。


 前前前世の堕天使――あまり覚えてないんだよな――封印が強いのかもしれない。何をしていたんだろう?

 アンとキスした感覚――口づけ、接吻、キス、チュウ・・・チュウチュウトレイン違う! 何だろう? もやもやする。


 なんてことを、繰り返し考えていたら、母が産気づいた。

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